ウェルカム トゥ ダリのレビュー・感想・評価
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作品見せずに画家描く。空虚な宴にいざなう騙し絵
ダリ役のベン・キングズレーとダリの妻ガラ役のバルバラ・スコヴァが好演するも虚しい。1974年、ニューヨークでの個展を控えながらも、拠点のホテルでパーティー三昧の日々を送るダリとその取り巻きたち。原題はDaliland、つまり“ダリの世界”に招かれた画廊勤めの青年が映画の案内役になり、著名芸術家の一時期の創作活動、夫婦の関係、交友関係を描いていくのだが、何だろうこのもどかしさは。
もどかしさの最大の要因は、ダリの作品を劇中で見せてもらえないこと。美術業界誌The Art Newspaperの記事によると、金銭的な事情により作品を劇中で使用するライセンスを得られなかったとか。溶けていくカマンベールチーズを見てインスピレーションを得たという、ぐにゃりと柔らかく曲がった時計が印象的な代表作『記憶の固執』をはじめ、アートの制作過程は描かれても、完成品を正面から映すことはない。作品が紹介されない画家の伝記映画の企画がよく実現したものだ。音楽家の伝記映画で完成した楽曲が劇中で流れないとか、作家の伝記映画で小説の文章が引用されないようなもの。ダリの人となりを添えて作品の魅力を伝えてもらえると思ったのに騙された、というのは言いすぎか。
ダリの主要作品は頭に入っていますという美術愛好家なら楽しめるかもしれないが、邦題に反して誰でもウェルカムというわけではなかった。
キングスレーならではのダリの人物像が愛らしい
ピンとはねた髭とカッと見開いた瞳。名優ベン・キングスレーと20世紀芸術を代表する巨匠ダリとの異様なまでのこの親和性は一体何なのだろうか。本編の素っ頓狂かつエネルギッシュな立ち居振る舞いからは、これが『ガンジー』のタイトルロールと同一人物だと想像がつかないほどだ。本作はダリとその妻ガラの特殊な夫婦生活に焦点を当てた物語であり、それを若きアシスタントの目線で見つめた目撃型のヒューマンドラマとなっている。70年代、ニューヨーク滞在中のダリは展覧会のための作品制作もそっちのけでパーティー三昧。そこに集う人々の目の眩むような豪華さを印象付けながら、宴のあとの芸術家の素顔にも興味をそそられっぱなし。泣きわめいたかと思えば真剣に作画に打ち込んでみせたり、また妻の浮気が気になって、あれこれ画策しだしたり・・・キングスレー演じるダリは子供のような一面を持ちつつ、妙に観る者の胸に棲みついて離れない魅力がある。
The Great Masturbator
wikiで検索すると飛んでもない日本語タイトルがでるのだが、ホントに合っているのだろうか?(汗
ダリと言えば、チュッパチャプスの包みのデザイン、そして有名なのは溶けるような構図の時計と、異世界をリアリスティックに表現する独特の絵画や彫刻が有名な奇才芸術家である そんなダリの後半期の人生を、映画『バビロン』のような構成で描くヒューマンドラマである なので、紹介役の人物は実在せず、その人間を通してのダリの虚実皮膜を作劇している 勿論、あれだけの偏執狂でありそして人生そのものがドラマティックに自己演出してあり、それ以上に妻の存在が制作の原動力となっている告白でも分る通り、常人とはかけ離れたライフワークとして演出されている 逆にそれがよくある芸術家のスレレオタイプとしての源流の一つになっているのが寂しい限りだが・・・ そんな夫妻に近づく人間達も有象無象なのだが、でも比較的女性の方が本質を分っている感覚を抱いたのは自分だけだろうか? お尻の魚拓ならぬ"尻拓"を嬉々として協力する姿は、ダリの芸術を一番理解している"天使"達かもしれない そんなまるでパーティの一環としてはしゃいでいる中でのダリの仕事モードは、流石プロフェッショナルで、主人公を窘めるカットには痺れる
リトグラフ、シルクスクリーンの所謂"模造"品のシークエンスは、美術に疎い自分には馴染みはなかったが、常に派手な生活を繰り返す裏の事情をチクリと皮肉った話であろうことはうすうす理解出来、これも"あるある話"であろう
常にサインの筆跡を変えていく繊細さに、主人公ならずども、特異な感性を保つための或る意味弛まぬ努力と、犠牲を覚悟したダリと婦人の潔さ、その裏側の悲壮を主人公にしっかり託したラストシーンでの岬上の指揮者の演技は、孤高を貫いた天才を綺麗に表現した作劇であった
「紋切り型の筋書き」は伝記として最も恥ずべき結果ではないのか
絵画の世界に生きる青年ジェームス・リントン、彼がある火災のニュースと共に回顧するのは天才芸術家サルバドール・ダリとその強烈なる妻ガラと過ごした日々……
筆者は決して伝記映画に明るいとは言えないが、この既視感と予定調和は何なのだろうか。
未だ何物でもない青年の眼から見る、狂奔する老芸術家とその取り巻き、無二の盟友でありながら関係に隙間風の吹く妻、二人を苛むスター気取りの間男、そして己は正気だと主張しながら後ろ暗い金稼ぎに勤しむマネージャー……
皆が皆登場して数分でキャラの底が出てしまうお定まりの造形、何の驚きもなく淡々と予想通りの展開が続く脚本。そこに「サルバドール・ダリとはこうだったのか!」という意外性はどこにも存在しない。伝記映画とはそこに個性をもたらすことで偉人の生涯を描き出すものだと思うのだが……
既に別レビューでも指摘されているが、
本作は諸事情によりダリの実際の作品は一切登場しない。
必然工夫の限りを凝らしてダリという個性を描き出す必要がある筈にも関わらず本作は明らかにそれに失敗しており、残るのは「食卓のチーズと鳴り響く秒針の音」から代表作『記憶の固執』―――或いは”とろけた時計が描かれたあの作品”―――の登場に期待した心を肩透かしされた脱力感のみである。
……まさかとは思うが、チュッパチャプスを彷彿とさせる”棒付き飴、但し包み紙未登場”は伝記映画として異常と言える不備への抗議なのだろうか……
「一度見たら二度と忘れず心に焼き付く」と名作のもたらす感動を表現した本作だが、
ならば思い出す取っ掛かりすら難儀する程に凡庸な本作の存在意義とは何なのか。
深い失望を感じざるを得ない。
そしてダリもいなくなった
ダリの伝記映画と言っても、尾羽打ち枯らしてからの晩年のエピソードが中心で、しかも画廊の青年が実質主役のようなもの。当時は自己模倣による拡大再生産に汲々としていた頃で、ダリのファンとしては新進気鋭のシュルレアリストデビューの時代をもっと見たかった。家庭でのガラはほぼ岡本かの子さながらの不行跡を重ねていて、そんなものをだらだら見せられても哀しくなるだけだ。
ガンジーとダリはまったく似ていないけれど、どちらにも憑依できるキングズレーさんはきっと名優なのでしょう。
世界を我がものとして指揮する男
音入りが良い!ここぞという時にものすごくいい曲がタイミング良く入る気持ちよさ。
ダリの視点ではなく、聖セバスティアヌスと呼ばれる青年の視点を通して描かれるから良いのだ。
全編を通してダリの絵が出てこないことが素晴らしい。
この映画にダリの絵を出したら蛇足にしかならない。見たくない。
各自頭の中で描けということだ。
そして歴代のダリのサインだけが公開される。
そこが的を得ている。
いいねえ、わかってるなあ。
ダリとガラの関係もいい感じに切り取られ、切り傷に破傷風を恐れるダリ、ガラが来て落ち着きを取り戻すダリ、死後、遺言通りに服を着せられて恋人と暮らした城に運ばれるガラも女の強を感じて良かった。
指揮するダリの回想が素晴らしかった。空を切り、全世界を指揮するようだ。
実話ベースの映画はどのような視点でどう切り取るか。
ダリの奇人な所を押すより、青年から見た崇拝するべき存在のダリを描いたところがこの映画の良さだ。
エンドロールの文字の色は悪妻でもあり糟糠の妻でもあるガラが走り回って探した色だ。
そういうところが粋だな。
ほんとに観て良かった。
LOVE IS MONEY
ダリの知識は最低限のものを詰め込んで鑑賞。ダリの功績というよりかは、ダリと妻のガラのとち狂った恋愛劇をジェームズの視点から描いた作品になっていました。
初っ端のダリ当てクイズのシーン、アメリカのコメディに詳しくないのもあったのですが、全然笑えずでこの映画乗れないかもと思ったら案の定乗れずじまいでした。
ガラがまぁクセの強い人物で、ダリの奇行が霞んでしまい、そのせいかこの映画の趣旨やら何やらがブレてしまいました。悪態をつくシーンも多いので、人間性的にキツイなと思いました。変人も変人はやはり惹かれ合うものなのか…と考えてしまったりしなかったり。
もっとダリの人生について知っていれば楽しめたのかなとは思いましたが、ダリのアートを楽しめるものだと思って観に行ったので、そこがそもそも少なかったので残念でした。んーやはりアート系の作品は合わないのかもと再確認しました。
鑑賞日 9/13
鑑賞時間 20:55〜22:25
座席 H-13
いわすと知れた前衛芸術のお方。70年代のNYCにて。 別の惑星のよ...
いわすと知れた前衛芸術のお方。70年代のNYCにて。
別の惑星のようというか、物事の見方が常に人と違うところ、興味深く感じました。
ただし、適度な距離感で。
キングスレーの怪演に拍手 ^(ノ゚ー゚)ノ☆パチパチ☆ヾ(゚ー゚ヾ)^
あ゛ーーー....一度でいいから 物語のような 乱痴気騒ぎを
してみたかったなぁー。
羨まし過ぎるぅー。
奇抜な絵で 有名ですよね。
若い男を 誘惑するあたり ジャニーズを思い出しました。
富と名声....怖い怖い。
取説。
主にニューヨークでのダリとガラ夫妻の日常を画商(見習?)のジェームスの目を通して語られるお話 お互い自由奔放で傍目にはとても変わった夫婦ですが、絆は固く決して別れない 妻は金のために夫の尻を叩き、夫はそれで鼓舞して尻で魚拓みたいなのを取るという面白いカップル 後年金の亡者のように妻が変わってしまったのは残念ですが、特殊な職業、才能を信じてくれて実に絶妙に手の平で転がしてくれる相手が奥さんだったのは幸せだったかもしれません
アマンダリアはデビッドボウイとも縁のある人なんですね そしてアリスクーパーも顔が広いな、もしやこの方達もマクシズカンザスシティにも通ってたのではと別作品を思い出す
ジェームス役の俳優さんはヒーロー物にもオファー来そう
ガラへの一方通行の愛
ダリの晩年の妻ガラとの歪な関係性をお手伝い役(監視役)?のジェームズの割とニュートラルな目線を通して見ている作品。
事実はどうかわからないが、
本作を見る限りダリはガラをミューズと崇め完全に依存しており、ガラは若いツバメに大金を援助するなど夢中になり、ダリをただの金を産む存在くらいにしか思っていない。
エキセントリックで人前では王様気質のダリをガラがある時は力ずくで、ある時は母のように優しくしながら上手にコントロールしている様が面白い。
ダリはガラに怒鳴られてもかまってもらう事が嬉しく、それを糧に発奮して創作活動に集中するなど可愛いところを見せるが、ガラの愛はそこにはないことが見ていて辛い。
またガラは金儲けに目がくらむあまり、ダリの知らないところで複製を売りまくるなど夫の作品へのリスペクトまで欠いており、作品の評価も散々だった晩年のダリの一方通行の愛情がかわいそうでならなかった。
作中でダリの絵画が一枚も出てこなかったり(権利降りなかった?)、渡米する前の様子があまり見れなかったことが残念だった。
一番幸せだった時期を描かず晩年だけを見せられるのは正直言ってあまり良い印象を持つことが出来ず辛かったが、奔放なジネスタ役のスキ・ウォーターハウスの小悪魔感がかなり良かったので帳消し。
ダリという人の欠片
ダリとガラの関係や晩年のダリにスポットを当てた作品でした。
ダリのほんのひと欠片を引き伸ばしてダリを語るのは難しいけれど、産みの苦しみに常に晒される芸術家ダリに少しだけ触れた気になれる映画でした。
ダリ(絵画)好き、には物足りない⤵️
ダリと、ガラが生み出した
傑作絵画の深層?の一旦に期待したけど
DALI LANDには
潜んでいなかったようです。
N.Y.の高級ホテルのスイートルームを
20年間借り切って
作品作りも、そこでしていた・・・
そこにいるダリは
ダリ!だった感が⤴️!
ダリ役のベン・キングズレー
ガラ役のバルバラ・スコヴァ
2人
なりきってます(👏)
ダリの凄さを見たかった。
天才芸術家サルバドール・ダリを描いた作品で期待してました。
感想としてはお金の亡者の妻ガラとの異常な愛憎劇のシーンが多く、危ういパーティ三昧とダリの醜態シーンが延々と続きます。少々うんざり気味で睡魔に負けてしまう時間も多々ありました。ダリ役のベン・キングスレーの熱演は光りますが寂しい晩年も悲哀が伝わってこなかったです。
世紀の大天才と言われた芸術家ダリの凄さがわかるシーンを観たかったです。
おススメ度はかなり低いです。
アリス・クーパーとお友達だったとは知らなかった
ダリは、作品は面白いけど先駆性とか革新性には欠けるのではないかと思ってたら、少なくとも米国ではアンディ・ウォーホールみたいな扱いだったのかと納得。
キングズレーはブルーノ・ガンツのヒトラー並の怪演。
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