「聞こえるのは死者の声なのか、遺された物たちのささやきなのか」墓泥棒と失われた女神 スクラさんの映画レビュー(感想・評価)
聞こえるのは死者の声なのか、遺された物たちのささやきなのか
ネタバレ無しで語るのが難しい、と言うよりネタバレありきで観終わった人ととことん話したくなる。
まずはネタバレ無しで…
公開されてるオルタナティブポスターの雰囲気に惹かれた人なら映画の内容にもきっと惹かれるはず。この映画の魅力が全部凝縮されてる。
そのポスターいいなって感じたら、劇中の演出とかストーリー展開も好きになれると思う。
ちょっと不思議なストーリーなんだけど、ちゃんと筋が通ってて、ミニシアター系にありがちな難解さは無かった。
ここから先はネタバレになるから下げて書いときます。
「死がふたりを分かつまで」ではなく
「死がふたりを引き合わせるまで」
この過程が美しすぎる
主人公アーサーの想い人は既に死者
出所して戻ってから新たに出合った女性と結ばれるかな?と一瞬思わせてから、最後は恋人の下へ。
完全趣味な考察で
劇中、アーサーの存在自体がこの世とあの世の狭間にいるような感じだった。
だから死者が埋葬されている場所が分かる、だって自分も片足を突っ込んでいるから。
オルフェウスの神話をベースにしてるってことだから、死んでしまった恋人への未練から自分も彼岸に近い存在になってしまったのだろう
ベニアミーナへの未練を断ち切って、イタリアと結ばれていたら、アーサーはきっと彼岸に行くことは無かったはず
でも、アーサーはベニアミーナを選んだ、そして、完全に彼岸に両足を付いてしまった。
死によって一度離れた2人が死によって再び巡り合うとても美しいラブ・ストーリー。見方によってはバッドエンド、でも私はハッピーエンドだと思う。
劇中、2人を結ぶのは赤い糸
試写後のアフタートークでは、監督は日本の運命の赤い糸の概念を採用したとの話が聞けたのも良かった