劇場公開日 2024年2月23日

「夫婦の問題は当人にしか分からない」落下の解剖学 HAL-9000さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0夫婦の問題は当人にしか分からない

2024年3月5日
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鑑賞方法:映画館

至極当たり前ですが、そう言うことかと。独善的な精神科医を黙らせたのは、観ていて痛快ではありました。

さてこの裁判は、疑わしくはあるけど、ほぼ状況証拠のみで物的証拠は血痕だけという、そもそも無理のある起訴。検事も主観ばかりのヌルい揺さぶりしかかけられず、被告の反論を許して逆に黙り込んでしまう始末。これを有罪に持ち込むのはほぼ無理だなーと言うのは観ていて大体分かります。つまりこの裁判はその行方は割とどうでも良くて、裁判を通して両親の隠しておきたい部分を無理なく、詳らかにするための方便なんでしょう。夫婦の秘密をほじくり返して、子供の前に曝け出す残酷さこそがこの映画のキモ。子供は、小さいうちは親をある時期までアイドルのように偶像化しているものだけど、大人になる過程で親も完璧ではなく、ただの人間だったのだと理解していくし、自分はセックスの産物だったのかと驚きながらも受容していく。それをこの映画は、一足飛びに息子くんに見せ付けます。それは本人が望んでいた結果とも言えるかも知れませんが、その意味を本当に理解していたかは疑問ですよね。親への愛情に応えたい自分、それ故に目を背けることも出来ず、親への信頼や愛情が壊れてしまうかも知れないと怯えていますが、その辺もよく描けていたのではないでしょうか。ホント悪趣味だなー(笑) でもラストは立派に自分の果たすべき役割を務め上げていましたね。良い映画だったと思います。

HAL-9000