「へばは良かった」バカ塗りの娘 あっさり醤油ラーメンが好きさんの映画レビュー(感想・評価)
へばは良かった
日本伝統工芸展に何回か訪れ、その高度な技巧と芸術性に魅了されながらも、日々用いる食器類を殆どダイソーで賄っている身としては、日本の素晴らしい伝統工芸を絶やして欲しくないと強く願う一方で、どうすればそれらを守っていけるのか皆目見当もつきません。この映画でも描かれている様に、海外も視野に入れた新たな市場の開拓が王道のアプローチのようにも思えますが、そもそも芸術家がどうやって暮らしているのかもよく分かっていませんし。美大は多いけど大学の伝統工芸学科をあまり聞かない理由も何となく分かります。一人当たりの市場のパイが余計小さくなりそうですもんね。
津軽の美しい風景や津軽塗りの静謐な年代物の工房に穏やかな時間が流れる純文学さながらの作品ではありますが、堀田真由演じる美也子の兄の同性愛は主たるテーマとの親和性が低く、まるで寅さんシリーズに同性愛者が登場するかの様な唐突感があり、何故このモチーフが必要なのかが分からず戸惑いました。原作にそのモチーフがあったのかもしれませんが、もしそうでなければ「取り敢えず同性愛者出しとけば今っぽくなるんじゃね」的な軽々な意図だったのではないか、或いはスポンサーの意向などの何等かのパワーが働いたのではないかと勘繰ってしまいます。同性愛はミニシアター系にありがちなモチーフですが、日常生活で同性愛者に会ったことがない身としては、反対はしていないけれども特に応援もしていないというか、そんなに頻繁に取り上げられてもなというのが正直な感想です。
レーティングは堀田真由の「おっ父」「おっ母」「へば」などの可愛い津軽弁に免じて70点とします。応援している俳優さんなので、また主演作品があれば劇場で観たいと思います。