落下の解剖学のレビュー・感想・評価
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真実よりどう思ったか
パルムドールを取ったこともあり、どんなラストを見せてくれるんだろうと、期待しすぎてしまっていた。フランス映画なので、結構ぬる〜っと終わる。まぁなんと言うか、思ったのと違った。やっぱり、できればアカデミーやカンヌで賞を取る前に、公平な目で映画は見たいよね。
この映画はどちらかというと絶壁に立たされた時の人間の心理描写等が秀逸な作品であるため、どんでん返し・衝撃のラストを彷彿とさせる予告自体、ナンセンスなんだろう。タイトルの「落下の解剖学」も微妙にズレている気がしたけど、原題の直訳なんだね。にしても、映画は靴紐のようにきちんと結んで終わって欲しいたちなので、本作のように緩いままだと締まりが悪くてスッキリしない。観客に投げかけるような作りでは無いものの、作り手なりの解釈・回答は作品の性質上示して欲しかったなぁと思ったり。
2時間半越えかつ、会話劇と言っても過言では無い法廷ドラマなのに、退屈を感じさせない作りになっているのは凄い。音楽の色やタイミング、多方面から読み解く展開も見事だった。盲目の男の子の非常にリアルな演技には驚かされたし、彼の心情をそっくりそのまま代弁するピアノも、家族の崩壊を暗示しているようで恐ろしかった。更にはワンちゃんの演技にも目を奪われる。品質に関しては申し分無くて、ノミネートも納得。観客の心を掴む、作り込まれた映画的な表現は素晴らしかった。
ただ、もっと<正義とは何か>みたいな思い悩まされるメッセージが込められていると想像していたから、この点数になってしまった。正直、テーマとしては在り来りのように見えてしまうし、この作品ならではの斬新な切り口で見解していたら好きになれたんだろうなぁと思った。
これはSNS社会にも通じるのでは…
とても良い映画でした。
お気に入りなのは序盤の一節です。
"待って、私は殺してない"
"そこは重要じゃない"
本作では決して真実を追求せず、状況証拠や証言から妥当な結末を議論していきます。
この映画は観客に見せている部分と見せていない部分の線引きが上手で、どちらとも取れるように最後まで着地しません。観た後に語りたくなる映画です。
どの役者さんも演技が上手で、惹き込まれるものがありました。主人公サンドラが夫を捲し立てるシーンがあるのですが、説教の内容が痛いぐらいに刺さりました。弁護士のヴィンセントを演じたスワン・アルローさん、とても顔がタイプです。
見ていて思ったのは、昨今のSNS社会に通ずるものがあると感じました。ポスト・トゥルースという言葉があるように、真実かどうかは重要ではなく感情に訴えかけるものが支持を得やすいです。
セクシー田中さんの事件がありましたが、結局真実は本人にしか分からなくて、「脚本家のインスタグラムの投稿が〜」等と騒ぎ立てるのは劇中の傍聴人やワイドショーと重なるものがありました。
まじでhot lawyerだし、話も面白かった
Xで海外レビューがあまりに’hot lawyer!’ばっかだったので、予告では惹かれなかったがその噂の弁護士を鑑賞しに行くか〜と見たんだけど、話も面白かった!
予告編とは違い8割裁判所でのセリフ劇なので、セリフの情報量が多い系苦手な人は、このREALLY hot lawyer見ていればよろし(すぐ出てくる)。
犯人これ妻っしょと、このふさふさグレーロングヘアー仏英話者スタイルも良いsexy hot弁護士に騙されないぞと見てたんだけど、
坊主の検察官の妄想決めつけboyっぷりがやばくて、とくに最後の方ゲラゲラ笑ってしまった。。
たぶんだけどこれはもはや愛すべき人物!
小説には私生活が投影されているはずだの演説、せめて投影されているはずという主張の根拠を本人インタビュー記事なり何なり持ってきなよ!みたいな。
赤いタートルネック着た息子の証言の時に「その結果の要因は2つ考えられるよね?どうして1つに決めつけてるの?」っていうポンコツ坊主検察boyの発言に対し、12歳の息子めちゃいいこと言った!(思わず拍手)
「原因が分からない時は根拠を考えれば良いと思うけど、母にその根拠となるような理由がない」
検察坊主12歳に言われちゃったね、って私は母のような目で見守ってた。
てか最後の中華料理屋でのY-shirt HOT LAWYER、ありがてぇ...という境地で眺めてた。
明日からも頑張ってこのつまらない日常生きられるわ!
24-030
「真実」は時に虚構を事実にする。
真実は時に真実でないし、真実である必要もない。という事を酷く痛感します。
我々は人間として生きる上で、自分を取り巻く世界を自分の中に構築しますよね。それは自分にとって真実ですが、自分以外の人間にとっては真実ではないこともしばしばあります。それを酷く実感させられました。
最終証言は果たして真実だったのか。
被疑者サンドラが言い渡された判決は果たして真実に迫れていたのか。
「真実」とは一体なんなのか。を、考えさせられる作品でした。
それはさておきスワン・アルローの顔が良すぎて惚れ惚れしながら見てました。津田健次郎さんに似てません?
夫婦のことは2人だけにしか理解できないことがたくさんあるし、どちら...
マジックショーのようだった。
ただただ芝居の技術の高さを楽しむ作品。
スタニスラフスキーはもちろん、
ステラ・アドラー方式の、
お互いの関係性の中で、
芝居をビルドアップしていく中でちょっとした仕草、表情を複数重ねて試行錯誤して取捨選択していくような、
訓練を受けた人たちの、
マジックショーのようだった。
状況を客観的に話す芝居、
客観的から主観が入ってくる芝居、
感情的な芝居、
それぞれ相手の芝居によってシフトチェンジ、減速加速、出力高低、すべてコントロールしている。
小説家同士、その内容と現実、
録音部分の構成等、
シナリオでもうまい部分もあるが、それらのセリフのキャッチボールが素晴らしい。
欧米複数国で、
オーディションを行なった事があるが、毎回、技術の引き出しの多さに驚く。
ロゴス(論理)、エトス(倫理)、パトス(情熱)、同じシナリオでも、
それぞれの違う伝え方、
論理だけでは人は動かない、
倫理が無ければ観客は納得しない、
情熱との按分の割合、センス、
そんな技術に関して、芝居の技術に関して、youtubeで話してます。
スヌープ・ドギー・ドッグまで、いい芝居していた。
圧倒的有利な状況
事故か他殺か・・・
人里離れた雪山の山荘で、視覚に障がいのある11歳の息子が、血を流して倒れていた父親を発見し、息子の叫び声を聞いた母親が救助を要請したが、父親はすでに亡くなっていた。当初は事故による転落死と思われたが、前日に夫婦ゲンカをしていたことなど不審な点があり、妻で作家のサンドラに夫殺しの疑いがかけられた。自らの無罪を主張するサンドラだったが、事件の真相が明らかになっていくなかで、息子の証言が・・・さて真相は、事故死か自殺か他殺か、てな話。
なかなか奥深くて見応えあった。法廷でフランス語で質問され英語で答えるのは面白かった。
夫婦や家族の内情が法廷で明らかになるのはやれんなぁ、とも感じだが。
同じような仕事をして、妻の方が才能が有るとわかった夫は嫉妬するのだろう、とも思った。
裁判で勝っても得るものはない、という発言が有ったが、確かに、負けると失うものが多いが、勝っても得るもののない裁判ってあるよな、なんて妙に納得した。
邦題はフランス語の直訳なんだろうけど、こんな高尚なよくわからない邦題じゃあ、とっつきにくい気がする。
余白
脚本合戦
作家夫婦の旦那が山の上の自宅で転落死し、妻による殺害か、自殺かを問う裁判になる話。
雪山の自宅で作家として働く妻と、作家兼教師として働く夫という夫婦の夫が転落死し、当時視覚障害のある息子は犬と散歩中、自宅には妻と夫だけという状況から裁判になっていく。
ダニエルの証言に繋がる部分はまあわかるけれど、客観的なことや状況証拠に繋がるものを議論する訳じゃなく、主観的に殺人の動機と自殺の動機とどっちがより有意かを問うディベート大会を長々とみせられている様に感じてしまいダルかったし、これって判決に影響あったんですか?動機がより有意な方がギルティですか?という感じ。
そして結果は……だけれど、そもそも判決に影響する議論は最初だけで、判断できずに放置だし。
ということは見るべきはそこではないということで、だとしたらそれらをもっと簡潔にして100分ぐらいで収めて欲しいもんだ。
自殺か他殺か、それはどっちでもいい
話題作という事で
ストレス感じたらあなたの負け
忠犬
タイトルなし
予告だと完全犯罪サスペンスかと思い込んでた。日本の非人格的な法廷と異なり、いろいろ民度が違う。それでも検事のクソ解釈は最低だった。
夫婦の喧嘩のシーンは圧巻だし、夫が壊れていく様子が徐々に明らかになる。
この映画の主人公は子どもだ。一人になりたいとしたのは、自分で考えようとしたから。素晴らしい。確かに彼を保護しようとしても、ネットの言説は溢れている。すべてを聞き、知らなかった親の真実を知り、父と母の間で引き裂かれながら、彼は自立していく。
裁判の夜、母に会うのが怖かったのはそのせいだ。明らかに二人の関係性は変わる。
私自身も彼が本を出せなかった同様のシチュエーションを経験したので、見るのが苦しかった。
彼女のほうが自由奔放に見えるかもしれないけれど、こんな山奥に、しかも彼の故郷についてきた彼女の適応力と優しさのほうに、私は想像が及ぶ。彼女の言葉は攻撃的に見えても、彼の真実を言い当ててるだけ、迫力がある。これだけ苦しんでたんだから、もう少し優しくできなかったかとも思わないことはないけど、こんなふうにしか断ち切れなかったのだろう。時間をシェアするという方法ではなくて、彼のやり方を拒否するという形でしか、突きつけられないのも、もともと彼のほうが先生だかで優位にあったからでもあるかも。向き合わないという彼の言葉への反応が一瞬、彼女のわがままに見えても、それ自体が男の暴力なのだということが少しずつわかる。そして、子どもが遡及的に父の言葉を理解するくだりは素晴らしい。目が見えてなくても真実が見えている。
スクリーンの中で小説を読んでいるみたい
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