「他人事ではないです」関心領域 かつのじょうさんの映画レビュー(感想・評価)
他人事ではないです
ナチスによるユダヤ人虐殺の象徴といえるアウシュビッツ収容所のすぐ隣で、所長一家が裕福で平和な家族団らんの生活をしていたというのを、音や気配で感じさせる秀逸な演出が話題なので観に行きました。
観る前は、「大勢の人々がこんなにひどい目に遭っているのに無関心だなんて、なんて恐ろしい、冷酷非道な奴らだ!」と怒りや恐怖を感じるのではないかと思っていました。
でも、わりと最初の方から、これは現在、平和を享受して呑気に映画を観ている私たちに対する断罪のメッセージも込められているのではないかと、重苦しい気持ちになりました。
戦争・紛争で直接の暴力・虐殺にさらされている人々に対してはもちろんですが、貧困や差別その他の理不尽に苦しむ人々に対しても、平和で便利な生活を送る自分は構造的な悪の側にいるのではなかろうか、と感じました。非常にしんどいです。
ではどうすればいいのか、までは俄かには思いつきませんが、他人の苦しみを想像できない人は、この所長一家と同じだよ!ということなのでしょう。
呑気に気楽に暮らす人は、一度みてみるといいと思いますが、感じやすく傷つきやすい人には危険な作品です。極度に落ち込むことがないよう、気の合う人と一緒にみて頭を切り替えられるようにしておくことをおすすめします。
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