「アウシュビッツに実在した残酷なボクシング試合」アウシュヴィッツの生還者 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)
アウシュビッツに実在した残酷なボクシング試合
いわゆるホロコーストに関する映画から、また新しい作品が誕生した。アウシュビッツでナチスのために同胞相手のボクシング試合を強いられ、試合に勝つことで処刑を免れた実在のボクサーが、アメリカに渡り、ロッキー・マルシアーノと対戦することで注目を浴びようとする。戦時中に別れた恋人を見つけるために。彼の名前はハリー・ハフト。リングアナは"アウシュビッツの生還者"と高らかに歌い上げる。
アカデミー受賞監督のバリー・レヴィンソンはハリウッドの"ブラックリスト"に載った実録小説をドラマチックでエモーショナルな映画に仕上げている。ホロコースト時代と14年後のハフトをカットバックで描くことで、逃れたくても逃れられない過去の記憶に苛まれるハフトの葛藤が伝わる構成だ。
これは、過去と未来に関する物語でもある。ハフトがいかにして生還者としてのサバイバルギルトから脱却し、未来へ歩み出していくのか。そこが見どころであり救いでもある。
地味だが完成度は高い。演出だけでなく、激しい減量と増量にトライして生還者ボクサーを演じるベン・フォスターの俳優としての献身ぶりは、もっと話題になっていいと思う。
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