「邦題が疑問?!」墓泥棒と失われた女神 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
邦題が疑問?!
予備知識全くなしに観に行ったのですが、物語世界を理解するのに相当時間が掛かってしまいました。題名の通り主人公が古代のお墓を盗掘し、遺体とともに埋められた副葬品を盗んで売りさばく”墓泥棒”の一味であることは徐々に分かってきましたが、そもそもそんな貴重なお宝が、実際にそこかしこに埋まっているものなのか、それとも物語世界独自の設定なのか、映画にとってはどうでもいいこととは言え、その辺りの疑問が終始頭の片隅に存在したままお話は進んで行きました。
鑑賞後チラシを確認すると、1980年代のイタリア・トスカーナ地方のお話のようで、確かに出て来る車はいずれもクラシックな感じだった訳ですが、半世紀ほど前とは言え、”墓泥棒”が本当に存在したんだろうかという疑問が、いまだに氷解してません。仮に本当にそうしたことがあったのだとすれば、それはそれで凄い話だなというところではありますが。
さらに中々理解できなかったのが、主人公・アーサーの立ち位置。イギリス人らしいけど墓泥棒の一味に加わっている理由は何なのか?物語が進んで行くと、彼が”ダウジング”の名手であることが分かり、なるほどその腕を買われて一味に入っていることが理解出来ました。それにしても両手に棒切れを持ち、それが反応するとそこにお宝が埋まっているという”ダウジング”。てっきり”ツチノコ”を見つけるためのものだと思っていたらさにあらず、古代ギリシアやローマ時代からそれに類するものがあったらしいというから、伝統ある手法のようです。そしてアーサーは本当に墓に埋まったお宝を探し当ててしまうという展開を観るに至り、ようやく本作の姿が分かってきたところでした。
原題にもある”キメラ”の彫像を掘り当てたアーサー。ところがキメラの顔がかつての恋人に似ていることから、最終的にキメラの首を海に捨ててしまう彼は仲間から追放される。その後別の一味に加わったものの、次に探し当てた墓の洞窟が倒壊し、彼はあの世に行ってしまう。そして探していたキメラ似の恋人と再会を果たすという、非常に幻想的な展開となって物語は終わりましたが、やはり終始呑み込めないままのお話ではありました。
イタリアオペラが流れたりして、非常に華やかな一面もありましたが、内容的には夏の日の白昼夢を観ているような気がする作品ではありました。
いずれにしても、このしっくりこない感じは、邦題に由来するのではないかという結論に達したところです。原題をそのまま使い、単純に”キメラ 墓泥棒と失われた女神”とした方が良かったように思うのですが・・・
そんな訳で、本作の評価は★3.5とします。