「悪魔よりワルなんて許さない」SAND LAND uzさんの映画レビュー(感想・評価)
悪魔よりワルなんて許さない
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珍しくヒロインのいない冒険活劇で、メインは爺さんと悪魔。
次々に襲い来る敵に、肉弾戦、戦車、銃など様々なアクションが繰り広げられます。
序盤で砂竜に襲われた際、「俺でも倒せない」と言わせることで、無敵性を失わせて緊張感を失わせない。
「荷物が軽くなった」という台詞の直後に“反石”という単語を出すなど、用語も説明的にせず浸透させる。
また、物理的・心理的なリアリティラインを絶妙に保っているのも見逃せない。
時速180キロで転倒したパイクが、しっかり頭を守っていたり。
敵のエイムがガバガバなわけでもなく、状況や人数、心理状態など無理のないつくりにもなっている。
こういったところを軽視して子供騙しになってしまった作品も少なくない中で、素晴らしい細やかさです。
意外性のある仕掛けなどはありませんが、伏線をしっかり回収し、あるべきところに全てが収まる。
鳥山明の魅力的なキャラやメカ造形もそのままに、邪魔しすぎないカメラワークが引き立てる。
声優の声もバッチリはまり、演技は作風に寄り添った重さを保っている。
単純ながら、これらを破綻なくまとめるだけでも物語の強度が跳ね上がるという好例です。
子供でも楽しめるシンプルで童話的なストーリーながら、寓話でもあり、エンタメ性も兼ねる。
当時はこのバランス感覚の凄さに気付けなかったんだなぁ。
クライマックスのアクションがもう少し派手なら、なお良かった。
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