「北野節全開の戦国絵巻!難波茂助:中村獅童だけでも観る価値あり。」首 菊千代さんの映画レビュー(感想・評価)
北野節全開の戦国絵巻!難波茂助:中村獅童だけでも観る価値あり。
冒頭から強烈な映像、多分この手の作品が苦手な方なら「うっ」とくるでしょう。戦国を描いた作品数あれどある意味あの狂気の時代に生きていたら思うであろう世界が強烈に描かれている。
コンプライアンス・倫理、今なら当たり前に語られる言葉もこの当時ある訳もない、武士としての心得はあったのかもしれないが。所詮人間も一匹の動物なんだと痛感させられる。
内容として史実に基づいているかはあまり問題ではない、百姓から成り上がる様なその世界は問答無用の一言、殺し・騙し・力をもって成り上がる人間の姿は戦国時代のリアルそのものだ。映画「ラストサムライ」や大河ドラマではある意味カッコいい「侍」が映し出されるが実際その乱世に生きていたらどうだっただろうか?人しての尊厳など蹂躙されまさに弱肉強食の世・・・今想像するだけで恐ろしい。そして、この進化を遂げたはずである現代でも世界のあちらこちらで無慈悲な殺戮が繰り返されてる現実に憤りを感じるのは私だけだろうか。
現代に生きる我々が四百数十年前のこの時代をどの様に見て、感じるのであろうか。
安土桃山城の天守から見る景色は今も昔もさぞ美しいだろう、千利休の侘び寂びの世界も静謐で簡素な美しさに違いはないだろう、しかしその実はただ侍大将になる事だけを夢見ていた百姓難波茂助の姿に全てが凝縮されている様な気がする、中村獅童の演技はなんというか演技を超えた気色悪さとただの本能だけで成り上がろうとする人間の本質を十二分に表現している。この作品は秀吉や信長による戦国武将の映画であると共にその実はなもなき平民達の泥にまみれた語られる事もない底辺の現実の話しなのかもしれない。