「星はいつも三つです。」墓泥棒と失われた女神 フェルマーさんの映画レビュー(感想・評価)
星はいつも三つです。
ハリーポッターみたいなタイトルですが。
A.ロルヴァケルのように現実と幻想を自由に行き来する作風。
カンヌ映画祭とかヨーロッパが好きそうな作風です。
1980年代のイタリア・トスカーナの貧村。なにやらコンビナートみたいな巨大な工事現場が林立しているすぐ隣には、ローマ帝国よりずっと古いエトルリアの墓地群の遺跡がある、というところ。
こういうところは掘れば何かが出てくるらしく、墓泥棒たちがあちこちを掘り返しては副葬品の土器やら金属器やらを売りさばいていたそうです。
主人公はイギリス人で地中に埋蔵されているものをみつけるダウジングの能力の持ち主。地元の墓泥棒のグループで小金を稼いでいます。
昔のトスカーナの貧村の暮ら
しぶりや、欲が深いくせにけっこうお間抜けな墓泥棒たちの活動が綴られていきます。
面白いのですが、これらのスケッチからさて、どんなふうに展開するのかな、と思っていましたが映画の三分の二くらいを過ぎたところで「ああ、そうか」と腑に落ちました。
「豊かな生活とは」を描いた映画です。
「伏線の回収」という表現は私が割と嫌いな、というか辟易とする表現なのですが、本作品では廃駅や赤い糸が、穏やかで充足感に満ちた映画世界に大きな役割を果たしています。
映画を見るときにはネットはもちろん、新聞雑誌の映画評や公式HPも見ないようにしています。なんか、いろいろ撮り方が変わるなあ……と思っていたら、公式HPによるとカメラは35mmと16mmとあとスペシャルな16mmと三台を使い分けていたそうです。もっと注意深く見ればよかった。
また冒頭の客車の場面に使われる朗々としたファンファーレ、モンテヴェルディ作曲『オルフェオ』の序曲なのですが、これもあとから「ああ……オルフェオといえば冥界行きだ……この映画のモチーフではないか……」と気づいたのでした。
こういう読み解きを楽しませてくれるところもヨーロッパ的。