ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語のレビュー・感想・評価
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観るたびに味わいの増すウェス&ダールのとびきりの表現世界
ウェス・アンダーソンと言えば、初期作「天才マックスの世界」にすらダールの語り口の影響が濃く及んでいることで知られる。今回の奇想天外な40分足らずの新作中編を観て改めて驚いたのは、ダールの原作内の言葉がいつになく忠実にいかされていること。それに息つく暇なく早口で間断なく語りが続くこと。すなわちウェスにとってダール作品のちょうどいい体感速度とは、まさにこのくらいなのだろう。正直言うと僕は字幕版を観て全然理解が追いつかず、もういちど吹替で見てやっと詳細を理解できた。だがそのおかげで「グランド・ブダベスト・ホテル」的な多重構造、「ダージリン急行」を思い起こさせるインド風味、ウェス作品特有の演劇舞台装置的な美術と動線、それに作品全体をそこはかとなく包む哀愁を味わうことができたように思う。何度も繰り返し味わえる、動く絵本。ダールの自宅敷地内にある名高き執筆小屋での執筆の様子が再現されているのも楽しい。
コンパクトでさっくり見れる
これは映画か
ギャンブル好き足長おじさん?
ロアルドダールの、ファンタジーの中で真を突くピリッとしたところが好きだ。
チョレート工場のチャーリー同様に、お金は手にしてしまうと空虚に陥る資本主義と人間の精神の重ならないところを描く。
淡々と作文を読み上げる登場人物達の語り口が続くも、気になり見てしまう。
最後にドアベルを鳴らす警官の発言「君はお金に困ったことがないから、大金を運良く手にできたとしても平気でばら撒けるんだ。他にもっと困っている福祉施設養護施設に寄付するなど考えられる方法は沢山あるだろう。」に深くうなづく。
何故だろう、お金は富裕層の間では紙切れとして漂うのに一向に、お金に困る層には降って来ない。
でもそのお金が生活水準を守る全てとわかっているから富裕層はお金を手放す事には不安があり、稼ぐために生きていないから、時間を持て余し生き甲斐不足で、遊び半分にお金を増やしたがる。
そっち側として産まれたヘンリーシュガーは、たまたま見つけた、目を塞いでも視界を読み取る能力を身につけたインド人の記載文章をもとに、3年3ヶ月かけて修行しトランプの裏を読める力を身につけた。
やっとカジノにブラックジャック稼ぎをしに出向き1時間で300ポンドを手にするが、ヨガ修行で本質を見る目が備わってしまったからかお金に価値を感じない。
そしてバルコニーからお金をばら撒き、冒頭の、警察からの注意に繋がる。
その後のシュガーは拠点をイギリスからスイスに移して、税金対策しながら世界のカジノを転々とし大金を稼ぎ続ける。そのお金を、彼の家に代々税理士として仕える男が世界中の福祉施設を興したり寄付したり、富裕層から貧困層への資金循環に貢献した。
ヘンリーシュガーのスパイさながらの活躍は世に伏せられているが、ヘンリーは心臓発作で亡くなったので、隠す必要がなくなり、本に書き起こされるようだ。
話全体がフィクションだろうに、どこまで本当かがわからなくなるような、フィクション。
先にインド人が習得した能力を、イギリス人が二番煎じした話。
短編映画の楽しみ方は難しい!?
ウェス・アンダーソン監督作品ということと、第96回アカデミー賞短編実写映画賞受賞とのことで鑑賞。
うーん、全体を通して期待通りとは言えないかな。
独特な映像美やテンポ感はさすがはウェス・アンダーソン監督といったところだが、面白味やましてや感動感銘は正直味わえなかった。
自分が短編映画に全く慣れていないため観方のポイントがわかっていないこともあるとは思うが、それにしてもあまりに奇抜過ぎなのではないかと思ってしまう。
観終えたあと、過去のアカデミー短編映画賞受賞作品を調べてみたら、1作品も観ていなかったどころか、恥ずかしながら知りもしなかった。これではあまりに勉強不足、本作を楽しめるわけもないなといったところだ。
透視
ウェス・アンダーソンっぽいが、らしくない。
ヴェス・アンダーソンの世界
「第96回アカデミー短編実写映画賞」受賞作
絵本か紙芝居のようなやさしさ、あたたかみを感じました。
また、舞台転換を模した演出が多くあり、それが非常によくできていて面白く見ることができました。
ところどころクスッと笑えるところがあったり、笑っていいのかどうなのかビミョーな場面もあったり、そこはいつも通りで、とても楽しかったです。
ウェス・アンダーソンの独特な世界観にはファンも多いですが、オスカー向きかと言えばそうでもない方なので、今回の受賞は本当に良かったです。
Netflixにご加入の方は、短い作品ですので、ぜひ御覧ください。
ふしぎでキュートな絵本のよう
巧みな舞台セットの転換を延々と観せてくれる、舞台やアート好きにはた...
不思議な世界観をテンポよくさくっと見るにいい映画
不思議な映画というのが初めの感想です
紙芝居ちっくな定点映像とその中の人たちが見ているこちら側にお伽話を語るような構成の映画
どこを切り取っても絵になるように作られていて見ていて目が楽しい映画でした
物語も不思議で実話だよという風に語りかけられるし、
能力習得のプロセスも具体的に書かれているのでワンチャンありそうと思ってしまえるくらいの能力。ないんですけど
思い返しても不思議だな〜〜〜という感想が似合う映画でした
最高に好み
不確実で複雑な世の中で再生しようとするとき、人類は大昔から物語を必要としてきた。
私も子どもの頃から物語が大好きだ。やさしい、かわいいだけじゃダメ。さみしい、むなしい、こわいが散りばめられたヘンテコな物語が好き。
虚無に包まれた人間がふとしたきっかけで自分と向き合い、新しい境地へ変革するダールのヘンテコな物語。
まずレイフが作家として語り始め、ベネディクトが透視を手にする物語を、更にデヴが医師としての記録を語るという見事な入れ子式手法。登場人物たちは鑑賞者に対してカメラ目線で早口に語る。
語り手が「あくまでこれは物語です」というスタンスを固持してくれることで、物語と鑑賞者のあいだに不思議な距離感が生まれる。
だからこそ、物語は事実ではないが、他者の言葉を通してうっすらと、人生の意味が事実のように立ち上るもの。
聞き手があっての物語。鑑賞者に作者と同等の重要性をもたせる手法と、別の時空の隙間を感じさせるようなしなやかさが何とも言えず心地良かった。
実験映画界の最高額製作費記録?
分からん
小説や絵本に限りなく近い映画
これまでのウェスアンダーソン映画の美術や演技にもどこか絵本のような可愛らしさがあったけれど、今回はなんといっても台詞がほぼ小説の読み聞かせのようになっているのが印象的。
映像よりも台詞で語る。
それぞれのキャラクターが小説の一人称(ないし作者)になっている。
面白いと言えば面白いけれど、あまりの台詞量の多さとその淡白さに40分以上続けば疲労感の方が勝る結果になっていたように思う。
ある意味40分の短編だからこその試み。
(20分の別の短編の「白鳥」も鑑賞。同様の試み。というより短編集の一つのような感じ。個人的には「白鳥」の方が好み)
ヘンリーシュガーの内容としては案外よくある話で、男の実存主義じみた話。
市民ケーンの時代から続くテーマ。
透視を身につける過程はわくわくしていたのに、いざ身につけてしまうと虚無感しかない。じゃあそんな時はどうするの?と。
上手く行った先の、自分の思うがままに生きた先の、虚無感。
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