劇場公開日 2023年11月23日

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「忍者のご利用は用法用量を守って正しくお使いください。」首 モアイさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0忍者のご利用は用法用量を守って正しくお使いください。

2024年9月7日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

笑える

早速ですが、戦国時代を舞台にした作品で忍者を多用する作品は控えめに言って〇ソです。

もちろん架空の人物を中心とした創作の物語でならまだいいのですが、実在した武将と史実を軸に据えた大河ドラマのような作品で忍者を多用するようでは、コレはもう逃げたな…としか思えません。

確かに忍者は便利です。武将の手足となって、その企みを実現させてくれますし、歴史的事実にがんじがらめで不自由な武将たちに変わってありとあらゆるオリジナルエピソードを乗っける事もできれば、主人公の武将が関わってない美味しい歴史的なイベントにも何らかの形でそこに居合わせたとして絡める事が出来るのです。詳細な活動記録は無いが確かに存在したというあまりに便利で自由な存在、忍者―。

世に溢れる歴史物というジャンルの中で先行作品と差別化を図るのが大変な事は簡単に想像ができます。できるのですが、それでも歴史上の有名人、人気イベントのネームバリューにあやかって作品を作るのであれば、新しい仮説や独自の解釈を駆使して頑張って欲しいなというのが基本的な私の想いです。なので主人公の有名武将をそっちのけで忍者が冒険し、恋愛し、殊勲をたて、実は歴史を裏で作っていました!的なエピソードを多用している作品を観ると、作り手側が歴史から逃げたのだなと思ってしまうのです。

そしてまさか本作が割と忍者成分高めの作品になっているとは思いもしませんでした。
一応、曽呂利新左衛門も服部半蔵も実在の人物ですが映画での扱いはほぼ自由な忍者枠であり、勝村政信と桐谷健太の空中戦は失笑ものです。
メインの登場人物がことごとく利己のために人を裏切り、他人の命を屁とも思っていない中で、このファンタジー枠の忍者たちだけが主君に忠実な姿で描かれ、かなりの活躍を見せますが、そもそも北野武監督は大義だ忠義だ言ったって戦国武将は野蛮な殺人狂という独自の解釈を持っていた訳で、そのコンセプトで作るならファンタジー忍者の忠誠心なんてかえって邪魔だったのでは?と感じるのです。

また今作でのコミカルなシーンのほとんどが、ただのビートたけしのコントを見せられている感じで、映画の雰囲気からは浮いているように見えました。
これも映画の序盤までは良かったと思うのです。利休からの書状を読む秀吉と秀長のやり取りと、それを見る官兵衛の「奉公先 間違えたかなぁ~」と言わんばかりの表情を映すところ等はグッときます。
あくまでも物語の登場人物たちは真剣なのに観客という立場で観ていると、どことなく滑稽でクスッと出来るというのが良いと思うのですが、後半(家康と会うあたりから)は物語の登場人物ではなく演者であるビートたけしや大森南朋がドンドン前に出てきてコントを演じているという風に映ります。私自身が笑い上戸な事もあり、このコントでも笑える事は笑えるのですが、映画の流れの中では不自然に浮いている印象を抱くのです。
もともと北野武監督作品って何でここでこの演出なの?という浮いた印象を抱くシーンが多いのですが、アウトレイジの1、2作目が良かったのは笑えるシーンも含めて映画の流れの中で不自然に浮いていると感じるシーンが無かったからという事もあったと思うので、本作も開き直って同じ様に撮ればよかったのになぁ~と残念に思います。

またシリアスとかコミカルとか関係なしに何人かの役者の演技が時代劇的雰囲気が皆無なのも気になりました。特に遠藤憲一と大森南朋が顕著で、この浮きっぷりは一体何なのか?木村祐一にはそもそも演技力など期待していないので彼の演技についてはまぁいいのですが、その木村祐一が結構出ずっぱりなのも含めて、ここら辺の演出意図が自分にはよく分かりませんでした。ただそのせいもあり、血統もキャリアも上等な中村獅童が本作でのヨゴレ役を好演しているのが際立ち、とても印象深かったです。
この映画で一番武勲をたてたのは中村獅童だったのではないかなと思いました。

モアイ
琥珀糖さんのコメント
2024年9月8日

こんにちは

時代劇の決まり事や史実まで自由に変えてしまう。
そんな事を平気でヤッテ、観客もなぜか許してしまう。
北野武監督だからかな?

琥珀糖