劇場公開日 2024年5月17日

「あの石原さとみがよくぞここまで」ミッシング キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5あの石原さとみがよくぞここまで

2024年5月24日
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吉田恵輔監督作品は「ヒメアノール」「告白」「神は見返りを求める」あたりまでは観てきて、中でも「神は…」はかなり好きな作品。

人間の本当に嫌なところ、受け止めたくないところを、時に残酷に、時にシニカルに、時に滑稽に描かせたら当代随一だと思う。

一方、私にとって石原さとみはというと、ドラマ・映画含め、出演作をちゃんと観た記憶がない。あ、「シン・ゴジラ」があったか。

ホリプロの大看板女優が、ここまで「人間」をさらすとは。

物語としては、あまり大きく何かが展開していくタイプの作品ではない。
むしろ願っても願っても変わらぬ現実の中でジタバタしたり振り回される人間たちの映画。

どちらかというと、観客が感情移入するのは青木崇高演じる旦那さん。
暴走する妻の思いを、それが無茶だと分かっていても可能な限り受け止め、支えようとする。
だからこそ映画の後半、その無茶が想定とは異なる形で実を結ぶ時、彼は涙を抑えられない。
「ああ、報われた…」
そして我々も。

吉田恵輔監督が甘っちょろいハッピーエンドを描くワケは当然なく、でも最後は人々がほんの少しだけ前を向いて歩き出す、という相変わらずの上手さ。

過去作から比べて、「神は…」辺りから、描くものは泥臭いながらも、テーマはどんどん洗練されてきた感じがするし、暴力表現も今回はほとんどなくて、多くの人にとってより見やすくなっている。
いわゆる単純な「胸糞映画」では決してない。

まあ何しろ「あの石原さとみがよくぞここまで」という熱演は間違いなく彼女の役者人生の中で大きな転換点になっただろうし、とにかく一見の価値がある。

キレンジャー