「本年度ベスト1候補現れる 〜 フェリー二が蘇った」墓泥棒と失われた女神 kammomenさんの映画レビュー(感想・評価)
本年度ベスト1候補現れる 〜 フェリー二が蘇った
「墓泥棒と失われた女神」、原題は「La chimera」Wikiによると、キメラとは、同一の個体内に異なる遺伝情報を持つ細胞が混じっている状態や、そのような状態の個体のことらしいです。
邦題がひどいですが、キメラと言う題名もピンとこないので、仕方ないのかも。しかし、見終わると、まさに人生のキメラ、映画のマジックをこれでもかと感じさせてくれる大大大大傑作でした‼︎
「幸福のラザロ」で衝撃的な出会いを経験したアリーチェ・ロルヴァケル監督の最新作。前作は僕は2019年の洋画ベスト2に選んでました。ベストは「ローマ」。
最新作は、あまりの傑作ぶりに興奮して、今夜寝付けそうにありません。ヨーロッパ映画のあらゆる映画的な記憶で全編が塗り込められてます。冒頭の荒々しいカットの連続はジャンリュック・ゴダールを思わせ、ヌーベルバーグの香りがします。
そして次に登場するのはフェリー二。蘇りました、彼が姿を変えて‼︎フェリーニ映画に特徴的な豊満な女性もきちんと脇役で登場します。そしてフランソワ・トリュフォーも見事に調理されて登場します。更にはバスター・キートンまで引用され、最後にはビットリオ・デ・シーカにオマージュを捧げます。
物語は刑務所出所後の墓泥棒を迎えるワル友達との、更なる墓ならぬ遺跡探しの金儲け話。主人公は遺物の美しさに心を奪われるなど、単なる金儲けと違うロマンを求める人物。そして夢枕に現れるのは、かつての美しい妻。どう言う事情か、彼女は手の届かないところに。
語り口、編集の切れ、映像のギミック、突然と演者が観客に語りかける手法、美術の美しさ、演技どれをとっても、素晴らしいの一言。音楽もまた魂に染み入る歴史を感じさせるヨーロッパの民族音楽に、現代的なリズム感のある楽曲を組み合わせるセンスに脱帽。
脇役には、なんとイザベラ・ロッセリーニ‼︎ あの「カサブランカ」のイングリッド・バーグマンの娘です‼︎ 感激💦。そして、前作同様に監督の妹さんも出演してます。
監督は1980年生まれ、天才と同時期に生を受け、その天才の映画を見ることができる幸せに打ち震えています。
僕は映画を観ても、パンフレットを購入することはほぼないのですが、これは別物と思い手に入れました。まあ、当たり前ですけど、讃辞の嵐ですね。
さて本年度ベストワンなるか。100点満点の輝き120点といたします。いくら褒めても褒め足りない、「映画」と言う現代芸術の最高峰、ぜひ・ぜひ・ぜひ・ぜひ、お見逃しのないようお願いします。有休取得、必須です‼︎
*コストパフォーマンス +30,000円(チケット代対比)