「土地柄、仕事柄、人柄の良い映画」バカ塗りの娘 あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
土地柄、仕事柄、人柄の良い映画
私にとって邦画の本年度ベストワンです。全国拡大上映が始まったので是非ご覧になることをおすすめします。
まず土地柄について。津軽が舞台です。多くの人は青森と津軽がごっちゃになっているかと思いますが県の東部、弘前あたりからが津軽です。映画の中では津軽の四季が移っていきます。季節毎の岩木山、雪や桜、ねぷたといったアイコンはもちろんですが、庭の鳥のさえずりや縁側に渡る風といった細部も生き生きと描かれています。冬は厳しいですが人が自然と調和して生きている土地であることが伝わります。
続いて仕事。津軽塗、バカ塗りです。映画が始まって30分ぐらいのところに父娘の作業の手元を延々映し続ける箇所があります。映画の制作者が津軽塗に抱いているリスペクトが伝わって来ます。この映画に出てくる人たちも、別れた妻や家を出ていった息子を含めて皆、津軽塗に敬意と愛着を感じています。だから食えないということでの葛藤も大きいのですが。それだけの価値のある仕事であるということです。
最後に人柄。小林薫や木野花といったベテラン勢が手堅く固めていますが「バカ塗りの娘」ですから堀田真由さん次第の映画であったということでしょう。確かに演技は稚拙で津軽弁一つとっても覚束ないです。でも、主人公美也子の穏やかだけど頑固な性格、迷いと決意、そして行動を見事に表現していたと思います。二時間出っ放しで素をみせないのは難しいです。恐らくこれは彼女の人柄そのものとよくマッチした役柄なのでしょう。
土地柄、仕事柄、人柄が良い、だから実に品の良い筋の通った映画です。制作者の皆様と出演者の皆様に深く敬意を表します。
コメントする