「ヤバいもの見たさだとOKだけど、真面目すぎると感化されてしまいそう」クラブゼロ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
ヤバいもの見たさだとOKだけど、真面目すぎると感化されてしまいそう
2024.12.10 字幕 アップリンク京都
2023年のオーストリア&イギリス&ドイツ&フランス&デンマーク合作の映画(110分、G)
持続的な断食を提唱する教師とその教えに従う生徒を描いたブラックコメディ&スリラー映画
監督はジェシカ・ハウスナー
脚本はジェシカ・ハウスナー&ジェラルディン・バヤール
原題の『Club Zero』は、劇中で教師ノヴァクが生徒に教える団体の名前のこと
物語の舞台は、ヨーロッパのどこかの進学校(ロケ地はイギリスのオックスフォードにあるセント・キャサリンズ大学)
エリート校「The Tallent Campus」では、父母会の強い要望を受けて、栄養学の先生ノヴァク(ミア・ワシコウスカ)を招くことになった
ノヴァクは「断食茶(Fasting Tea)」などを手掛け、「意識的な食事をして、永続的な断食をする」というモットーを掲げていた
校長のドーセット(シセ・バベット・クヌッセン)はノヴァクの方針に寛容的で、彼女は7人の生徒を受け持つことになった
自制心を鍛えたいエルサ(クセニア・デブリン)、糖尿病を患うフレッド(ルーク・バーカー)、トランポリンのために脂肪を落としたいラグナ(フローレンス・ベイカー)、奨学金のために参加するベン(サミュエル・D・アンダーソン)、環境保護に関心のあるヘレン(グウェン・カラント)、原始人ダイエットに興味のあるコルビニアン(アンドレイ・ホゾック)、マインドフルネスに興味のあるジョアン(サデ・マクニコルス=トーマス)の7人は、ノヴァクとの関わりの中で、自身の中にある「意識的な食事」というものを考えるようになった
だが、意識的な食事まだしも、単一食事(Mono Diet)あたりからついていけなくなり、とうとう「断食」のゾーンに入ってくると、コルビニアンとジョアンは離脱してしまう
当初は反抗的だったベンも、母親(シセ・バベット・クヌッセン)の期待に応えるために食事を残せないという理由がわかり、母親の呪縛から逃れるように促されてしまう
彼はエルサに気があることがバレていて、エルサは彼に近づいて、ベンを取り込んでいく
生徒も協力する流れが生まれ、5人とノヴァクは強い絆で結ばれていくのである
映画は、さながらカルトの洗脳を傍で眺める感じになっていて、客観的視点だと危険な入り口というのはよくわかる
主に3つの動機からなる生徒たちは、親との関わりに悩む者、自分本位の者、対外的意識高い系に分かれている
そんな中で能動的にのめり込むのが自分本位型で、背中を押されて抵抗できないのが親との関係に悩む者となっていた
意識高い系(興味本位系)はあっさりと脱落し、もう一人はスイスに旅行に行っていたために残ることになったのだが、おそらく意図的なものになっているのだろう
エンドロールでは、残されたヘレンを中心とした「最後の晩餐」のようなショットが延々と描かれるのだが、どうやらこれは偶然の産物らしい
一応は映倫区分Gなのだが、エログロはないけど倫理的にアドバイスが必要なような気がする
とは言え、12歳前後だと意味がわからないので、16〜18歳くらいだと助言が必要になるのかな、と感じた
いずれにせよ、頭が良い人がハマってしまうカルト図解という感じの内容で、どのように人が感化されて洗脳されていくかを描いていた
SDGsを揶揄する内容になっていて、それらしい理屈が登場しつつ、自分で考えて選択したように誘導するのは上手いと思う
映画は結論ありきでキャラクターが動くので、ノヴァクと同じことをしても同じようにはならないが、このような罠にハマらないためのヒントはたくさんある
なので、自分ならどこで違和感を持てるかとか、家族の対応としてどうすれば正解なのかをシミュレーションできるので有意義な映画なのではないだろうか
ただし、後半のあるシーンは直視できない人が多いと思うので、あまり「満腹」では鑑賞しない方が良いのではないか、と感じた