「6:4で、二人の結婚には反対」きっと、それは愛じゃない きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
6:4で、二人の結婚には反対
そんなに甘いもんじゃない。
「旧宗主国の人間」と「元植民地出身の移民」の結婚は。
塩尻の映画館 東座で鑑賞後、非常に重たい気持ちで帰宅し、彼らの結婚には手放しで賛成できない胸の内を書き始めたら長大となってしまい、長期間放置。
そしてどうにもならなくなって、レビューを一回すべて消去した。
この映画は僕にとっては「棘」だ。
イギリス人の彼女ゾーイはツリーハウスでの楽しい思い出を語り、しかし彼カズは北パキスタンで得た父親との旅と霊的体験を語る。
この二人は決定的に生まれと育ちの差異と隔絶を負っていて、しかも彼女にはその自覚が皆無だ。
そして彼はその分かり合えない事の危惧を言葉に出来ずに口ごもっている。
やめたほうが良いと思った。
劇中、象徴的に彼らの住まいが何度も映るのだ。
隣り合わせで、横ならびに一枚の壁でくっついた二世帯の住宅・・
玄関ドアは右と左に、それぞれの家族のために有る。素敵な英国住宅だ。
しかし、異文化同士の彼らの住まいは
くっついているのに「番地が並んでいない事」に僕は気付いたのだ。
あまり書くと個人が特定されるからサラッと記すが、親友が在日ゆえ破談したので、この映画は僕にとっては それを思い出す羽目になり、本当に辛かった。はらわたが千切れるほどの苦しみがそこにあった。自ら破談を決意した彼は生涯独身を貫いたから。
・・・・・
僕の仕事場には、世界中からの出稼ぎが来ている。
その中の一人、パキスタンから来ている若者の美しさには言葉を失う。
長身で浅黒く、その細面のかんばせは まるで仏陀のそこにおわす姿なのだ。
物静かな彼。冗談でなく僕は彼のそばでは たじたじとして後退りし、直視出来ずに目を落としてしまうほどの高貴さ。神々しさ・・
まさにガンダーラ美術の生仏が目の前に立ち、光背が青年の周りをほんのりと取り囲むようで。
カズが北パキスタンの山中で体験したスピリチュアルだ。
大英帝国と北アジアの辺境の小国。その二つの歴史に横たわる血。
仏のような彼を見ると、この映画で覚えた身のよじれる苦しみを直結に思い出して、
無邪気には添い遂げられない衆生の煩悩を仏に救って頂きたくなる。
南無、憐れんで下さい、どうかお救い下さいと。
誰でもよいから すがって、泣きながらひれ伏したくなる。
