「実際のほうがもっと怖い」メイ・ディセンバー ゆれる真実 雨雲模様さんの映画レビュー(感想・評価)
実際のほうがもっと怖い
本作では、ペットショップのアルバイトとして雇った13歳のジョー少年を愛するようになった雇い主のジュリアン・ムーアが演じるグレースと親密な仲になり、やがて二人は不倫関係に。倉庫内での情事がバレて、通報され逮捕されたグレースのお腹にはジョーの子供が宿っていた。
実際の事件は以下の通り。
34歳のメアリー・ケイ・ルトーノーは担当している6年生のクラスで再びヴィリ・フアラアウの担任になる。13歳になったヴィリ少年はメアリーのあまりにも美しさからやがて好意があると仕掛けると、仕事は順調であっても家庭内では問題を抱えていたメアリーの心に突き刺さった。
メアリーは保守的なカトリックの家庭で生れ育つも弟は幼少期にプールで事故死、父親は大学教授だった頃に親しくなった女生徒と不倫関係にありしかも二人の婚外子がいる。
メアリーが22歳の時に望まない妊娠でおめでた婚をして2男2女の4人の子宝に恵まれるが夫のスティーブは浮気ばかり。
一方のヴィリ少年の家庭は恵まれているとは言い難かった、父親は毎日のように女性と遊ぶなどして孤立していた。
家庭内に心の拠り所のない二人が結ぶのは自然の流れともいえるのだろう。夫に通報され逮捕された4ヶ月後、ヴィリ少年との間に授かった娘が生まれ、後仮釈放が許されるが、メアリーは会ってはいけないヴィリ少年のもとへ行き再び情事に及んでいるのを警察に見つかり再び逮捕。
このときもまたヴィリ少年の子供を妊娠、2回目の獄中出産でヴィリ少年にとっては二人目の娘が生まれる。因みに夫スティーブとは獄中離婚している。
子供がいることを認知せざるを得ないヴィリ少年の両親はやがてメアリーを家族として受け入れ、メアリーの出所後、ヴィリ少年が結婚出来る年齢になったということもあり、二人は結婚。
12年後の2017年にヴィリが離婚申請し、翌年二人は離婚する。メアリーは2020年に末期がんで数ヶ月にわたる闘病の末に元夫のヴィリと二人の娘に最期を看取られながら58歳で旅立つ。離婚の真相はヴィリのビジネス上マリワナを売り捌くライセンスを取得するために必要不可欠だったという。
つまり、愛のある離婚だったわけ。
映画とは違う顛末であるということを脳裏に入れながら、役を演じきるために深入りしたエリザベスのグレース役に対する魂は、第三者が見たらどう感じるか?を見事に演じてる。