「 だけども問題は今日の雨傘が無い」関心領域 邦画好きさんの映画レビュー(感想・評価)
だけども問題は今日の雨傘が無い
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主人公はアウシュビッツ所長のルドルフ・ヘス。ヒトラーの側近だった人もルドルフ・ヘス。ただし、前者はルドルフ・フェルディナント・ヘス(Höß )で、後者はルドルフ・ヴァルター・リヒャルト・ヘス( Heß )と、名字のスペルも違いますが。
この作品、井上陽水の初期の代表作「傘がない」の冒頭を思い出しました。「だけども問題は今日の雨傘がない」ようするに、所長の嫁(落下の解剖学のザンドラ・ヒュラー)にとっては、アウシュビッツでなにがあろうと、また夫が出世して赴任先が変わろうと、自分自身が現在お気に入りのこの生活環境を終わらせたくないってことなんですね。
アウシュビッツ収容所と壁一枚隔てた場所で、昼夜収容者の悲鳴が聞こえたり、死体を焼却する白煙があがるような環境にあっても彼女にとっては「関心領域」には無いということです。
ナチス・ドイツが悪だとか、そういうことはこの映画では関係なく、所長は自分の任務を忠実に守り、また家族も守るという家長としての役割を果たしているに過ぎません。
我々はこのドラマの終焉(ドイツの敗戦)を知り、この所長も敗戦後ニュルンベルク裁判にて戦犯として極刑を受けることを知っているわけで、そういう意味では「あわれ」を感じました。
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