「エンディングとのギャップ」コヴェナント 約束の救出 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
エンディングとのギャップ
見応えあった。
戦時中のアフガンにおける米軍の軍曹とその通訳の話だった。
物語は結構スピーディーに進むものの、そのエピソードなのか、終始緊張感を煽るBGMのおかげなのか、駆け足感は全くなかった。
通訳が置かれている立場とか、あまり見ない角度からの切り口も新鮮だったな。
物語を分厚く語る為の素地として、通訳の背景や、通訳が置かれている環境とかがしっかり語られてたのも良かったのだと思う。
尋問中、通訳は現地では「裏切り者」と呼ばれ、家族まで引きずりだして目の前で殺してやると脅される。そりゃそうかと思う。米国側に与し、彼らのせいで情報は漏れ、夥しい数の同胞が殺されるわけなので。実際、米軍が引き上げた後は3000人もの通訳とその家族達が殺されているのだとか。
のるかそるか…まさに命懸けだ。
引き入れる軍にしたって、スパイの可能性は捨てきれず、実際隊員が裏切っていたエピソードなんかもある。
戦場に漂う嫌な空気感…捨て駒にされてやしないか?そんな緊張感が前半は蔓延してた。
彼らは敵の武器庫を見つける任務にあたっていて、敵の拠点を発見し戦闘になるのだけれど、多勢に無勢、応戦も虚しくあっけなく死んでいく。辛くも逃げ延びた軍曹と通訳の何百キロもの逃避行が始まる。
手傷を負い歩けない軍曹を荷車に乗せ引いて歩く通訳。すげえなと思う。どう考えても足手纏いだし、見つかりや即死なんだと思う。
でも、彼には他に選択肢が無かったんだと思う。1人で軍に戻ってもスパイの嫌疑はかけられるだろうし、置いて逃げたところでアフガンに未来はなく、通訳であった自分達は殺されてしまう。
瀕死の彼こそが命綱だったのだ。
軍曹は本国に戻るも通訳は現地で行方知れずで、軍は保護してないわ、タリバンに懸賞金をかけられるは散々だ。
平然と行われるている切り捨て。戦時中の盟約など成立しないと思わせられる。
だけど、軍曹は死地に戻る。
彼を助ける為と言うよりは、自分の平穏を取り戻す為の色合いが濃く「呪いをかけられた」との台詞が印象的だった。
奥地で再会を果たすのだけど、抱擁も感謝もない。依然敵地の真っ只中な緊張感が薄れない。
軍曹は途中から尾行され、タリバンはすぐそこまで来ている。救出ポイントのダムに行く途中に銃撃戦だ。こん時タリバンの車が横転すんだけど、そこをアピールする編集はなく、あくまで臨場感優先の編集が効いてた。
救出のヘリに乗り込んでも言葉を交わすカットはない。目線を合わすような事もない。ただただ遠ざかっていく戦地が印象的だった。
義務は果たしたといわんばかりだ。
パーカーだったか、救出を請け負う仕事の隊長が「キンリーとアーメッドだと知ってたら自腹でも救出してた」みたいな事を言う。英雄達ともてはやしたつもりだろうが、かえってビジネスなんだなと思えた。彼らに依頼するような人達は、唯一無二な存在を救い出して欲しいと依頼するのだ。そこには英雄譚があるかないかの物差しは不必要だと思われる。
最後に至っても2人の間で友情めいた事を語る事はなかったように思い、かえってソレがリアリティを付与してたんだろうなとボンヤリ考える。
エンディングのご本人達を見るまでは。
めちゃくちゃ抱き合ってそうだし、なんなら泣きじゃくってもいそうな人相。
そうだ、軍曹だったと改めて思う。劇中の彼は百戦錬磨の兵士のようで…銃撃の精度は高いわ、指示は的確だわ、何より目が座ってる。ご本人が劇中のように電話口で激昂する様が想像できない。
通訳にしたってすこぶる有能だ。一般兵士よりも腕は立つし、人を殺すのにも躊躇いがない。とてもクレバーだし、度胸もある。
…戦場はああも人を豹変させるのかと思うようにしたいけど、あまりにも落差が大きかった。
2人だけの逃走劇もあんなヒロイックな事ではなかったのだろうなぁ…。
どんだけ脚色されてんだろうか?
とは言え、ご本人達を見るまでは、しっかりハリウッドエンタメに没入できてた。
曲者ジェイク・ギレンホール作品はやっぱり見応えあった。