「気取っていないガイリッチー、好き。」コヴェナント 約束の救出 リオさんの映画レビュー(感想・評価)
気取っていないガイリッチー、好き。
アフガン戦争下で、とある米軍曹長とその現地通訳との間に起こった「約束と絆」をテーマにした実話ベースの作品。もちろん、ヒリつく緊張感と鬼気迫る戦闘シーンはこの監督のお家芸なのだが、本作の見所は、戦争という極限状態の中で生まれる、利害を超えた人間同士の絆にフォーカスを当てているところ。
個人的に、最近のガイリッチー映画の中ではダントツで好きな作品でした。
ガイリッチー監督と言えば、アクション作品の中に「カッコいい」と「オシャレ」を描くのが得意なイメージが強かったから、そもそもこの監督が米国の戦争という重いテーマと正面から向き合っていることが意外だったし、実話ベースの作品ということも意外でした。
そして、主演はジェイク・ギレンホール。独特の間と雰囲気を持つ、個人的にも大好きな俳優だが、内省的な軍曹といった本作の配役にとてもマッチしていた。
本作で特に好きだったシーンは、帰還中に通訳のアーメッドが、心が折れかかって不意に泣いてしまう場面。鑑賞後、本作の制作エピソードの動画を見たのだが、アーメッド役のダール・サリムがこのシーンをうまく演じようとしたら、監督から「人は泣こうと思って泣きはしない、不意にそうなるんだ!」とダメだしを受けたとのこと。なるほど、「不意にそうなった」泣きのシーンがきちんと描かれていた。
ガイリッチー監督の一つのターニングポイントになったであろう本作だが、人間の本質も描きつつ、きちんと娯楽映画に仕上げているあたりはさすがだなと唸らざるを得ない。
最後に、作品終了時のテロップで、米軍撤退後のアフガニスタンの実情が、作品と地続きの問題として深い余韻と共に見る側に突き付けられました。