ミッシングのレビュー・感想・評価
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意地が悪い、ガラス越し
また映画の評価とは関係ないことを書くかもしれませんが、スマホが勝手に写真をまとめてアルバムみたいにして流してくれる機能があるじゃないですか。自分は息子が生まれて一眼に凝りだして、低予算ながら一眼ならではのきれいな写真を残せていると自負していいて、たまに電車とかでそのスマホがまとめてくれたアルバムを眺めてニヤニヤしているのですが、この映画の冒頭に流れるホームビデオがそれに重なって。この映画のあらすじはやっぱ知ってるから、ああ、この可愛い娘さんが、って思うとうわーってなりました、頭から。可愛い子供の記録は、子供がいてくれるからこそニヤニヤできるんですよね。いなければもうそれは…別れた恋人の記録なんかより、もうどう扱ってどう見ればいいのかわからない記録になりますよね…
この映画は、ミステリーでもサスペンスでもなく、なにかメッセージがあるわけでも、感情を激しく揺り動かすドラマでもない(親として少し泣きましたが)ように思えました。「意地悪な神様が意地の悪いタイミングで最悪な物事を起こす」、そんなあるあるの詰め合わせです。つまりは製作してる人たちはかなり意地悪なんじゃないかと思います笑セリフにも言っちゃいけないことを言っちゃいけないタイミングでの一言が多かったですね。
あとガラス越しになにか起こっていることが印象的でした。聞こえない罵倒や叫び、物理的な悪意、色の重なり…音を遮ったり、割れたり、光を通したり…
石原さとみさんがこれぐらいできるのは想定内でした。青木崇高さんの演技が個人的には良かったです。
港町の女性って暴力的で怖いですよね。(経験より)
最後にまたこの映画には関係ない、ただの蛇足ですが、登場人物の行動にいちいち「こんな事するなんて、言うなんて、とても考えられない。感情移入できない。」って映画の感想を見かけますが、そういう視点でしか映画を見れない人がいることは割と驚きです。
精神の崩壊へ向かう様と再生
資質
何かできることはありますか。
『特段歪んだ思想や強い憎しみを抱いているわけでもないごく普通の人間でも、自ら考えることを停止し、上から言われるがまま命令に従えば、巨大な悪を成し遂げてしまうことがある。』
これは、悪の凡庸さ(陳腐さ)というキーワードで表現されるアイヒマン(第二次世界大戦中、ユダヤ人大量殺戮において重要な役割を果たした男…1960年、潜伏先のアルゼンチンでモサドにより、拉致、逮捕され絞首刑となった)についての叙述である。
悪意しか感じられない書き込みを行っている人たちも、〝上からの命令〟という部分が〝炎上圧力〟とか〝悪ノリ〟に置き換わるだけで、自らの思考停止に気付かないまま(或いは気付かない振りをしたまま)巨悪に加担していることでは、変わらない。
面白おかしく伝えるのが使命だと勘違いしたメディア関係者も、極めて凡庸な人たちなのに、巨悪を成してしまうということでは同じ。
愛する人や大切な人を理不尽な事故や事件で失うことの傷みは、どれだけ深いのか。
当事者が負う罪悪感や取り返しのつかないことへの後悔や絶望感。
当事者ではないものができることは、少しでもその傷みを理解しようと努めること、無力なのは分かっていても、決して傷つける側の人間にはならないでいること。
そういう思いがあれば、たった一言であってもどれだけ救いとなるのか。とても心に沁みました。
自分にできることは何かありませんか?
お気持ちはわかりますが…
行方不明になった6歳の娘を捜すべく奔走する母親と、世間の関心が薄れる中彼女の取材をする地元TV局の記者の話。
冒頭既に娘は失踪後でビラを配るところから始まるので、娘は何歳?いつ?どんな状況で?とイマイチ掴みにくいまま観なければならず少々入って来難い。
そんな状況だから、娘が失踪したという大事なのはわかるけれど、主人公の人の意見は聞かないけど自分の意見は絶対だったり、癇癪だったりがあまり受け入れられず…まあそこは夫が突っ込んでましたが。
記者の葛藤は中盤ぐらいまでとても良かったけれど、終盤はあまり出番が無くてちょっと残念。なんならこっちの方が個人的には好みだったし。
キツくやり切れない題材でとても良かったけれど、特にメインの姉弟はこれってもとの性格が…と強く感じてしまった。
脇を固める俳優達が光っていた
ないものねだり
心を失くしている現代社会へのメッセージ
幼い娘の失踪事件を軸にして現代社会に生きる人々の姿を鋭く描いた社会派ドラマ。
親の在り方やテレビ報道の問題点など、心を失くしている現代社会への強いメッセージを感じました。
主演の石原さとみの狂気に満ちた迫真の演技が実に素晴らしく、間違いなく彼女の代表作になることでしょう。
2024-84
難しいですね、母親の気持ちが分かるとも気安く言えないし、誇張しすぎ...
そもそも偏見を持たないということは不可能なのかもしれない
日々生きていて触れている出来事に対して偏見を持たないようにする。と言われているが、この作品を見てそもそも偏見を持たないことは不可能なのでは、さまざまな偏見によって社会は形成されているのではと感じさせられた。
実際、主人公の見え方は作品を通じてどんどんと変化していった。
失踪する娘を探す両親の時間の経過とともに起きる変化をとても繊細に描かれており、作品のクオリティの高さを強く感じた。
シリアスなテーマで辛い時間が多いものの、そんな中でも映像作品ならではのユーモアが含まれていることも印象的だった。
どんなにどんなに辛くても、笑ってしまうことがある。
そんなポジティブなメッセージも受け取れた。
石原さとみの演技は疑いもなく素晴らしく、この作詞がこれから石原さとみの快演で話題になっていくとこを期待し、多くの人がこの作品に触れて欲しいと思った。
最後に待ち受けるのは希望か、それとも...
※結末に言及するため、未視聴の方はブラウザバック推奨です。
行方不明になった娘を探す夫婦、その周りで渦巻く社会や報道の形を上手く切り取って収めた映画だったと思う。
物語の主軸になるのは前述の夫婦と妻の弟、そして報道局員として働く1人の社会人だが、それぞれの演技がとても良かった。特に目を見張るのは主演の石原さとみとその弟役の役者さんで、弟役の方は元々存じ上げなかったがハマり役だったと思う。イタズラ電話で警察まで駆けつけて真実を知った時の石原さとみの演技は今後見ることができるだろうか、人間が壊れる瞬間をリアルに演じていた。また、弟も罪悪感と保身の間で揺れる心情も痛く伝わってくる演技だった。
さて、物語の前半は特に社会風刺が顕著だったと思う。SNSでの誹謗中傷はもはや言うまでもないが、それの引き金になっている報道の在り方に疑問を投げかけていたと思う。中村倫也演じる報道局員は事実をありのまま伝えるのが報道であると信じる一方で、その裏では非難の的になっている人たちがいること、そしてその人のために都合の悪い真実を隠すのは、「事実をありのまま伝える」報道の在り方と反してしまう。その相反する二つを内包した報道はどうあるべきか、結論こそ出ないものの疑問を呈するには十分な描写だった。
また性差についても風刺が込められているのかなと思った。妻は旦那や報道局員に対し怒ったと思ったら、すぐに泣きながら謝って来るような感情的な行動が多くみられる。一方で夫は妻と同じ気持ちを抱えながらも淡々とやれることをやって、泣く時には妻のいないところでこっそり泣くなど、強がって常に冷静でいようとする姿が見えた。特に喫煙所で子供連れの家族をみて1人泣くシーンは深く刺さった。正直この性差の見せ方は特定の方々には不快に感じられそうだが、個人的には筋書きの中にうまく溶け込ませていて良かったと思う。
(新社会人の報道局員の女性が怒られて泣きながら中村倫也の後継者になると言っていた割に、キー局へ転職する先輩を尊敬の眼差しで見ていたのも、この表現がしたかったのかなと思う。)
物語の終わり方については不満がある方も多いと思うし、私も最初は腑に落ちない点が多かったが、よく考えてみれば映画の宣伝文句にもあるようにこれは「希望を探す」物語なのだ。きっと物語の中で、今も娘は見つかっていないだろう。ただ弟との和睦や行方不明になるも見つかった別の少女の家族からの支援、それを受けて2年経った後もなお見つかると信じてひたすら走る夫婦の姿、きっと彼女たちは絶望の中に一縷の希望を見つけることが出来たのだろう。横断歩道で少女が振り返り微笑み、それを見た石原さとみが娘がよくやっていた唇を鳴らす動作をする、これがきっと彼女にとって明日への希望を見出した瞬間なのだろう。
簡単なカタルシスある希望をあたえてくれない
それでも生きていかなければならない
出演者全員素晴らしかったと思いますが、印象に強く残ったのは石原さとみさんの弟役で出ていた森優作さん。とても難しい役どころだったと思いますが好演でした。
登場人物全員にドラマがあり、心の内や葛藤が描かれています。なので自分自身はどこに焦点を合わせたら良いのか少し分からなくなってしまいました。
虎舞竜のくだりは反射的に少し笑ってしまった…すみません…
台詞にもありましたがメディアは本当何なんでしょうね…真実、それが面白い。誰かにとってはそうなんでしょう。SNSとの関わり方や捉え方など、改めて気づかされることが多かったです。
吉田監督は柔らかい光と共に希望を見出す演出がよくありますね!救いようのない痛みや闇も描くけど、今回もとてもきれいでした。
こんな気持ちになるだろうとは思ってたけど
吉田恵輔作品でこの予告なら見たら重たい嫌な気持ちになる事はわかってだけど、不思議なものでそれでも見てしまうし、案の定やられた…
そういった意味では全く期待を裏切らないすごい作品だなとも思うが、人にはなかなか薦めにくい。
現実の行方不明事件でもSNSで好き勝手言われてるわけで、そのあたりの気持ち悪さもなんとも…
「石原さとみ」
今まで何か出演作品見たっけなぁって思うとシンゴジラくらいしかなく、CMくらいの印象だったけど、本作の演技はエグかった。
見てて「あぁ…人が壊れてしまった…」と思った。見てらんない…
「ロングインタビュー中の…」
中盤あたり?の夫婦宅でのロングインタビュー中のセリフの一節…
…いや、自分も頭をよぎったよ。
でもそれを言うなよと思いつつ、こんな場面で同じ事を思った自分もなんと言うか同罪というか…
吉田恵輔監督なんて人が悪いんだ!!
いわゆる見せ場みたいな盛り上がりは無い感じだけど、見てられないような、そんなシーン本作においてはそれが見せ場だろうか?はいくつもあった。
2時間くらいでそんなに長くないけど、つまらないと言う意味ではなく、異様に長く感じた…
どっと疲れたと言うか、現実とあまりにも地続き感ある感じもやたらと突き刺さってくる作品でした。
さとみギガ盛り
最早「ホラー味」
公開初日午前回、109シネマズ木場の客入りはそれほど多くありません。吉田恵輔監督作品でこの温度感かと、やや残念さも感じつつゆったりエグゼクティブシート(会員はアップデート料金なし)で鑑賞です。
公開前、劇場で数回目にした本作のトレーラー。ご自身もご出産され子育て中の石原さとみさんにもこういう役を請け負われ、そして感情ほとばしる演技のご様子に、本編を観る前から「凄み」を感じておりました。ただ、ワーナーさんのトレーラーはアオる傾向も多いので、あまりイメージを先行させず出来るだけフラットに向き合うことに。ところが、本編を鑑賞し終わり、終始にわたって予想を軽々と超えてくるものがあります。いやぁ、、今回の石原さん、ヤバいっす。
相も変わらず吉田監督の脚本は意地が悪くて最高です。人の言動の迂闊さと悪循環、そして寒気を覚えるほどの悪意は救いようがありません。特に本作によって槍玉に挙げられることとなるTV(報道)というメディアについて、敢えてキー局ではなく地方局にしているところがまた如何にも「ありそう」で、且つ品のなさを感じます。そして、人の興味と悪意・善意のバランスの描き方が絶妙で、観ていてどんどんとしんどくなる展開が続いていたこともあり、終盤の反動に(被害者である)森下夫妻それぞれの気持ちが想像されて涙腺が緩みます。
まだ時期は早いですが、石原さとみさんは必ず賞レースに絡んでくると思われるだけの熱演です。お若いころから元々ダイナミックな演技をされるタイプでしたが、今回くらい振り切れると本気で「怖っ」という瞬間が数回あり、最早「ホラー味」すら感じます。そして、その相方としての立場でバランスを取る夫役の青木崇高さんがまたお上手。観ているこちらも青木さんに救われて観終えれたと錯覚させてくれるほど、取り繕うのとは異なる真の優しさを感じます。さらに今作最高の「あかんやつ」で、後半に改心しようとするも最後まで「あなた根本的にダメですわ」と溜息しか出ないキャラ、砂田を演じる中村倫也さんがあってこそ成立するキーマンを見事に演じ切っています。元々「煮え切らない」とか「不器用」役がお上手な方でしたが、売れてしばらく「イケメン」役が増えてましたからね。こういう中村倫也、おかえりなさいと思いました。
正直、他人に勧めるのには注意が必要な作品で、相当にネガティブに心揺さぶられ、メンタルにきますのでご覧になるのに気構えが必要です。とは言え、どこをとっても見応えしかない作品で、且つ石原さとみさんのキャリアとしても重要な一作になると思います。「無理せず」と付け加えつつ、ご興味があれば是非に。
石原さとみの覚悟
一昔前のキラキラの石原さとみ好きが見たら苦しいほどに、グチャグチャな演技をしていて、覚悟を持って、これから女優としてどう生きたいのかを見せつけている感じがして、すごかったです。中村倫也ほか、いろんな苦悩が伝わってきて、皆素敵な演技でした。
子供がいなくなるって本当に想像を絶する状況だと思います。気持ちがわかるなんて口が裂けても言えない。
男性だから女性だからとか言うわけではないですが、感情剥き出しでとにかくなんでもしたくなる妻と、同じ感じになってはダメだと冷静にやろうとする夫。妻から見ると夫は同じ深刻さで考えてないんじゃないかと不安、不満になるという構造は、よくある光景だなと感じます。どっちも悪くないんだけどね。その分、最後の夫の男泣きはよかったですね。
そしてテレビってメディアってなんなんだろう。傷つけるだけの他人とはなんなんだろう。そんなのもヒシヒシと苦しいほどに伝わってきて、シンプルながら見てて苦しく、いい映画でした。
最後どう終わるんだろうと思いましたが、この終わり方でいいんだろうなと思います。
急激な変化は受け入れがたく…
リアリティのある物語、感情を揺さぶられる演技、ともに素晴らしかった
6歳の一人娘の行方が突如分からなくなった両親を、石原さとみと青木崇高が演じた不条理ドラマでした。常識的に考えれば娘がいなくなった両親を励まし、支えるのが人情と思いきや、失踪当時石原さとみ演じる母親の森下沙織里が、娘を弟の圭吾に預け、友人とロックバンドのコンサートに行っていたことを捉えて、ネットの書き込みは沙織里をバッシング。また娘を預かっていながら、自宅まで送り届けなかった圭吾は、不注意を責められるのは致し方ないとして、むしろ犯人ではないかと疑われる。そのうちネットの書き込みに留まらず、自宅に石が投げつけられたり、警察を装い「娘さんが見つかりました」という悪質ないたずら電話まで掛かって来る始末。
勿論本作は創作ではありますが、匿名性をいいことに被害者を平気で傷つけるネットの悪意ある書き込みは、日常茶飯事に現実社会で見掛けるもので、運が悪ければ誰でも森下夫妻の如き憂き目を見かねない世の中の嫌な面を、まざまざと見せつけた作品でした。
特筆すべきは母親役の石原さとみの狂気の如き熱演でした。予告編の段階から非常に迫力のある演技だと思っていましたが、本編を観ると、娘を失った母親としての焦燥感や、ネットの悪質な書き込みを読んで苛立つ表情、そして悲しみや怒りの表情だけでなく、憑りつかれたような所作に至るまで、実に素晴らしい演技で、本当に期待以上でした。彼女の出演作は、石原さとみとしてのデビュー作「わたしのグランパ」、「シン・ゴジラ」、「忍びの国」くらいしか観ていないのですが、「わたしのグランパ」で観た時の若き才能に覚えた衝撃を再び思い出した気がしました。
また、父親役の青木崇高も、「犯罪都市 NO WAY OUT」の時の殺し屋役とは打って変わって、暴力に訴えない立派な夫を演じていて、痺れました。娘の失踪に半ば錯乱する妻をなだめ、職場や地元の協力者たちに頭を下げる父親役を演じたのが、一見極道にも思え、迫力ある青木だからこそ、より一層カッコよさを感じることが出来ました。
あと、幼女失踪事件を追うテレビ局記者の砂田を演じた中村倫也も、視聴率優先の局の姿勢と、娘を失った夫婦を助けたいという本心に揺れる葛藤を、実に見事に演じていました。
そんな訳で、リアリティ満点のストーリーにも心揺さぶられましたし、石原さとみをはじめとする俳優陣の絶妙の演技も非常に印象的だった本作の評価は★4.5とします。
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