「おかえりなさい」枯れ葉 penさんの映画レビュー(感想・評価)
おかえりなさい
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二人が最初に自宅で慎ましく食事をするシーンにうっとり見惚れました。
小津安二郎監督は画面構成や俳優の演技の自由度を極度に排除した作り込みで独特の世界観を抽出していると思いますが、カウリスマキ監督も同様に画面構成や俳優の演技を自分のスタイルにあわせて作り込み、独特な語り口と世界観を提示しているように思います。でも、抽出された世界は小津作品とは全く別物で、簡素な画面構成、暖色系と寒色系の色遣いの対照、無表情で無口で無愛想な主人公達が紡いでゆく物語。それらはいつも独特な可笑しさと哀しみと密かな幸福感を湛えているよう思います。
今回はロシアのウクライナ侵攻という殺伐とした雰囲気を作品の要素に組み入れながら、なお一片の希望と余韻を感じさせる構成になっていてそこがまた良かったと思います。
そして音楽。「浮き雲」では空を見上げる主人公たちの眼に映る浮き雲を映さずに、二人の希望を表していて見事でしたが、この作品でも「枯れ葉」の映像はなく、今度はあの名曲に出てくる歌詞と深い旋律が、シーンに溶け込んで、生きることの哀しみと歓びを感じさせて見事でした。
ちなみに、最初に使われていた音楽。あれ昔「赤い鳥」が歌ってヒットした日本の民謡「竹田の子守歌」の外国カバーですよね?あれも哀しい歌でしたが、ぶっとびました(^_^)
引退を表明されていたようですが、多分10秒見ればわかるその刻印は今回もしっかりと刻まれていて、おかえりなさいという感じでした。
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