劇場公開日 2023年12月22日

「フライヤーに添えられた言葉が秀逸だ」PERFECT DAYS masaさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0フライヤーに添えられた言葉が秀逸だ

2023年12月23日
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鑑賞方法:映画館

僕は「陸王」を観てから役所広司さんを好きになった。人柄も好きだけれど、とにかく演技が好きだ。

この映画は、全体を通してセリフが少ない。下手をすれば事故を起こすレベルで「なにを伝えたいのかわからない」と言われてしまいそうな作品だ。

そうならないのはやはり役所広司さんの「演技力」なのだと思う。彼が演じる平山が、いま、何を感じ、どう思っているのかが、表情やしぐさで感じ取ることができる。

心がじーんとあたたかくなるシーンも、寂しくなるシーンも、たくさんある。どのシーンも全部、僕の思い出の一部となった。

ただ、平山の最後の涙は観た人それぞれの平山があるのだろうと思った。僕はまだぼんやりとしていて、ここに残せるほどの言葉がまだ見つかっていないけれど…最近の出来事をその日の気分で選んだ音楽を聴きながら思い出して、涙できれいに流して、朝日をみて、生きていることの喜びを噛み締めたのだと思う。朝日や夕焼けを眺めてなんとなく泣きそうになる…そんな感じもあるかな。

まわりから見れば、彼の一日はいつも同じようだけど、同じ日なんて一日もなくて、少しずつ違くて、少しずつ変化している。

彼は未来より、今を、一瞬を、大切にして生きている。少しの変化を感じて楽しみながら。

『こんなふうに生きていけたなら』

フライヤーに添えられたこの一言は秀逸だ。

エンドロールの途中で席は立たないで。
そのあとの映像で物語が完成するから。
なにを伝えたい映画なのかが分かるから。

羊