枯れ葉のレビュー・感想・評価
全180件中、41~60件目を表示
枯れてますが、春の気配がありましたね
登場人物、街並み、全てが枯れています。
素朴というか、無機質というか、家の内装、店の食器類、出てくる全てが味気ない。
これは北欧が全体的にそうなのか、わざと狙ってやっているのだろうか?
登場人物もリアクションが薄い。会話もシンプルなんですが、ときどき自虐や皮肉が入ったジョークを言う。久しぶりに電話をして、
「誰?」
「あんたが見捨てた酔っ払いだよ。」
ここでクスリともせずに、そのまま会話が続くのが見てる方は笑えるのですが、話をしている当人達は相手のリアクションが全くなくても、違和感なく会話を続けていて、独特のノリというか、日本でいう粋や野暮のような空気感があるように思いました。
非言語コミュニケーションが多くて感情が読み取りにくいけど、大事な時は行動を起こしてちゃんと気持ちが伝わって、なかなかいい映画でした。
たまらん
愛だ。飾らなくて、ぶっきらぼうで、正直で。よかったよー、やっと自己紹介で二人の仲が再再スタートするかな。デートの映画チョイスもたまらん、ワンコのかわいさもたまらん、音楽もカメラワークも役者の表情も、カウリスマキ節が炸裂でたまらない。
なかなか良い映画ですね。
映画はやっぱり映像作品。台詞が無くても、観ている人に登場人物の心情を意図したワンシーンから想像させるなど「古き良き映画」を感じさせる作品だと思いました。
劇中では音楽も効果的に使われており、ちょっと郷愁を感じさせるフィンランド音楽は魅力的です。
犬が登場しますが日本犬ぽい犬種で、なんとなく親近感がわきます。尻尾を振ったり、ヒロインによく懐いているのが観られて微笑ましかったです。
中年男女の恋愛にしみじみ
極限まで削ぎ落された語り口で描かれる中年男女の恋愛談にしみじみとした味わいが感じられた。
製作、監督、脚本はフィンランドの名匠アキ・カウリスマキ。いかにも氏らしいオフビートなトーンが徹底されており、思わずクスリとさせるようなユーモアが要所に散りばめられていて最後まで面白く観ることが出来た。
ただ、終盤の展開はいささか”作りすぎ”という気がしないでもない。いわゆる普通のエンタメ作品ならいざ知らず、個人的にはカウリスマキの映画にここまでのドラマチックさを求めていないというのもあり、少し意外に思えた。過去作と比較しても、今回はかなり明快な作りに傾倒しているような気がした。
もう一つ、本作には重要なポイントがあるように思った。それは、アンサの部屋のラジオから流れてくるロシアとウクライナの戦争のニュースである。直接ドラマに関係してくるわけではないが、度々このニュースが流れることから、カウリスマキはこの戦争に対して思う所があったのだろう。彼はこれまで戦争という要素を自作の中に余り取り入れてこなかったので、今回はそこも意外であった。
それにしても、無表情な男と女、タバコ、パブ、音楽、映画、犬等。本作は”カウリスマキ印”と呼べるような物が存分に詰め込まれた作品となっている。前作「希望のかなた」を最後に監督引退宣言をしたが、それを撤回してまで撮り上げた本作は、まさしくカウリスマキにしか作れない独特な世界観が広がっている。その演出手腕はもはや伝統芸の域に達していると言っても過言ではないだろう。
特に、アンサとホラッパがカラオケバーで出会うシーンには唸らされてしまう。言葉を交わさず互いに投げかける眼差しだけで二人の距離感が見事に表現されている。
他にも、アンサの電話番号が書かれたメモをホラッパが落としてしまう場面や、それによって連絡が取れなくなってしまった二人が映画館の前でニアミスを繰り返す場面等。いかにも映画的醍醐味に溢れたシーンとなっている。メモの紙やタバコの吸い殻といった小道具の使い方も大変上手い。
劇中に登場する映画や音楽も面白い。
ジム・ジャームッシュ監督のゾンビ映画「デッド・ドント・ダイ」を引用して茶化すあたりは苦笑してしまった。他に、ゴダールの「気狂いピエロ」、デヴィッド・リーンの「逢びき」、ルキノ・ヴィスコンティ&アラン・ドロンの「若者のすべて」のポスターが画面上では確認できた。
音楽もカウリスマキ映画の大きな要素と言って良いだろう。セリフではなく楽曲の歌詞でアンサとホラッパの心情や置かれている状況が饒舌に表現されており、この辺りの選曲センスは流石である。
尚、カウリスマキは小津安二郎を敬愛していることを公言しており親日家でもある。自作の中に度々日本の曲を起用しているが、今回も前作で流れていた「竹田の子守唄」がラジオでかかっていた。よほどこの曲が好きなのかもしれない。
物静かなラブストーリー
孤独な男女の出会いを描いたフィンランド製のラブストーリー。淡々と静かに進む展開ですが街並みや風景が殺風景で物足りない印象。息苦しさを感じるような雰囲気が合いませんでした。
2024-19
なぜまた映画を撮ったのか?
カウリスマキファンではないが、何本か観ている。
不景気さと職場の不安定さ、その中での純愛。社会的に孤立した人が肩を寄せ合って生きていく様をユーモアを交えて淡々と描く。しみじみと切ない大人の愛なのだ。
ラジオではウクライナの戦況が繰り返しながれる。過去に何度もソビエト連邦と死闘を繰り返し、祖国の一部を奪われたフィンランドのロシアへの恐怖感がひりひり伝わる。カウリスマキがまた映画を作った原動力の一つにロシアと隣接する国の恐怖感があっのかも知れない。
シネリーブル梅田でアキ・カウリスマキ「枯れ葉」を観る。なぜこのタイ...
シネリーブル梅田でアキ・カウリスマキ「枯れ葉」を観る。なぜこのタイミングで恋愛物なんだろうと思ったが、ロシアのウクライナ侵攻が始まった頃のヘルシンキを舞台して、職を失った労働者階級2人のラブストーリーを描き切ることで、市井の人たちの人生へのささやかな讃歌と理不尽な侵略への怒りが同居する素晴らしい映画になっていました。
主人公2人が初デートで観るのが、まさかのジャームッシュ「デッド・ドント・ダイ」。駄作扱いされてるこの作品を楽しむ2人に、「ねっ、ねっ、この映画良かったよね!」と心の中で叫んだな。
もうひとつまさかだったのが、ラジオから流れるロシアのウクライナへの攻撃へのニュースに苛立ったアンサが局を変えた時に流れたのが「竹田の子守唄」。当然、カウリスマキは歌の内容を知っていてチョイスしたんだろうな。
マカルウスキの不思議で暖かい映画
ウクライナ戦争の様子が大きな古臭いラジオでかかっていたり、スマホを使用していたりとの不思議な世界観。でも、出演者はいわゆる弱者で、彼らの恋愛模様がほのぼのと伝わった。
味わい深い素敵な作品
採点4.3
引退宣言を撤回したアキ・カウリスマキの新作、それは静かなラブストーリーでした。
労働者階級の孤独な男女の物語なのですが、舞台が現代のようで現代のようでない不思議な感じ。
やたらでかいトランジスタラジオ。ケータイはあるものの、ダイアルの固定電話も出てきたりと何か不思議なんですね。
それとデヴィッドリーンにゴダール等の数々の映画ポスター、それに犬の名前などからも映画へのオマージュが強く現れてました。これは映画界に戻ってきた喜びでもあるのでしょうか。
それは友人でもあるジャームッシュにも。
作中で観た映画も「デッドドントダイ 」でしたものね。
相変わらずの独特の色使い、小津の様な静けさとカット、最後もチャップリンのようでした。
それと繰り返し流れる軍事侵攻のニュースも、フィンランドに住む者としての警鐘なのでしょう。
もちろん作品にはとぼけたユーモアや、センスの良い音楽も溢れていて実にカウリスマキらしいです。
特にカラオケでのガールズデュオは、その出番も唐突で印象に残りました。
とてもシャイで孤独な二人はカラオケで出会い、ゆっくりと距離が近づいては離れ、そしてもう一度巡り会う。
ホラッパとアンサそれとチャップリン。皆孤独に生きてきたけど、これからは皆で一緒に歩んでいくのでしょう。
それと彼女のウィンクが実に素敵なんですよ。
とても味わい深い素敵な作品でした。
底辺かもしれないけど、底辺じゃない
主人公の二人は崖っぷちで、いつもウクライナのニュースが流れてきて暗くなりがちだが、運命の出会いというものが二人を後押ししている。男はアル中から卒業できたし、女は自信ありげに男を待っていたし。それもこれも全て、運命です!久し振りに恋愛佳作を見た。
恋、あるいは渇望
労働者階級の厳しい生活の中で生まれた泡沫の恋。
父や兄をアル中で失ったアンサ。地獄を知る彼女はひとりの生活に安堵し、過酷な労働も苦にならんのだろうが、ささやかな潤いを求めるのもまた真なり。
アルコールにより失職を繰り返すホラッパ。完璧なアル中。職もないのに婚姻届を出す夢をみる最低なクソ野郎だった。監督の自虐を投影したのだろうがホラッパに容赦はなかった。
観る自分はアンサに恋をした。
感情をぐるんぐるん振り回された。
一緒に潤いたかった。
驚くべきは恋の瞬発力。
「直ぐに来て」というアンサの甘美な言葉に萌えた。「渇望」という言葉が相応しいか。アル中が簡単に治らないことを一番わかっているのは彼女だもんなぁ。
そう、たとえ束の間でも幸せにまぐわえるならそれで良し。恋の魔法がとけたらとっとと別れれば良い。
ということで自分的にはよく知る世界なので余計なことまで考えてしまった。ロシアのウクライナ侵攻批判、そして熱い映画愛のストレートな表現にまったく嫌味がないのは流石だ。
イチイチ額に入れて飾りたくなるような絵面!
自分はカリウスマキの作品全く見た事無くて初見だったのでいつもどうりの監督のクセってのを知らなかったから逆に斬新でした!
あえて棒読みで感情無く会話をしてる事によって考察では無いけどこちらが今どんな感情なのかって考えながら見ないといけなくなるという手法が面白く感じました!
あと効果音が無いので曲や歌が映えるんすね〜
ある意味パーフェクトデイズに近い部分のある作品だなあとか思いました(特に効果音が無くてセリフ少なめで
音楽のセンスが無茶苦茶良いのが共通してますね)
劇場が地方の古びたミニシアターでの鑑賞で自分も大概ジジイなんですが他の客が根こそぎ60オーバーで自分が最年少くらいの客層だったのでビックリしました笑
最後にパンフレットがめちゃくちゃ丁重でオシャレな作りで買うつもりが無かったのに実物みたらついつい衝動的にジャケ買いしてしまいました!!!
しかし今の時代の作品て感じが一切無いのが良いですね。
カウリスマキ節
随所にカウリスマキ節があり、クスッと笑えるところもありで良かった。
しかし、気持ち的にノリが悪かったのか、イマイチ感動は無かった。
過去に観た『名前のない男』の方が、ずっと心に刺さったな。
レニングラード・カウボーイズ
もっと早く観たかったんだけど、いつも混んでて見送り見送り、やっと観れた(笑)
この監督の作品を観るのは初めてなんだけど、よく知らない巨匠という認識で、バイアスかかった状態で観ました。
最初に思ったのは、色。
画家なのか?と思うぐらい、色に対してセンスいい、すごく色が印象に残ります。
次に、悲愴感。
悲愴感が全面に出てて、悲観的に世の中を感じてるんだな…と、別に悪く言ってるわけじゃないです。
あと、音楽。
“生来の悲しみに幻滅をまとって”
とか、流れる曲の歌詞にも大きな意味があり、歌詞でも伝えてきますね。
スコアは、75~80点ぐらい、厳しめ3.5。
良かったです。
もっと、この監督の作品を観たくなった。
まだ観られてない方は、オススメです。
PS.観たあと調べてみたら…
むかし話題だったレニングラード・カウボーイズ、その映画を撮った監督だと知りビックリ(笑)
劇中に出てくる可愛いワンちゃんは、監督の愛犬らしいですワン(笑)
おかえりなさい
二人が最初に自宅で慎ましく食事をするシーンにうっとり見惚れました。
小津安二郎監督は画面構成や俳優の演技の自由度を極度に排除した作り込みで独特の世界観を抽出していると思いますが、カウリスマキ監督も同様に画面構成や俳優の演技を自分のスタイルにあわせて作り込み、独特な語り口と世界観を提示しているように思います。でも、抽出された世界は小津作品とは全く別物で、簡素な画面構成、暖色系と寒色系の色遣いの対照、無表情で無口で無愛想な主人公達が紡いでゆく物語。それらはいつも独特な可笑しさと哀しみと密かな幸福感を湛えているよう思います。
今回はロシアのウクライナ侵攻という殺伐とした雰囲気を作品の要素に組み入れながら、なお一片の希望と余韻を感じさせる構成になっていてそこがまた良かったと思います。
そして音楽。「浮き雲」では空を見上げる主人公たちの眼に映る浮き雲を映さずに、二人の希望を表していて見事でしたが、この作品でも「枯れ葉」の映像はなく、今度はあの名曲に出てくる歌詞と深い旋律が、シーンに溶け込んで、生きることの哀しみと歓びを感じさせて見事でした。
ちなみに、最初に使われていた音楽。あれ昔「赤い鳥」が歌ってヒットした日本の民謡「竹田の子守歌」の外国カバーですよね?あれも哀しい歌でしたが、ぶっとびました(^_^)
引退を表明されていたようですが、多分10秒見ればわかるその刻印は今回もしっかりと刻まれていて、おかえりなさいという感じでした。
全180件中、41~60件目を表示