「無関心であることの罪悪」関心領域 シネマディクトさんの映画レビュー(感想・評価)
無関心であることの罪悪
第二次大戦中、アウシュビッツのユダヤ人収容所と塀一枚隔てて、暮らしていた収容所長一家の平凡で幸福な生活を描く強烈な作品です。収容所の中は一切見せず、遠くから叫び声や銃声が聞こえてくるだけでホロコーストを描く実験的な演出方法がポイントです。とは言え、ドラマらしいドラマもなく、短いカットと効果音だけで淡々と進行していくので、演出の意図は分かるんだけど、睡魔に襲われるのもしばしば。一方で、一枚の塀の向こう側で行われていることを知りながら、あえて目をつむり日々の暮らしに埋没していくのは、所長一家だけではなく現代に生きている私達自身のようにも思えてきます。塀ではなくTVやネットの向こう側で毎日行われている世界中の悲惨な事件も、所詮は他人事であり、やがて関心を失ってしまう。関心のない事は報道されなくなり、報道されない事はやがて実際に起こってない事になってしまう恐怖を感じました。役者では、『落下の解剖学問』に続いて、サンドラ・ヒュラーが嫌な感じの女性役を好演。
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