キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩(うた)のレビュー・感想・評価
全3件を表示
キャロル・オブ・ザ・ベルの歌声と共に、ウクライナ・ポーランド・ユダヤの3つの家族が、戦争に翻弄されながら子供を守り必死に生きた時代のお話です。
ウクライナを舞台とした3つの家族の物語。
そのような予告の内容だったのと、登場する家族が
揃って前を向いた図柄のポスターが気になり鑑賞です。
お話は、第二次世界大戦時より少し前に
遡ったところから始まります。
ウクライナ(当時はポーランド領?)のとある街で暮らす
ユダヤ人家族の元に、2つの家族が下宿してきます。
ポーランド陣の家族とウクライナ人の家族。
ユダヤ人家族も含めて、どの家族にも娘がいました。
年齢が近いため割とすぐ仲よくなる娘たち。
クリスマスイブ。
ウクライナ家族の娘が、ポーランド家族の部屋に行き
クリスマスの夕食へと招待します。
その際に少女が歌ったのが
” キャロル・オブ・ザ・ベル ” でした。
ウクライナの民謡にイギリス人が歌詞を付けて
クリスマスの定番となっていた曲です。
当時のウクライナとポーランド。
領土を巡る問題から、仲が良くはありませんでしたが
ウクライナの歌を自由に歌うことができました。
そんな街にソ連軍が侵攻してきます。ウラー
” お前はウクライナ人か ”
” ロシア語を話せ!” と
他国人を侮蔑し、ロシア語を強要するソ連の兵士たち。
時が移り、ソ連軍は立ち去りました。…で
次にやってきたのはドイツ。
” お前はどこの国だ? ”
” 出生証明書を出せ!” と
他国人を見下し侮蔑するナチスドイツの兵隊たち。。
ポーランド人家族もユダヤの家族も
体制への反抗とみなされ、
またはユダヤ人だからとの理由で集められて
命を落としていきます。うーん…
ポーランド人家族もユダヤ人家族も
親は自分がタイホされる事を察して
娘をユダヤ人家族に託します。
ウクライナ人家族も
父親が民族活動に参加しており家におりません。
母親が娘4人を保護していく事になって…
と、まあ。
3家族の娘たちとウクライナ母との
戦争に翻弄されながら生き延びようと必死に
暮らしていく姿を描いたお話でした。
ロシアのウクライナ侵攻より前の年
に制作された作品のようですが
何ともタイムリーな内容の作品だなぁ と
歴史の重みを感じながら鑑賞しました。
ウクライナの少女が歌う
” キャロル・オブ・ザ・ベル ” の歌声が
耳に残って離れません。
◇あれこれ
侵略者のするコト
自分たちこそが優れた国家だと信じて疑わず
運略した相手を徹底的に蔑む侵略者たち。
ソ連もナチスドイツも、
力による支配を行う者のやることは一緒。
歴史から学ばないのは愚か者のやること。です。
洗濯
自分の服を脱ぎ、娘たちの服も脱がせて
ひたすら洗濯を繰り返す母の姿。
心の動揺を抑えようとするその行動から
哀しみの深さと大きさが伝わってきました。
無心になれるのかもしれません。
◇最後に
クリスマスに歌われるというタイトルの曲。
音楽配信のサブスクで聴いてみたのですが
とても綺麗な曲でした。
自分の国の歌をどの国でも自由に歌える世の中で
ありますように。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
【”ウクライナ魂。”第二次世界大戦時に旧ソ連、ナチスに占領されたウクライナで一組の夫婦が多大な犠牲を払いながらも行った崇高な行為を、美しいメインテーマで彩った哀しみと仄かな未来を感じさせる作品。】
ー ご存じの通り、ウクライナは第二次世界大戦を挟む6年間、ポーランド、ナチス、旧ソ連に占領されていた。
今作は、1939年のポーランド領スタニスワブフ(現、ウクライナのイバノフランコフスク)のユダヤ人一家の家に店子としてやって来たウクライナ人一家、ポーランド人一家が最初は違和感を感じつつ、徐々にウクライナ人の主婦でありピアノの先生でもあるソフィアが催した食事会を切っ掛けに親しい交流が始まる所から、物語は始まる。-
◆感想
・ウクライナ人夫婦、ミハイロとソフィアの娘を筆頭にユダヤ一家の娘、ポーランド一家の娘が奏でる”ウクライナ民謡”をベースにした、幸せが来るという”キャロル・オブ・ザ・ベル”の哀愁を帯びた美しき歌のアンサンブルが素晴しい。
・ユダヤ人夫婦は、ナチスに連れていかれ娘をソフィア夫婦に託し、ポーランド人夫婦も旧ソ連に連行される際に娘を託す。
そして、ソフィア夫婦は自らの二人の娘と共に更に二人の異国の娘を我が子のように匿うのである。命の危険や少ない食料の中ナカナカ出来る事ではない。
・ソフィアの下の娘はずっと家に居る事に飽きて、外に出ようとするが鼠に噛まれ、父が町医者に必死に依願するもクスリすら貰えず、絶命するシーン。
ー あんなに小さいのに、余りに可哀想で、もう涙腺が・・。ー
・ナチスが一々点検に来ると、ソフィアたちはユダヤの娘ティナとポーランドの娘、テレサを大きな時計の裏に作ってあった金庫に入れ匿う。
ー アンネの日記を思い出す、ハラハラシーンの連続である。-
■そして、ミハイロはある日ナチスに政治犯として銃殺されてしまう。
その風景を見たソフィアは、家に戻り涙を流しつつ、自分や娘達の服を洗濯板で洗うのである。何かしていないと、オカシクなりそうな気持が強く伝わって来る。再び、涙腺が・・。
・ナチスが撤退後、旧ソ連が再びやって来る。ナチス夫婦はどこかに連行されたようで、ソフィアが歌を教えていた少年が、家に戻って来る。その時、ソフィアはその少年も匿うのである。
ー 人間としての器の大きさ、心の温かさ、寛容さに深く頭を垂れる。抗議する娘達にソフィアが言った言葉。”この子に罪はないんだよ。”-
■だが、ソフィアたちも旧ソ連の収容所に連行されてしまう。ドイツの少年を情け容赦なく撃ち殺す旧ソ連兵。
そして、娘達とソフィアは離れ離れに。
娘達が、旧ソ連の高官たちの前で合唱を披露するシーンで、ソフィアの娘が毅然として手を上げ”キャロル・オブ・ザ・ベル”を歌う。ティナとテレサも声を出して歌う。だが、ソフィアの娘ヤロスラワは何処かに連れられて行ってしまう。
そして、荒れ果てた強制収容所内で、一人ベッドの下のフレームをピアノの鍵盤に見立て、音無きピアノを弾くソフィアの姿が切なすぎるのである。
<今作は、観ていて非常に悲しいシーンが多いが、中盤から挟み込まれる1970年代のNYの空港でのシーンに、仄かな未来を感じるのである。
そしてラスト、旧ソ連に粛清されたと思っていたヤロスラワが、ティナとテレサと再会するシーンには、もう・・。
今更ながら、戦争は哀しみと憎しみしか生まない事を再認識した作品でもある。>
■今作は、ウクライナ出身の女性監督、オレシアさんが、現在の状況を予言したかのような作品でもある。
全3件を表示