ミッシングのレビュー・感想・評価
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とても見応えがあって、意義深い作品
もともと演技力には定評のある石原さとみですが、自身も結婚・出産を経て、この作品で女優として更なる高みへ昇ったように感じました。
彼女が演じる母親役は、おそらく教養はあまり高くなく、感情的になりやすい人物。それが娘の失踪を受けて憔悴し、ときに鬼気迫るものを感じさせるほど感情を爆発させるなど、その迫真の演技は圧巻というより他ありません。
女優として更なる高みへ昇る、その特別な瞬間に立ち会えたような高揚感が、エンドロールを眺めながら込み上げてきました。
また、主役だけでなく、作品全体もとても見応えがあり、意義深い作品に仕上がっています。
このような作品が、真っ当に評価される日本映画界であってほしい。ただただ、そう願うのみです。
話もいいけど
作品自体が胸糞なんじゃなくこの作品を他人事と捉えるあんた自身が胸糞なんだよ。
過激なタイトルをつけてしまった。すいませんね。
実は吉田恵輔作品を観たのは初めてで。容赦ないとか救いがないとか胸糞という評判は聞いてたので少し緊張しながらもこれは観たいと劇場へ行って鑑賞してきた。
はぁ、素晴らしかったよ。
個人的に全く胸糞ジャンルには入らない。とても誠実な描き方をしている。
大元の事件解決はしていないし主人公夫婦はこれからもずっと苦しみながら生きていく。
だけど、これがリアルだ。人々の悪意もリアル。だから、それも包み隠さず描いた。
フィクションの世界くらい救いがほしいという人もいるだろう。でも、救いって何?鑑賞する自分自身が救われても、現実世界でこういった事件で今でもずっと苦しんでる人は大勢いる。その事実を無視して、ハッピーエンドを求めることこそ傲慢では。
あ、しまった言い過ぎたな。
自戒でもあるが、この作品を他人事と捉えないでほしい。結婚しているかとか子供の有無とか関係なく。幸せというのは、いつ簡単に崩れ去ってもおかしくない。ほんとに発狂するほど苦しいことが起こるかもしれない。毎日日替わりで入ってくるニュースに麻痺しているかもしれない。だからこの作品を見てどデカいパンチをくらって、少し目覚めることができた。吉田恵輔監督ありがとう。ファンになりました。
脚本もキャスティングもよかったが、なにより映画的な美しさを残す余韻が好きだった。久々に見終わったあと幽体離脱したみたいに頭がずっとぼんやりしてた。すごい作品。
いや、ちょっと・・
石原さとみさんの悲壮感とリアリティ
ストーリー以外に引き込まれた
石原さとみさんを始め皆さんの熱演に圧倒されっぱなしでした。今まで石原さとみさんの出演作品は何度か観ていますが、こんなにカッコ悪い役は初めてですね。
失踪した娘をなりふり構わず探すお母さん、それを支える冷静な夫に青木崇高さん、報道の力で二人の役に立ちたいと願うもうまく立ち回れない記者の中村倫也さん。そして今回、石原さとみさんの弟役の森優作さんがすごく印象に残りました。ほぼ初見ですが良い俳優さんです。
それにしても子供を探す夫婦の敵は、事故?事件?の要因だけじゃないんですね。誹謗中傷とかイタズラ電話やデマの愉快犯的な人達、実際にそういう事あるんだろうな。さらにマスコミの意義とは?偏向報道とかネットの悪とか、現代の闇みたいなことがぐちゃぐちゃにで考えさせられてしまう。
でもラストの何分かで、この家族はきっともう大丈夫って思える。闇に負けないでほしい。
容赦なく抉ってくる
期待度○鑑賞後の満足度◎ 吉田監督の視点はは『空白』よりも更に成熟し客観性(或いは分析性)に富んで来ていると思う。幾らでも感傷過多に出来る題材を抑制の効かせつつ感情の通った佳作に仕上げている。
①『Missing』という題には“(娘の)失踪”という意味と”「心」を失くす”という意味を掛けているのだろう。
しかし、一方“miss”という動詞には「何かを失くしてしまったことや、ある人に会えなくなることを悲しむ、後悔する」という意味もある。
人の“(温かい)心”を、現代では周りから失くなってしまったものとして慨嘆したり切望したりしなければならないとは何と悲しいことだろう。
②ただ、真逆のことを言うと、「他人の不幸は蜜の味」という諺が昔から有るように、人間の悪意、矮小さ、卑怯さ等は、実はこの地球上に現れてからずっと人間が抱える性(さが)、業、である。
大脳皮質をこれだけ進化させた挙げ句、このような負の精神活動もするようになってしまったとは何と皮肉なことだろう。
SNS等、IT技術の進歩が結局人間の心の負の部分、闇の部分を増長させてしまった、というのも皮肉な結果であり、現代人の直面する悲劇だろう。
③サブテーマとして「報道」ということにも向き合っている。
まさかのカメラマン
やはり出演者の演技が素晴らしいです。
必死にもがく母親役の石原さとみ、冷静さの裏に苦悩を押し込める父親役の青木崇高、報道の在り方に揺らぐテレビ記者役の中村倫也。
感情を抑え気味な父親や記者がこらえきれず感情を表に出す場面もなんとも言えませんが、序盤から感情的な母親にこれ以上があるのかと思っていたところ、更に打ちのめされる悲痛な場面は圧巻です。
個人が根拠なく無責任な意見を書き込むSNSに対して、責任をもって取材しつつも視聴率のために恣意的な報道をするテレビへの視点も印象的です。
悪意や無理解がはびこる理不尽な世の中を突き付けながらも、ささやかな善意の存在も示す、それでもやり切れなさもあり、複雑な気持ちで考えさせられます。
淡々と人々の日常や表情を捉える抑えた語り口や、印象的な光の使い方も良かったです。
吉田監督の作品はシニカルなユーモアのテイストが好きですが、今作はそういったテイストは控えめで、直球な感じがしました。
とは言え、まさかあの場面であんな風にカメラマンがぶっこんでくるとは。
自分も連想してしまっていたので、なんて脚本だと……
石原さとみさん、ごめんなさい。
映画館で鑑賞すべき作品
石原さとみの「新境地」という側面が強調されて、それは確かにその通りで圧倒されたのですが、映画の登場人物一人一人が映像の中で生きて生活をしていて、「新境地」などということを忘れさせる物語でした。
吉田監督の映画は、辛さがお腹にドシンと迫ってきて、家庭で配信を鑑賞すると途中でリタイヤしたくなってしまいます。ぜひ、集中できる映画館で鑑賞すべきです。
何かと文句をつけたがる人たち
吉田恵輔監督が「空白」に続き、オリジナル脚本で今の日本社会の不寛容さを描く。
石原さとみの演技が評判になっているが、喚き、暴れる姿は、共感を拒むほどに強烈。警察署のシーンは見ていて辛い。パブリックイメージを捨てて汚れ役を演じるというのでなく、本当にその境遇にあるかのよう。
同性としては、父として夫としての青木崇高、叔父としての森優作、組織人としての中村倫也それぞれに共感できた。特に青木崇高の煙草のシーンとラストの嗚咽は、胸に響いた。
あと、クレジットを見て、刑事役が柳ユーレイだったことに気づいて驚いた。
物語はシンプル、ストレートで、変なギミックはない。謎解きサスペンスではないので、ああいう展開しかないだろう。それでも生きていくという、救いらしきものは感じられて、後味は悪くない。
物語の後景になっているが、スーパーで、警察署で、商店街で、大声で文句をつける人が登場する。吉田監督ならではのオフビートなユーモアを感じさせるシーンでもあるが、対面にしろ、ネット上にしろ、何かと文句をつけたがる今の日本社会の姿を見せられて、身につまされる。中村倫也の同僚たちが居酒屋で市長のスキャンダルで盛り上がっていたが、かつては内輪の飲み会の話題程度のものが、そのまま世の中に垂れ流されてしまいかねないのが今の日本社会。
あらためて、知らない人にも優しくしたいね、と自戒を込めて。
世の中っていつからこんなに狂ってるんだろ。
自分の行動に反省しながらがむしゃらに子どもを捜索する人間
子どもを捜索するのを静かに側で支える人間
素直に表現できない自分にもどかしさを感じながらも、失踪した子ども(親族)に会いたい気持をもつ人間
事実を記録しながら、社会、会社の間でもがく人間
それぞれの気持、考えが共感されない状況が「狂った」世の中にみせたんでしょうか。
でも、どの人間たちも間違いなく必死に生活していました。そして、全ての人間がそれぞれに生き辛さを抱えていました。
ストーリーに救いはみられませんでしたが、そうした人間たちが静かに一生懸命に生きる姿、助けられた人間からの終盤の助けになりたいという言葉に救われた気がしますし、主人公にとってのわずかな光になったのかなと感じました。
子どもが生まれたときに流した涙と失った辛さが流させる涙を重ねた演出、石原さとみさんの演技が印象に残りました。
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