「EUが「ノーベル平和賞」を受賞したことを忘れちゃいけない。国境を無くそうとした人類の理念・反省、叡智と偉業を後退させちゃいけないんだ。」キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩(うた) きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
EUが「ノーベル平和賞」を受賞したことを忘れちゃいけない。国境を無くそうとした人類の理念・反省、叡智と偉業を後退させちゃいけないんだ。
戦争の嵐に押し倒されそうになりながら、崇高な母性の愛、父の愛、夫婦の愛が子供たちを守る!
ウクライナではいまも戦争が続き、
パレスチナでは瓦礫のガザで数千人が亡くなっています。
そのさなかでの映画鑑賞でした。
舞台はそのウクライナ。
ヨーロッパとソ連の中間にあるあの地域は、有史以来の紛争地帯。
交通の要衝であると同時に、あそこは軍隊の行き来する街道エリアだった。
政治と国民統制の“関所”として、この土地は為政者たちは抑えておきたい必要があったのだ。
ユダヤ人と、ウクライナ人と、ポーランド人と。そして終盤にはドイツ人の一家と。
この「4つの家族」が
戦況によっては今度は東から、そして今度は西からと、幾度も繰り返して翻弄され続ける。
情勢が変われば昨日の味方は今日の敵なのだ。
どちら側についても、そして
どちら側につかなかったとしても、
住民は「ガス室」や「パルチザン狩りの銃殺」や「シベリヤの思想矯正施設」や「戦犯処刑場」に送られて、
このアパートの住民たちはそうして行き来する国土収奪と、戦争の前線にヤラれ続けた。
寄せ波と 引き波に、親と子が晒され続けたのだ。
悲運の地・・
それが東欧地域なのだ。
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観終わって思ったことは、
いきのこっていくためには
単一民族や単一国籍だけの純粋培養ではダメなのだなぁという事。
そこにはたと気がついた。
特殊な状況下での実話ドラマではあったが
《実は、彼らは混ざっていたから、命が繋がれた》のだ。
ドイツ人だけ、ユダヤ人だけ、ウクライナ人だけ、ロシア人だけ、
そして想像してほしい
パレスチナ人だけ、
中国人だけ、
日本人だけでは、私たちは、この世界では生きてはいかれないのだよ と教えてもらえた。
もしもドイツ人だけ、ユダヤ人だけ、ウクライナ人だけ、ロシア人だけがあのアパートの住人だったら?
アパートは、結局誰も生き残ってはいない無人の廃墟になっていたのだ。
混ざっていて、一緒にご飯を食べ、一緒に歌って友人関係になっていたから、
父母の祈りは3人の娘の生還に繋がったのだ。
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ウクライナ民話の「てぶくろ」も、僕は懐かしく思い出しました。
凍える冬に森に落ちていた片方の手袋に、ネズミから ウサギから キツネから オオカミから クマまでが、
狭いけれど、みんなでお互いにギューギューに詰め合って、無理かと思われた“シェルター”での越冬を、動物たちが実現するお話。
(福音館書店刊 絵本:ウクライナ民話「てぶくろ」 内田莉莎子訳)
清らかなツバメのさえずり。
鐘の歌。
「みんなが幸せにお金持ちになれますように♪」と願うクリスマスのキャロルが、耳に残ります。
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上映前に東座の合木こずえ社長が解説をしてくれました
・本作品はウクライナ戦争が始まる前の撮影で、監督のお祖母さんの実体験がストーリーの原作。
・今回の開戦で監督は、「まさかまたこんなことになるとは」と絶句されたと。
・この映画の上映はもう不可能だと思われたのに、戦火のキーウでは映画館は満員だということ。
・しかし、ウクライナの土地ばかりかロシア政府はこの民謡=「ツバメのキャロル」をもロシア発祥だとあさましくも主張していること、
― を解説してくれました。
戦時には、子供の拉致と洗脳・再教育がどこの国でも起こる。
文化の収奪と改変が企てられる。
自国だけが正義であり、自国の戦いだけが聖戦なのだと教え込まれるのですよね。
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先日 沖縄県の知事さんが
「普天間の基地も辺野古の基地も、もういらない」とアピールしたら、日本政府は再び知事さんを訴えて、沖縄県を被告として裁判にかけましたね。
で、報道以来、SNSの世界では罵詈雑言の嵐です―
そんなに日本が嫌いなら沖縄は日本から出ていけ
嫌日のお前たちは日本人ではない
お前たちは中国人か
元々帰属していた中国のものになれ
侵略されてしまえ
と。
ツバメには、国境など存在しません。
ツバメは東欧からアフリカを往復し、
日本のツバメも日本から大陸へと渡ります。
それなのに、清らかなヤロスラワちゃんの歌声を押し潰してしまいそうな人間たちの不明と強欲が悲しい。
お父さんが震えながら酒場で歌った「リリー・マルレーン」、
そして、世界の平和のために、そして日本の我々のためにも歌ってくれたヤロスラワの汚れなき祈りのキャロルが、
どうかどうか大人たちを恥じ入らせて、その祈りが神さまに聞かれますように。
無垢な彼女の歌声の前に、ごめんなさいの涙が僕は止まりませんでした。
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フランクルの「夜と霧」、もちろん持っています。
コメントありがとうございました。
極限状態でも、弱いけれども、人が人であり続けること。僕もそういう人間になりたい。
NOBUさんお便りありがとうございました。
今晩は
情報提供有難うございます。 確認しました。
イスラエルとガザ地区の終わりなき抗争に、灯の様なニュースでしたね。
ところで、きりんさんは心理学者ヴィクトール・E・フランシスの「夜と霧」は読まれたことはありますか?
良書しか発行しないみすず書房でしか読めないのですが、ナチスの強制収容所に入れられた著作者が抑制したトーンで当時、何が行われていた事を淡々と綴った本です。私は2年に一回くらい読み返していますよ。では。
きりんさん、コメントありがとうございます。
お薦めの記事、見てきました。
イスラエル出身のユダヤ人しかも両親が収容所での生活
体験者となれば、どこかに向かって拳を振り降ろしたく
なっても無理のない話と思うのです。
けれどもその方は、ユダヤとパレスチナ双方が共に生きて
行ける道を探し続けている。本当に頭が下がります。
素晴らしい親子の記事を見つけました。
以下、語句検索でヒットさせてください。
ナチス・ドイツによるユダヤ人大量虐殺ホロコースト アウシュビッツ生存者の子がパレスチナのために声をあげるわけ | NHK
今晩は。いつもありがとうございます。
仰る通り、今作はウクライナが現況下になる前から虐げられていた存在であったことを知った映画でした。
ウクライナのお母さんソフィアは自らの子供だけでなくドイツ人、ポーランド人の家族の子供を匿い続ける。(凄い人間性の強さだと思います。)そして、ソフィアの娘三人は旧ソ連の高官たちの前で合唱する時に、決められた曲でなく美しき”キャロル・オブ・ザ・ベル”を歌い上げるシーンは響きました。涙が出ました。(私は滅多に涙は流しません。)
イスラエル、ガザ地区の紛争、ウクライナ紛争、沖縄基地問題。人間は古代から戦を辞めません。それが本性なのでしょうか。
個人的には、この素晴らしい反戦映画が極少数の劇場でしか上映されない事が寂しいですね。では。返信不要ですよ。
心に残るレビューでした。
この作品もいろいろな人に見て欲しい。たくさんの人に見て欲しい。
ただ、そんなひどい惨状の中でも人として立派な人はちゃんといる、ということはしっかり伝わりました。
この世の中から戦争がなくなりますように。世界が平和になりますように。
ツバメの渡り
【 ツバメ観察全国ネットワーク 渡りバードリサーチ ツバメ図鑑 】で語句検索。
ヨーロッパ、そしてウクライナのツバメが、西アフリカとの間で往復している経路図が載っています。