劇場公開日 2024年2月23日

「言い切れないもどかしさ」落下の解剖学 monoさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0言い切れないもどかしさ

2024年2月23日
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鑑賞方法:映画館

サンドラの描き方がとてもいいんですよ。模範的でも完璧でもない女性(母親)で。最初の学生がインタビューに訪れたシーンからして、ちょっと人をおちょくってる感じで話を逸らしたり、愛想もそんな振り向けない。息子のことは愛していていろいろ考えているけど、べったりという感じもなく、まずは作家としての活動に力を注いでいたり。裁判でのあのなんとも言えない戸惑ったような表情もいい。あと、裁判で明らかになった夫婦げんかのシーン、夫のいい分も妻の言い分もお互い嘘ではないだろうけど、それぞれ感じてることがこうも違うのかというくらい噛み合わなくて、男女のズレが鮮明に見えて面白かった。このケンカで言った言葉も怒りに任せて出てきたものもあるだろうし、前後の文脈も本人以外は分からないし(本人たちでさえもうそこに至るまですれ違ってるし)、このハッキリと断定できない曖昧な感じもこの映画の良さかなと。

法廷シーンは検察側の誘導尋問にイラついたけど、フランスはあそこまで自由なのか?と思うくらいペラペラ言いたい放題だった笑 見えてるもの、証言されることは全体の一部でしかないけど、その一部から事実を明らかにする必要もあり、そこのズレやもどかしさ、視点の違いが長い法廷シーンでじっくり味わえる。
視覚障害の息子と犬の演技も見どころ。最後はなるほどそうきたかという感じ。

mono