「「さすが」って言わせてと求めてしまう」首 二度寝さんの映画レビュー(感想・評価)
「さすが」って言わせてと求めてしまう
役者たけしの滑舌と加瀬亮のだだくさなガナリが
聞き取りづらい(悪いとは違う)のはさておき、
西島秀俊がちょっと煮え切らない感じで、
エンケンとのあいだにある
もっとねっとりしたものが垣間見えれば、
もっと行動原理に共感できたのか。
ともかく全編衆道が大きな動機のわりには
誰も彼もエロスが足りない。
色気を出してくれそうな浅野忠信は
相変わらず一歩引いたズルい役どころ。
ほか寺島進やツダカン、六平直政など、北野組大集合。
たけしは大森南朋が好きなのか。
サリーはもはや妖怪。
ともあれ汚いおっさんたちが居並ぶのは最高のひと言で、
なかでもエンケンが西島秀俊をねぶるシーンは
オレは何を観せられてんだ感にシビれた。
同じ東宝の『ゴジラ-1.0』は、
吉岡秀隆とかでなく、もうちょっと目のイった滝藤賢一を
汚して出すなど見倣って欲しかった。
白眉は中村獅童。
頭の悪い役どころをカッチリ演じ、いちばん観入った。
『怪物の木こり』にも出るとのことで愉しみだ。
桐谷健太もよかった。
『ビヨンド』みたいに新井浩文にも傍にいて欲しかった。
2時間11分とのことだが、体感的には2時間半越え。
だからといってつまらないわけではないのだけど、
終盤に至るまで気持ちの置きどころが定まらず、
「あ、獅童でよかったのか。
というかこれたけしが天下取るまでやられたらヤバいな」
と思った矢先にストンと終わってひと安心。
なんというかエピソードの積み重ねの裏というか奥や
それを敢えて外してサプライズさせる部分を
歴史知識にある程度委ねているため、
表層的なシーンの羅列になっているのが
いまひとつ「最高!」と叫べない原因なのかもしれない。
淡々とした死の積み重ねの果てに
見えるはずの寂寥感が見えてこないのだ。
まあ首が飛び交い、血飛沫の舞う娯楽作品に何言ってんだ
という感じだが、
殿にはどうしても「さすが」って言わせてくれと求めてしまうんですよ。
あとホーキング青山の白塗りはよかった!
そうなのかもしれませんね。カラダまで委ねてしまうほど、男に惚れ込んでみたいと。クレバーな方ですし、お金だってあるでしょうから、いろいろ見え過ぎて、イーブンで付き合える相手もなく、寂しいのかもしれません。なんて遥か低みから、勝手な想像をしました。