劇場公開日 2024年5月24日

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「映像と音の乖離。表象不可能なものの存在感」関心領域 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0映像と音の乖離。表象不可能なものの存在感

2024年5月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2023年。ジョナサン・グレイザー監督。アウシュヴィッツでユダヤ人の集団殺害が本格化すること、収容所所長の家族は壁一つ隔てた地所で優雅に生活していた。収容所からのなんとも不気味な物音が途絶えないなかで、平然と暮らす一家の様子を描く。
子育て、出世、庭園、川遊び。一家の生活はちょっとだけ上流だが標準的な家族生活に過ぎない。妻はイタリア旅行を望み、夫の転勤が決まるとアウシュヴィッツでの暮らしを手放せずに単身赴任を求める。子供たちはほほえましい兄弟げんかをしている。表面的に進行するこうしたごく普通の暮らしの背後に終始、収容所からの音が聞こえているが、つかのまの訪問者である妻の母以外は気に留めている様子はない。それが恐ろしい。音と映像の乖離。アラン・レネとまではいかないが。
犠牲者であるユダヤ人はほぼ画面に登場せず、収容所も遠くから眺められるだけだが、そこにあった「悪」の存在感は半端ない。「表象不可能なもの」の議論を思い出す。描かれないことによる存在感。

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