アステロイド・シティのレビュー・感想・評価
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ヘンとの遭遇
1955年、アメリカ南西部の架空の町“アステロイド・シティ”。
この砂漠の町にかつて隕石が落ち、巨大クレーターが観光名所になっている。
宇宙科学賞の授賞式が開かれ、受賞者である天才子供たちとその家族が招待される。
そんな中、突如として宇宙人が現れる。
町に軍がやって来て情報や関係者を隔離。しかし子供たちは公に公表しようと…。
ウェス・アンダーソンが遂にSFを…? あのシーンなんて『未知との遭遇』クリソツ。
ウェス・アンダーソンがただのSFを撮る訳がない。そう。本当の意味でただのSFではなかった。
開幕していきなり紹介。この“アステロイド・シティ”で繰り広げられる群像劇は、ある劇作家が創作した舞台劇。登場人物たちも役者が演じている。
虚構=劇中劇と現実=舞台裏が交錯して展開。
珍しい題材と奇抜な設定ながら、見る者の意表を突く作風はいつもながらのウェス・アンダーソン・ワールド。
そう考えると、“アステロイド・シティ”の美術にも納得いく。
リアルな町並みと言うより、ジオラマのような感じ。よくよく見ると、背景の岩山なども画や張りぼてっぽい。
しかしながら、カラフルなセットやビジュアルセンスは健在。このセットそのままにして、“アステロイド・シティ”擬似体験が出来るツアーでもやって欲しいくらい。
現実の舞台裏になると、一転して白黒。
アンダーソンは舞台の裏の人間模様に興味あったらしく、ブロードウェイ黄金時代へのオマージュを込めて。
凝った画面構図やビジュアルや設定、その中で繰り広げられる虚構と現実のシュールでユニークな人間模様。
ジェイソン・シュワルツマンら常連組。トム・ハンクスがアンダーソン作品初参加。
豪華キャストの面子はアンダーソン作品過去最高かも。だって、ジェフ・ゴールドブラムやマーゴット・ロビーの贅沢な使い方と言ったら!
とりわけ特にウケたのは、あの宇宙人。
映画史上最も地味に登場。来訪の目的もそれ…?
シュールで何処かキュートな見た目。アニメーションで表現された遊び心も。
もはやコメディとか群像劇とかではなく、“ウェス・アンダーソン作品”それ自体が一つのジャンルになりつつある。
凝った画面構図やカラフルな美術、風変わりな登場人物たちや独特の世界観…。
ハマる人にはハマる。好きな人には毎回楽しみ。
つまりそれは…
ちなみに私は、アンダーソン作品は好きだ。古くは『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』、近年も『ムーンライズ・キングダム』『グランド・ブダペスト・ホテル』『犬ヶ島』にはハマった。
昨年の『フレンチ・ディスパッチ』はまあまあ。
そんな熱烈な支持者でもなく、偏見もない、純粋にアンダーソン作品を楽しませて貰ってる身として、今回は…。
散々知ったかのように御託を並べ立てたが、ビミョーだった…。
いや、つまらなかった訳じゃない。『フレンチ・ディスパッチ』はちとハマらなかったが、今回はさらにハマらなかった。
題材や設定は面白味あったんだけどね…。
アンダーソン印で、“未知との遭遇”の珍騒動を見たかった気がする。描かれるのは、いまいちよく分からない群像劇。
二段構成なのもいまいちピンと来ず。
コメディとしても群像劇としても『ムーンライズ・キングダム』や『グランド・ブダペスト・ホテル』の方が圧倒的に面白かったし、二段構成も先日Netflixで配信された短編『ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語』の方が見せ方や巧みさがあった。
熱烈なアンダーソン支持者からすれば、本作も凝った作りや深みがあり、安心安定唯一無二のアンダーソン・ワールド。
だが、今回の私の素直な感想は…
ポカ~ンと、ヘンとの遭遇であった。
相変わらずのウェス・アンダーソン!なのだが…
う〜ん…
まあまあだったか…
さほど期待もしていなかったのだが。
とはいえ、やはり、ウェスだからねえ〜
全く期待するな、というのもムリがある。
相変わらずのピカイチのセンスの良さは、画面の隅々にまで行き届いてはいる。
う〜ん、が、しかし…
もう、かつてのようなマジックは…
なかったんだよ、なあ〜
宇宙人の登場シーンには、流石に笑ったけど。
やっぱり、ああいうのは抜群に上手い。表情といい微妙な間の取り方といい、ホント絶妙。
ちなみに全部CGにしか見えなかったが、実際はジェフ・ゴールドブラムが演じていたらしい。
と言っても、殆ど目の動きだけだったと思うのだが、あの独特の身体の動きも、彼の芝居を元にマニピュレートしたのだろうか?
だとしたら余計に笑えてくる。
ちなみに最大の見せ場というかクライマックスは、おそらくマーゴットの登場シーンだったと思うのだが…
あんまり、グッと来なかったしなあ。
父親役のジェイソン・シュワルツマンも、悪くはなかったが、戦場カメラマンなら他にも適役はいたんでは?
元々は、シュワルツマンが劇作家と主役の両方を演じる予定だったらしいが、むしろ劇作家の方のみにして、主役をエドワード・ノートンにした方が良かった気はする。
但し、そもそも最初からシュワルツマンのために書かれた脚本らしいから、そういう訳にもいかんか…
スカーレットの役も、たぶん元々の設定としてはモンローのオマージュだったのかもしれないが、あの黒髪じゃエリザベス・テイラーにしか見えない。ブロンドにしちゃうと、あからさまにモンローに寄ってしまうので、それは避けたのかもしれないが、そこは思いっきりブロンドに振り切って欲しかった。
ていうか、登場人物それぞれのキャラ立ちが、ウェスの作品にしては、みんな揃いも揃って、何故か今回はイマイチ…
ここが一番のマイナスポイントだったか。
マヤ・ホークなんて、もっと出来たと思うけどなあ。
トム・ハンクスだってイイ線は行ってたが、もっと出来たはずだ。
やはり結局のところ、50年代への憧憬が強すぎて、あまりイジれなかったということ?
でも、そこは敢えてイジリ倒さないと!
オモシロクはならんよ。
というか、それこそがウェス・アンダーソンの真骨頂だったはず。
あと、巨大クレーターが舞台設定の基本だったんだから、これは最初の方のシーンで、ドカンと俯瞰で上空から真っ昼間の自然光の中、壮大に撮ってくれないと!
それが出来ていれば、冒頭のツカミもバッチリで、気分も相当アガったはずだ。
まあ、そもそもなのだが、アメリカンな50sのノスタルジーに対して素直にピンと来ない人にとっては、あまり向いてない映画なのだろう。
それにアフリカ系のジェフリー・ライトが何故か将軍を演じていたが、この時代の黒人差別を完全に避けていては、脳天気な白人の懐古趣味にしか見えない。
それが狙いだったのかもしれないが、であれば、その白人の脳天気ぶりを、もっと批評的に痛快に笑い飛ばして欲しかった。
マヤ・ホークが演じる女教師に絡むカウボーイ風情などでは全く物足りない。
その一方、核実験をブラックなコントのネタのように扱うのは、やはり日本人としては微妙だ。
あまりに非人道的な過去を、皮肉にせよ、笑いに持っていくというのは、正直ドン引きなのだ。
はあ…
次回作は頼むぜ!
ウェス君!
高等な世界観
初ウェス・アンダーソン。
若くして話題作を次々と世に送り出してきた天才監督と巷で評判のウェス・アンダーソン。なかなか彼の作品を観れず今回初めて配信にて鑑賞。
難解というより、意図的に観る者の感情移入を拒むような、作品世界に没頭することを拒むよう作られた作品。
米ソ冷戦下での核開発競争など50年代のアメリカを舞台にしながら明確なメッセージをくみ取ることも難しい。
正直見てる途中から理解しようとすることが馬鹿らしくなる。つい先日鑑賞した「去年、マリエンバートで」の方がまだ見やすいと思えるくらい、観る者が理解しようとすればするほど突き放されて観ていて苦痛になる作品。
観る者に簡単には理解されたくないという作り手の意図が多々感じられる作品は古今東西多い。「2001年宇宙の旅」のようにあえて説明を排除した作品から、「8か2/1」のような私的な作品まで。
本作は後者の私的作品にあたる作品だと思う。ウェスは両親とも若くして失っており、彼の作品ではその喪失感が常に描かれてきたらしい。
自分の私的感情を他者に容易に理解されたくないという思いが込められているのか。しかしそうだとすると観客は本作をどう楽しめばいいのだろう。
ウェスらしい映像はふんだんに盛り込まれてはいるが、やはり映画自体は全く楽しめなかった。
初ウェスだったが、ちょっと作品の選択を間違えてしまったか。
上映期間の最後に観ることができた
「グランド・ブダペスト・ホテル」に魅せられて、今度の映画も観たが、いつものメンバーが、たくさん出てきた。私の好みは、やはりジェイク・ライアンか。難解というが、そうでもない。
舞台は1950年代で、新たなお芝居(実際には映画)の紹介仕立て。最初に、公演される芝居(映画)を紹介するテレビ番組がモノクロで流れるが、楽屋風景を含み何度でも戻ってくる。幕が上がると、スペインの荒地にセットを組んで撮影された映画がカラーで出てくる。
映画のストーリーは、全くありえない話ではないが、まずは虚構。それに対し、楽屋の話は、演出や俳優の実際の姿を伝える。ちょうど、「グランド・ブダペスト・ホテル」で、ボーイたちが客の真実を知っていたのと同じか。
この映画でしか、味わうことができなかったことが、二つある。いずれも、モノクロで出てきた楽屋の部分。
一つは、話の後半で、映画の主人公オーギー役のホールは、出演していた劇場のバルコニーに出てタバコを吸っている時、映画の中では、闘病の末、亡くなってしまう妻役の女優と遭遇する。彼女は、もし映画に出ていたら、言うはずだった脚本のセリフを述べた。大都市の裏町を思わせた、この場面には情感が満ちており、最もrealityがあった。
もう一つは、終盤に近く、やはり常連のエドワード・ノートンの扮する映画の劇作家コンラッド・アープが苦悩を訴えると、それを聞いていた俳優たちが、次々と「起きたいなら眠れ(日本語字幕」(You can’t wake up if you don’t fall asleep)と唱和したのだ。私は、この場面で一番心が震えたが「起きることができない眠り」が、対比されているのではないかと思った。大変、驚いたことには、コンラッド・アープは(劇中だが)この6ヶ月後、自動車事故で亡くなるのだ。
この二つのエピソードに気づいてから、映画の表面上の流れは、エイリアンとの出会いにあり、その中心の一つは、ジェイク・ライアンの扮するオードリーの長男、ウッドロウだが、もう一つの流れであるオーギーの妻の病死と、オーギーの3人の娘、トム・ハンクスの扮する義父との関わりの背景が見えてくる。一見、虚構に満ちている映画部分の背景に、realityを持つ楽屋風景がある。それ以外にも、幾つもの伏線が用意されていて、オードリーとスカーレット・ヨハンソンの扮する女優ミッジとの関わりは、その一つである。
ここだけ取り上げても、いかにウェス・アンダーソン監督が考えて脚本を書き、監督しているのかが判る。時間がある限り、多くの皆さんに、この数々の優れた道具立てを楽しんでほしい。
十全に楽しむなら予備知識が必須だがわからないことも面白い
狂気!
アステロイドシティという“裂け目”に墜落した隕石。その大きなクレーターが不気味な口を開け、終始不穏なイメージがまとわりつく。
アメリカの東部の都市と西部の砂漠、テレビと演劇、夢の舞台と舞台裏、大人と子ども、豊かな生活と核の恐怖、女優とシングルマザー、宇宙開発の科学とロマン、未知との遭遇と軍の隠蔽、原住民と白人などなど、それはもう“裂け目”のてんこ盛り。
複数のアクターの視点によってつくられるネットワークにおいて主体は切り離されている。まるで夢の中のよう。凝りに凝った映像と手法で、この夢のような裂け目の世界に誘い込むのは何故だろうと、不思議な気分に浸っていると頭をガツンと殴られた。
全シーンがカットされた妻役のマーゴットロビーとの対面のシーンだ。
それまでの風ひとつ吹かない荒野から一変、雪の舞うNYのバルコニーで、彼は亡くなった妻からのメッセージを受け取ることができた。
リアルと虚構が補完し合い、信じられないほど美しかった。
最後の裂け目は「眠りと目覚め」だった。それぞれの事物が主体を持たない虚構(夢)の中で、言葉という主体性がグッと立ち上がること。それが目覚めであり物語や芸術の本質だ。
あらゆる要素を精度高くまとめあげる手腕はまさに狂気じみた芸術だった。
実写にこだわったアンダーソン監督だからこそ醸し出せる要素が詰まった一作
単純に鮮やか、と言っちゃうとちょっと違うような、美しい空の青が印象的な本作。あえて遠近感や立体感が目立たないように、平面的かつ左右対称の画面構成を基調とした映像と独特の色使いは、まさにウェス・アンダーソン監督作品。
物語の少なくとも表面的な筋は不思議ではあっても決して難解なものではなく、アステロイド・シティに集う人々が宇宙人の到来によって右往左往する様を描いていきます。とはいえやはりアンダーソン監督作品の最大の魅力は、個々の個性的、かつ魅力的な登場人物同士が展開する、ちょっと奇妙な交流の描写にあると言っても過言ではありません(もちろん本作においても、冷戦期という時代背景に基づいた様々な要素が盛り込まれているなど、いくらでも深掘りする要素があるわけですが)。
ジェイソン・シュワルツマンとスカーレット・ヨハンソンをはじめとした俳優陣は、アンダーソン監督世界の住人として、これ以上ないほどの演技力と魅力を発揮しています。
これほど大掛かりかつ人工的な美術であれば、CGを全面的あるいは部分的に用いているのだろうと思いきや、監督はあくまでも実際のセットとフィルム撮影にこだわったとのこと。本作のテーマカラーとも言える、極めて印象的な空もまた、現実の描写だということに驚き(撮影時にカラーフィルターを付けるくらいのことはしただろうけど)。
監督のファンはもちろんのこと、ウェス・アンダーソン監督作品が初めての人でも、そのちょっと不思議な作風を楽しむには最適な作品です。
いやあ、わからんかったあ!!
面白いだけが映画じゃない。
今回のはまだ、普通に楽しめるのでは
前作は話題になった割には、内容についてあとで、沸き立った声聞かなかったが。
今回、たまたまなのか妙に空いてた。
広告の量のせいなのかなあ。
普通にストーリーもキャラも楽しめる。
場面も絵的に見て楽しいし。
入れ子構造とか、今までの映画でもあったパターンの繰り返しとか、
たんたんとした会話や、力の抜けた表情など、登場人物の関係性とか、
何度もこの監督の作品見てる人なら全く疑問もなく見れそう。
こだわりあることを何度も違う形で見せてきてるようだが、
これから先変化していくのかなあ。
トム・ハンクスがいつもと目の色が違うのが違和感あって、印象に残った。
どの俳優も、この監督作の中ではこの監督の手の中って感じになるのがすごい。
見た後、余韻となる、場面や、言葉がある。
絵、世界観が好き
地味に豪華
唯一無二の世界観構築のプロ!
そもそも難解だし、英語の台詞量が半端なく早口で多いので、日本語字幕の情報量だけでは不十分になってしまう。英語使いの方はぜひ字幕だけを追わず、原語の中身に集中してみた方がいい。楽しさが倍増する。
何はともあれ、このぶっ飛んだ題材・ストーリー・構成に、ユーモアをちょーど良いあんばいで乗っけて、めちゃくちゃオシャレにギリギリでダサくなく仕上げきってしまうウェス・アンダーソンは本当に天才。初見の際は徹夜明けで見たせいで途中寝てしまったため、再度見に行ったが、2回目、改めてその世界観構築のプロフェッショナルぶりに感銘を受けた。もう、理屈じゃなく「これ好き!」って気持ちにさせられてしまう。
上の方から「アレ」が登場するシーンは、映画史に残る名場面と言って良いのではないか。
音楽も最高。
難解なので、鑑賞後、ネットにたくさん上がってる解説動画を見がいがある作品。
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