ミッシングのレビュー・感想・評価
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石原さとみさんの悲壮感とリアリティ
石原さとみさんのことはほとんど知らず、化粧品のCMという印象しかなかったが、この映画でその印象が一変した。
悲壮感の演技がすごい。
すごいのだけれど、すっぴんであっても女性的魅力がその上をいくから違う感情が入ってきてしまう。
だから、適役ではないかもしれないと思いつつも、かたい社会派映画を注目させるために石原さとみさんを主役にするのはすごい抜擢だと思った。
実際に私自身、石原さとみさんが主演でなければ観ていないかもしれない。
また、題材もとても良いと思う。
池袋の交通事故が脳裏をよぎります。
ハッピーエンドではないところが心にひっかかり良かったです。
ストーリー以外に引き込まれた
石原さとみさんを始め皆さんの熱演に圧倒されっぱなしでした。今まで石原さとみさんの出演作品は何度か観ていますが、こんなにカッコ悪い役は初めてですね。
失踪した娘をなりふり構わず探すお母さん、それを支える冷静な夫に青木崇高さん、報道の力で二人の役に立ちたいと願うもうまく立ち回れない記者の中村倫也さん。そして今回、石原さとみさんの弟役の森優作さんがすごく印象に残りました。ほぼ初見ですが良い俳優さんです。
それにしても子供を探す夫婦の敵は、事故?事件?の要因だけじゃないんですね。誹謗中傷とかイタズラ電話やデマの愉快犯的な人達、実際にそういう事あるんだろうな。さらにマスコミの意義とは?偏向報道とかネットの悪とか、現代の闇みたいなことがぐちゃぐちゃにで考えさせられてしまう。
でもラストの何分かで、この家族はきっともう大丈夫って思える。闇に負けないでほしい。
容赦なく抉ってくる
期待度○鑑賞後の満足度◎ 吉田監督の視点はは『空白』よりも更に成熟し客観性(或いは分析性)に富んで来ていると思う。幾らでも感傷過多に出来る題材を抑制の効かせつつ感情の通った佳作に仕上げている。
①『Missing』という題には“(娘の)失踪”という意味と”「心」を失くす”という意味を掛けているのだろう。
しかし、一方“miss”という動詞には「何かを失くしてしまったことや、ある人に会えなくなることを悲しむ、後悔する」という意味もある。
人の“(温かい)心”を、現代では周りから失くなってしまったものとして慨嘆したり切望したりしなければならないとは何と悲しいことだろう。
②ただ、真逆のことを言うと、「他人の不幸は蜜の味」という諺が昔から有るように、人間の悪意、矮小さ、卑怯さ等は、実はこの地球上に現れてからずっと人間が抱える性(さが)、業、である。
大脳皮質をこれだけ進化させた挙げ句、このような負の精神活動もするようになってしまったとは何と皮肉なことだろう。
SNS等、IT技術の進歩が結局人間の心の負の部分、闇の部分を増長させてしまった、というのも皮肉な結果であり、現代人の直面する悲劇だろう。
③サブテーマとして「報道」ということにも向き合っている。
まさかのカメラマン
やはり出演者の演技が素晴らしいです。
必死にもがく母親役の石原さとみ、冷静さの裏に苦悩を押し込める父親役の青木崇高、報道の在り方に揺らぐテレビ記者役の中村倫也。
感情を抑え気味な父親や記者がこらえきれず感情を表に出す場面もなんとも言えませんが、序盤から感情的な母親にこれ以上があるのかと思っていたところ、更に打ちのめされる悲痛な場面は圧巻です。
個人が根拠なく無責任な意見を書き込むSNSに対して、責任をもって取材しつつも視聴率のために恣意的な報道をするテレビへの視点も印象的です。
悪意や無理解がはびこる理不尽な世の中を突き付けながらも、ささやかな善意の存在も示す、それでもやり切れなさもあり、複雑な気持ちで考えさせられます。
淡々と人々の日常や表情を捉える抑えた語り口や、印象的な光の使い方も良かったです。
吉田監督の作品はシニカルなユーモアのテイストが好きですが、今作はそういったテイストは控えめで、直球な感じがしました。
とは言え、まさかあの場面であんな風にカメラマンがぶっこんでくるとは。
自分も連想してしまっていたので、なんて脚本だと……
石原さとみさん、ごめんなさい。
映画館で鑑賞すべき作品
石原さとみの「新境地」という側面が強調されて、それは確かにその通りで圧倒されたのですが、映画の登場人物一人一人が映像の中で生きて生活をしていて、「新境地」などということを忘れさせる物語でした。
吉田監督の映画は、辛さがお腹にドシンと迫ってきて、家庭で配信を鑑賞すると途中でリタイヤしたくなってしまいます。ぜひ、集中できる映画館で鑑賞すべきです。
何かと文句をつけたがる人たち
吉田恵輔監督が「空白」に続き、オリジナル脚本で今の日本社会の不寛容さを描く。
石原さとみの演技が評判になっているが、喚き、暴れる姿は、共感を拒むほどに強烈。警察署のシーンは見ていて辛い。パブリックイメージを捨てて汚れ役を演じるというのでなく、本当にその境遇にあるかのよう。
同性としては、父として夫としての青木崇高、叔父としての森優作、組織人としての中村倫也それぞれに共感できた。特に青木崇高の煙草のシーンとラストの嗚咽は、胸に響いた。
あと、クレジットを見て、刑事役が柳ユーレイだったことに気づいて驚いた。
物語はシンプル、ストレートで、変なギミックはない。謎解きサスペンスではないので、ああいう展開しかないだろう。それでも生きていくという、救いらしきものは感じられて、後味は悪くない。
物語の後景になっているが、スーパーで、警察署で、商店街で、大声で文句をつける人が登場する。吉田監督ならではのオフビートなユーモアを感じさせるシーンでもあるが、対面にしろ、ネット上にしろ、何かと文句をつけたがる今の日本社会の姿を見せられて、身につまされる。中村倫也の同僚たちが居酒屋で市長のスキャンダルで盛り上がっていたが、かつては内輪の飲み会の話題程度のものが、そのまま世の中に垂れ流されてしまいかねないのが今の日本社会。
あらためて、知らない人にも優しくしたいね、と自戒を込めて。
世の中っていつからこんなに狂ってるんだろ。
自分の行動に反省しながらがむしゃらに子どもを捜索する人間
子どもを捜索するのを静かに側で支える人間
素直に表現できない自分にもどかしさを感じながらも、失踪した子ども(親族)に会いたい気持をもつ人間
事実を記録しながら、社会、会社の間でもがく人間
それぞれの気持、考えが共感されない状況が「狂った」世の中にみせたんでしょうか。
でも、どの人間たちも間違いなく必死に生活していました。そして、全ての人間がそれぞれに生き辛さを抱えていました。
ストーリーに救いはみられませんでしたが、そうした人間たちが静かに一生懸命に生きる姿、助けられた人間からの終盤の助けになりたいという言葉に救われた気がしますし、主人公にとってのわずかな光になったのかなと感じました。
子どもが生まれたときに流した涙と失った辛さが流させる涙を重ねた演出、石原さとみさんの演技が印象に残りました。
重いけど… いい映画です。余韻は優しい…
試写で1度+公開初日=2回観賞
登場人物は皆其々の辛さがあり
辛く重い内容だけど…それでも
″辛い中でも人間の心に差し込む光"で
観賞後の余韻はあたたかい
その見せ方伝え方、切り取り方…
全編を通し吉田監督の上手さ センスの良さを感じた
どの登場人物にも等距離で、家族と報道の2軸で、ドキュメンタリーのように観た
家族の辛さは勿論のこと、報道の砂田のやるせなさ辛さも相当と思う
迫真の演技の石原さんもさることながら、夫の青木さん、記者の中村さん、 男優陣の演技が凄く良かった
温度差を感じつつ自分も辛い中で妻を支える夫の青木さん。
そして、中村さんの感情を抑えた 何とも言えない絶妙な表情と その抑えた感情が 時々 わっと出る演技が 絶妙で秀逸。
いい映画です。
今年の日本映画のベストかも知れない
胸を震わせる素晴らしい作品。主演の石原さとみの今年度最優秀女優賞を予想します。
行方不明になった6歳の娘を探す母と父の物語。夫婦は街頭に立ってビラを配り、情報を求めて声を枯らす。地方TV局が報道するが新たな情報は得られず、SNSには母親を中傷する投稿が相次ぎ、ニセ情報が二人を混乱させる。追い詰められた母は精神が崩れていき、夫婦の間に諍いさえ生まれる。
母親の苦悩が軸になってドラマは進む。石原さとみの母親役に憑依したかと思えるほど全身を投げうった演技に私は圧倒された。同時に、周囲の人物の存在感が光っていた。自身も苦しみながら妻を支えようとする夫(青木崇高)、娘と一緒だったことで責められる妻の弟(森優作〕。視聴率狙いの上司の指示に抗おうとするTV局員(中村倫也)。それぞれが苦悩し葛藤を抱えていた。他にも、TV局の新人女性や母親の職場の女性、夫の職場の人たちのエピソードを重ねる構成と練り上げられたセリフがこの作品を社会性の高い、奥行の深いドラマにしていた。緻密に計算されつくした脚本と演出、演技には唸るしかない。
ラストには胸が震えるシーンが用意されていた。溺れる犬を叩く者がいる一方で手を差しのべる人がいる。失われたと思っていた社会とのつながりは生きていた。決して癒えることのない悲しみを味わったとしても、人間にはそれを乗り越え、前を向いて歩んでいく力がある。そんなことを信じさせてくれる美しい映像に私は涙した。
生き難い社会でありながらその中に芽生える希望を鮮やかに描いた吉田恵輔監督の力量と人間観には敬服しかない。これほどの秀作を創りだしていただいたことに感謝したい。
石原さとみが体当たりの演技、それは、まさに激情‼ 髪を振り乱し、泣き叫ぶ母親の姿は、リアルそのものです。
本作は8年前に石原さとみが女優としての行き詰まりのを感じて、吉田恵輔監督に直訴したことから始まった企画です。脚本から吉田監督が石原さとみの限界を超える展開を想定して書き起こしたもので、映画を見た人も「石原さとみ」像が別次元に変わる筋書きとなっています。
その物語とは、娘の失踪事件をきっかけに、情報の荒波に巻き込まれ、翻弄されていく母親とその家族たちの姿が描かれるという内容です。
●ストーリー
ある日、街で幼女失踪事件が発生します。母親の沙織里(石原さとみ)はあらゆる手段で娘・美羽(有田麗未)を捜しますが、有力な手がかりも見つからないまま3カ月が経ってしまうのです。
娘・美羽の帰りを待ち続けるも、少しずつ世間の関心も薄れていき、止まった時とよどんだ空気の中、地獄のような焦燥に焼かれてしまう日々を過ごしていました。その結果、献身的な夫・豊(青木崇高)にもいら立ちをぶつけ、感情の温度差からケンカが絶えなくなっていきます。
そんななか、地元テレビ局の記者砂田(中村倫也)だけは誠実に取材を続け、家族とも寄り添う姿勢を見せてくれており、沙織里が何かと頼りにしていました。
そんな中、娘の失踪時に沙織里が推しのアイドルのライブに足を運んでいたことがSNSで知られると、ネット上で“育児放棄の母”と誹謗中傷の標的となってしまうのです。
世の中に溢れる欺瞞や好奇の目に晒され続けたことで、沙織里の言動は次第に過剰になり、いつしかメディアが求める“悲劇の母”を演じてしまうほど、心を失くしていくのでした。
一方、砂田には局上層部の意向で視聴率獲得の為に、沙織里や、沙織里の弟・圭吾に対する世間の関心を煽るような取材の指示が下ってしまいます。
それでも沙織里は「ただただ、娘に会いたい」という一心で、世の中にすがり続けるのです。その先にある、光にむかって。
●石原さとみの転機となる作品
石原さとみがテレビの番宣に出演したとき、こう語りました。「これから何年たっても『転機は?』と聞かれたら『この作品です』と答えます。たとえ映画が公開されなかったとしても。私を、私の人生を、変えました」と。それくらい、彼女にとっても転機となるインパクトを残した作品となったのです。おそらく彼女の代表作のひとつになることでしょう。
8年前、石原さとみは、分かりやすくて華やかな役柄が多く、このままだと世の中の人が自分に飽きてしまうことにつよい危機感を感じていたそうです。だから『私を変えて欲しい』と吉田恵輔監督に直訴したのでした。
当時の吉田監督といえば、「ヒメアノ~ル」(16年)で連続殺人鬼を演じた森田剛の鮮やかな戮然ぶりが強烈な印象を残していました。そんな吉田監督に、石原さとみが期待したのも自然な成り行きだったのでしょう。
3年後、監督から石原へ本作の脚本が届きます。「余白が多くて、考えさせて、深く探りたくなる。こういう作品がやりたかった」と石原は直感するものの、当時の石原はまだ独身でした。なので母親の気持ちは当時の石原には想像するしかなかったなかったのです。しかしその直後の20年に結婚、出産と育児を経験し再び脚本に向き合うことに。すると石原は「ページをめくるのが苦しくて、この役をやったら心が壊れてしまうかも、とすごく怖かった。」と主人公の沙織里に深く感情移入するあまりに、ためらいも感じたようなのです。
ただ自分も母親として経験を積んでいく中で、沙織里の心を落ち着いて理解できるように変わったいったようです。石原にとって本作との出会いは、不思議な巡り合わせですが、本人にとってみれば、このタイミングでよかったのだと思います。
●解説
幼い娘が失踪し、両親はビラを配り、テレビの取材を受け、情報提供を呼びかけます。最愛の子を失った母親その人が乗り移ったかのように、石原さとみが体当たりの演技で、怒りと悲しみを表現するのです。
それは、まさに激情‼
髪を振り乱し、泣き叫ぶ母親の姿は、リアルそのものです。子供のことを心配して、じっとしていられる親などいないだろうから、ああなるのは当然のこと。むしろ、そばで見つめる、青木崇高演じる父親の冷静な態度が、母親には傍観者的に見えて、腹が立つのも当然ながら、石原はそれを尋常ではない凄まじさで演じきるのです。髪はパサつき、肌はくすみ、唇はかさかさ。そんな石原が演じる沙織里の涙と叫びには、すっかりのみ込まれてしまいます。それはまるで、輝きを消しても引力は増す、ブラックホールのようです。 それくらい見ている方も、夫同様に唖然呆然となりました。
家族の姿と並行して、メディアの動きが描かれます。実は、母親を精神的に追い詰めていくのがインターネットの言説やテレビ報道なのです。ネット上には、子供がいなくなった時にライブを見に行っていた母親を責める言葉が飛び交います。一方、母親はテレビ局の砂田にすがり、取材に応じます。でも誠実に被害者に向き合うことをモットーにしている砂田にも、局の組織としての重圧がかかり、取材内容を報道部の上層部が不本意にゆがめていくことになっていくのです。
一連の描写は、被害者や容疑をかけられた者とその周りの世間、そして報道機関など当事者たちのせめぎ合いを生々しく映し、真に迫ります。
「神は見返りを求める」「空白」などの吉田監督は、本作でもメディアの問題に果敢に取り組んでいます。様々な議論を呼ぶ問題作には違いありません。
●感想
本作のストーリー面ではあくまでシリアスに、現実はこうだと突きつける内容です。報道やドキュメンタリーならまだしも、幼児失踪事件に、ひたすら駅頭でビラまきする姿を追うだけで、容易に解決しない展開を観客にも強いるのは、酷なことではないでしょうか。ドラマチックなむ展開を期待している観客としてはとてもじれったい!
エンターテイメントとして、劇映画を作る難しさがそのあたりにあるように思えました。
ところで本作は石原の演技ばかり注目されそうですが、本作のサブテーマであるマスコミの負の部分を浮き上がらせる軸となる砂田記者役の中村倫也の気骨と人情味溢れる縁起もよかったです。砂田は沙織里たちの取材を誠実に続けるなかで、局上層部の意向は視聴率獲得のためなら、沙織里たち被害者まで出汁にしてしまおうと、世間の関心を煽るような取材の指示に抵抗するのです。そんな中で、局上層部の意向にそってスクープを当てた同僚がキー局に注目されて、引き抜かれることになったことには、複雑な表情を見せます。本作で砂田の存在は、今のマスコミが抱えている矛楯の象徴だと思います。その微妙なところを中村倫也が絶妙に好演していました。
弟が一番ややこしかったです
以前「空白」に圧倒されたのと、石原さとみの熱演の評判がすごいので観に行きました。
失踪した幼い娘を探し続ける両親と周囲という題材で想像した以上のしんどさで消耗しましたが、見ごたえがありました。つらく苦しい場面の連続ですが、華やかで存在感のある俳優陣の演技に目が釘付けでした。
登場人物がみんな多面的で、良い人とも悪い人ともいえず、しかも時間の経過や状況で変わっていくのに、一面だけを切り取って妄想で決めつけるネットの誹謗中傷が本当に罪深いなと思いました。
いろいろと気になることが多すぎてだんだん頭の整理がつかなくなってきますが、中でも一番ややこしかったのは弟です。一体どれだけエピソード出てくるんだ。
でも「空白」と同じように、疲れ果てた最後の最後に、ちょっと心が軽くなる光明のような場面があったのが救いでした。
座って観ているだけでこれだけ疲れるのだから、熱演の俳優陣は寿命が縮んだのではないでしょうか。本当にお疲れさまでしたと伝えたいです。
胸が苦しくなって涙が止まらない……
後半まで延々と続く地獄のような時間…
普段はレビュー書かないのですが、あまりに衝撃過ぎて投稿。
後半まで地獄のような時間が続き、何度か「吉田恵輔ーーー!!お願いだから、もうやめてくれーーーーー!!」と叫びそうになる。
もう一回観たいけど、あの地獄をもう一度追体験して耐えられる自信がない…
配信ではなく、ぜひ逃げ場のない映画館でこそウォッチしていただきたい。
小さいお子さんのいるご父兄には全くオススメしない。
別に物理的にエグい描写はありませんが、そっちの方がマシかもしれない…
観る方は覚悟を持ってご覧ください。
深淵を覗くとき、深淵もまた此方を覗いている。
失踪や行方不明の事案又は事件は日本で一年間に8万件前後起こっているみたいですし、今回の映画と似た事件で未だに未解決のままのも実際に多くあるわけで。
そう考えるとこの映画を批評したりコンテンツにする事自体が当事者達の辛さを思うといいのかとか考えてしまいます。それくらい現実感があり、生活の延長上にあると思わされます。
またこの作品を観た後に自分の過去の言動、友人に投げかけた言葉や、時事系の問題で「こういうのって大体こうだよね」とかの無意識の発言や発想に潜む軽率で醜悪な内面、善意に潜む暴力性などが帰り道に襲ってきます。
まさに「深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いている」
映画の登場人物達の描かれる善悪や醜悪さを覗く時、それは自分にも向けられ気付きたくない自分の姿と対峙することになる作品だと思いますので、ある意味非常に取扱注意。
そして映画の内容はこれでもかと淡々と抑揚もなく時だけが流れていきます。
その中の何気ない表現が非常に秀逸かつ意地悪で、
例えばスーパーでママ友で出会すシーン。Y1000の売切れにキレ散らかすモンクレと店員の会話をBGMに、「久しぶり」と言い合う相手のTシャツは失踪した日に行ってたアーティストのTシャツで、子どもに「〜ちゃんのお母さんだよ?」と言うと子どもは「誰ぇ?知らない」とか言っちゃう。
もうやめてあげて…そんな出来事が積もる日の雪のようにシトシトと主人公家族を追い詰めていきます。
最後の希望とも呼べる出来事や演出でさえ、私たちが希望認定するのは合ってるのか本当の希望なのか分からず、胸が張り裂けそうになりました。
宗教を否定するのは簡単ですが、この状況を見て何かを狂信しすがるのを否定することは果たしてできるのでしょうか?日本社会に流れる道徳や誰もが持つ信念などあまりに頼りなく悪とさえ思えてきます。
諦める事は罪であるかのようにまとまりつき、逃げ場のない永遠と続く地獄。
彼女達は今も子どもを探している。
ドラマチックさも主題歌さえない世界。
さて今回の映画は
カップル× やめといた方が無難。前に座ってたカップルは映画館を出た後、終始無言。感想の言い合いにも微妙な違いにギクシャクするかもしれません。
家族× やめといた方が絶対いい。むしろ子持ちの方はメンタルブレイクしてしまう人いると思います。観る方は昼間の明るい内に心身共に健康な時にお願いします。
友だち◯ 帰り道に自分の謝れなかったことや話せなかった事が話せるかもしれません。
1人◯か△ 1人で観るとかなり堪えます。私はレイトショーに1人で観に行きましたが、帰りの車の中で胸焼けがし頭の中は得体の知れない感情がグルグルしてました。
とはいえ、非常にいい作品で無責任に他人にすすめるのが本当は正しいのかもしれない。必ず何か自分の為になるというか、精神年齢を上げます。
石原さとみさんは演技は何か賞をとることになりそうですが、あの役を取り込んだダメージが大きそうなので心配になりました。
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