「戦争アクションかと思ったら、戦場の緊迫感を表現しつつ、アフガニスタン紛争の不可視だった側面についても考えさせてくれるという一作」コヴェナント 約束の救出 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
戦争アクションかと思ったら、戦場の緊迫感を表現しつつ、アフガニスタン紛争の不可視だった側面についても考えさせてくれるという一作
2001年から2021年まで続いたアフガニスタン紛争は、米軍の撤退とタリバンの政権奪還という一応の結末を迎えたけど、米軍に協力した多くのアフガニスタン人はどうなってしまったのか、報道からはなかなか伝わってこない紛争の一側面を、映画としての娯楽性を損なうことなく描いた作品です。
『SISU/シス』のような、無敵兵士の無双っぷりを期待してしまうと、本作は意外に戦闘場面が少なめに映るかも知れません。むしろ『メタルギア』シリーズの実写版を想像してもらうといいかも。もっとも、そのいくつかの戦闘描写はどれもかなりの迫力で、中盤以降の緊迫感溢れる脱出、潜入劇と見事な対比をなしています。このあたりの緩急の付け方と無駄のない描写は、さすがガイ・リッチー監督です。
物語もまた、場面に応じて明確な区切りを設けていて、複雑な伏線はほぼなく、基本的には順を追って鑑賞するだけで十分作品を堪能できる造りとなっています。これは長尺かつ複雑化が進んでいる昨今の映画作品の中では、かなり「素直」な部類の構成です。
主人公キンリー曹長を演じたジェイク・ギレンホールと、彼の命の恩人であるアーメッド(ダール・サリム)の、互い対して誠実であろうとする姿は心揺さぶられるものがありますが、裏返して言えば本作は、実際にタリバンを恐れて身を隠しているアフガニスタンの協力者を救うには、キンリーのような責任感のある個人、あるいは作中に登場した民間軍事会社に頼らざるを得ない(米軍は動かない)、という冷厳な事実を示唆しています。そうしたこれまで表面化してこなかった問題への視点を提供している作品でもあります。