「時代の狂気が認知を歪めたのか、認知を歪めないと正気を保てないのか?」関心領域 bionさんの映画レビュー(感想・評価)
時代の狂気が認知を歪めたのか、認知を歪めないと正気を保てないのか?
収容所から聞こえる人の叫び声と銃声に表情も変えず笑ったり、怒ったり、遊んだり日常生活を送るヘス一家。それは、収容所から発する音を単なる環境音として脳が処理してしまっている。
音に関しては、距離と反響を計算した上で再現したらしいが、何度も聞いているうちに慣れてしまう自分に気がついて恐ろしい。
無関心を通り越して、現状を当たり前として優雅な生活を送るヘス夫人。使用人の女の子を叱りつけるのに「ガス室送り」の言葉まで発する始末。ザンドラ・ヒュラーの冷徹演技が、時代の狂気を見事に再現している。
民族浄化が回り回って、現在進行形で行われている今こそ、忌まわしき過去を振り返えなければならないのだろう。
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