「技法について語るべきか、テーマについて語るべきか・・・」関心領域 mark108helloさんの映画レビュー(感想・評価)
技法について語るべきか、テーマについて語るべきか・・・
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ヴィルヘルム・ハンマースホイの絵画を思わせるような映像と終始その映像と似つかわしくない恐怖映画の効果音ような音響が終始混濁し、かつて経験したことの無い様な時空間が浮かび上がる。あの忌まわしいアウシュビッツを一切描かず、現代にも通じるありふれた家族の日常の中の異常性がかくも現代の我々にリアリティを持って迫ってくる映画作品を他に知らない。ここで描かれている日常の主人公はほかならぬ、われわれの良く知るアウシュビッツの所長でナチ親衛隊(SS)幹部だったルドルフ・ヘスとその家族の日常である。関心はその妻の異常さである。その妻があの忌まわしいアウシュビッツの塀の外で箱庭のような庭園付きの家をせっせと構築する様はまさにナチスそのものである。自然をコントロール可能な対象としてみたその思想は優性民族思想へつながる。塀の外のように見えて実はズームアウトするとそれは海の中で思念として構築された家を浮き彫りにしたタルコフスキーの🎦ソラリスを想起させられる。タルコフスキーもまさにソビエトの粛清政治を終生批判してきた人物である。同様に自然をコントロールして悪魔の産物を生みまだしたある科学者の映画作品、🎦オッペンハイマーが映画におけるキュビズムであるならば、本作品はまるで映画におけるフォービズムである。家族の日常に眠る野獣が描かれているのである。
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