映画 窓ぎわのトットちゃんのレビュー・感想・評価
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閉塞の中の自由
原作は遠い昔に読んだ。ドラマもリアタイでも再放送でも見た。映画のトットちゃんがとにかく自由奔放!黒柳徹子そのもの。アニメだったせいもあるけれど。そんなトットちゃんでも、ちゃんと気遣いできるのは周りの環境によるもの。やっぱ環境って大事。ドラマの再放送の方が泣いたかな。ドラマの影響強すぎて、あ、校長先生、竹中直人じゃないんだ、とか、お母さん松下奈緒でお父さん山本耕史じゃないんだ、とかね。弟も既にいたような気がする。やすあきちゃんのお葬式でやすあきちゃんのお姉ちゃんが出てきて、手紙かなんかでトットちゃんの話を良くしてたわよ、みたいなことを言っていた。お姉ちゃんは出てこなかったけれど、トットちゃんが駆け出すときに戦死したお骨を抱き締めている女性や片足がない人の描写が心に刺さる。
戦争関係なく普遍的に通じる作品
良いところ
子供ならではの成長と素直な交流を丁寧に描いていて、子供から大人までに伝わるテーマがある
?なところ
下世話な話だが、海外展開はしにくそう
GODZILLA−1.0とかゲゲゲの謎とかと並べて戦前戦後ものみたいなこと言われてるけど、前の2作は第二次世界大戦がないと成り立たない話に対して、今作はそういう並べ方はちょっと主旨から外れた、どの時代でも成立する普遍的な小学生低学年の子どもたちの心の交流と成長を描いた作品。同い年くらいのころの子供達にこそ見せた方が良い作品だと思う。
歴史背景による描写がなくもないが、それは抜いても問題ないし、これだけ広い世代に受け入れられている原作なのだし、むしろ現代に勘案してリメイクするのもありだと思う中、まっすぐにやり切ったのは深い覚悟あったからだと思う。それだけ力の入った絵面だし、作品だった。
ただまあそれだけに子供の描写に過剰反応する海外には展開無理そうなのがなあ、もったいない。いや、これをみられない海外市場がおかしい、としか。
原作力!
原作は1981年(昭和56年)にリリースされた大ベストセラー小説。この本は信じられないくらい売れましたね。たしか日本で一番売れた本ですよね。世界一?まあ統計の取り方は色々ありますが…。私も子供の頃に読みましたよ。名著だと思います。内容もかなり記憶に残っています。
そして原作者は黒柳徹子さん。
紹介する必要はありませんね。おそらく日本人のほぼ全ての人が知ってる人です。年齢、実績、人気、影響力、社会的貢献度などすべてひっくるめて、今となっては最も大物の芸能人と言って良いでしょう。テレビ・映画・演劇・お笑い等のエンターテイメントのみならず、音楽家や文筆家、画家などの芸術家も含めて、さらに大抵の政治家も、この人に敬語を使わない人はいないでしょう。事実上日本で一番偉い人の1人です。
異論は認めますが、要するにこの原作は、日本で一番偉い人が書いた、日本で一番面白い物語なんです。そんな原作が満を辞してようやく映画化されたのですから、面白くない訳がない!
ただ個人的な期待値は超えていませんでした。
非常に評判が良いので見てみたのですが、予想通りの面白さでした。見ていて何度もウンウン、知ってる、これ知ってるヤツって思いました。
でもさ、この原作なら映画としてもっともっと面白く出来たでしょ。
今は昭和も終わって、平成も終わって、令和ですよ。もうとっくに21世紀ですよ。なのにまーだ昭和コンテンツ!
一周回って逆に新しいってヤツなの???
本作と近い時代を描いて、テーマも少なからず重なっているアニメ映画に『火垂るの墓』(1988)や『この世界の片隅に』(2016)という大名作がありますが、両作とも本作に比べ、原作の知名度は高くありませんでした。それでも映画作品として圧倒的な出来栄えでした。映画が原作に負けてないというか、映画としての評価の方が原作の評価を超えてます。
でも本作は、原作の方が良作!(あくまで個人的見解)
そもそも絵柄が微妙でしよ。いわさきちひろの挿し絵は原作の大きな魅力なのに、それをブッチしてあのデザイン?もうちょっと何とかならなかったの?黒柳徹子の力を使えば権利的な都合など如何様にもなったでしょ。ていうか黒柳徹子の力を使えば、大抵のことがOKですよ。かなり何でもアリの状態で、あえてこの絵柄?誰得???
大変に評判の良い映画ではありますが、その評価は「原作力」に由来すると思います。いや、声のお芝居は相当に良かったですよ?表現的にかなり踏み込んだ部分もありましたよ?でも肝心の絵柄が…。
そして戦争映画アピールは要らなくない?
原作ではむしろ行間に読み取るべき反戦精神だと思うんですが、映画ではもっと強くアピールされてます。令和の今となっては、ここまで分かりやすくアピールしないと伝わらないのかな…。原作ではそれをいわさきちひろの挿し絵で上手にカバーしていたのに。
ここは是非、原作を読んで下さい。ネットの評判を読んでると、多くの人が映画を褒めてますけど、それ原作の魅力ですから!もう40年以上も前、とっくに大ブームになりましたから!
だいたいこの作品は、原作でも上手にボヤかしてますが、空気の読めないお嬢様が贅沢な私立の特別支援学校で、当時の常識や厳しい差別、偏見から守られて育ちましたっていうお話です。物不足の時代にお腹を空かせていたのは、むしろ非生産階級…というか、貴族階級に属していたからであって、地方のドン百姓(差別用語ならごめんなさい)はそこまで飢えてなかったと聞いています。あるいは戦争とか物不足など関係なく貧しかったかもしれませんけど…。でもまあ、当時は都市部で現金収入の比率の高い世帯ほど食料が入手しづらい感覚はあったようです。タケノコ生活のエピソードは有名ですし。
いずれにせよ、トットちゃんたちトモエ学園の生徒たちがお腹を空かせていたのは、食料の生産・流通をないがしろにしてまで軍事力を優先させるというクレイジーな体制だったからであって、かなりのお金持ちでも食べ物を買うことができない特殊な時期だったということです。
これはある意味、階級に関係なく金持ちも貧乏人も平等に飢え、平等に徴兵された瞬間だった訳です。奇しくも、こういうネガティブな面では、小林先生の理念どおり「みんな一緒」だったという皮肉な話で…。しかもこれは見方によっては生活力に応じて飯が食えた完全な実力主義が実現した稀有な時期でもあった訳で…。
ま、当時の日本は国際的には悪の枢軸国で、今の北朝鮮ポジションだったのですから。
そんな時代、そんな世相なのに、トットちゃんの家は現代でも滅多にないくらいの洋風建築で、朝食にトースターでパンを焼いてコーヒーを啜っていたんですよ?座敷犬のシェパードですよ?いわば特権階級みたいなものです。子供がお腹を空かせていたと言っても、軍歌を演奏する仕事を蹴るくらいのことは出来る程度の生活水準なんですよ?まだまだ仕事を選べるお立場だったんです。
これでもし、お父さんが実は涙を堪えて軍歌の演奏をしていたとか、ヒヨコ食べたとか、ロッキー食べたって匂わすような表現でもあれば、原作超えだったのに。
いずれにせよ、こうやって育ったトットちゃんがどんな人になるのか知りたければ、本人は今でも毎日のようにTVに出ているので一目瞭然です。パンダを保護したりもしてますが、庶民感覚のタレントさんとはしばしば話が噛み合わず、若手芸人にムチャ振りもするし、ゲストに気を遣わせる超大御所の司会者です。
この映画、それこそ今時ならむしろダイバーシティをアピールすれば良かったのに。性別とかLGBTとか肌の色と同等の頻度や熱量で、身体的、知的、精神的な障害についても社会的な受容をアピールすれば良いのです。
豊かな時代になったのだから、窓際でお外ばっかり見てるような子もADHDとか診断して多くの生徒たちから排除するように育てるのではなく、みんな一緒に同じように育てましょうってアピールをすればよかったのに、そこは行間を読ませるんですね…。
個人的には、本作ヒットの流れで次はベストセラー自叙伝映画化シリーズ『五体不満足』も制作して、ヒットさせてほしいと思います。
ま、私のような凡人が夢想する展開などどうでも良いのですが『窓際のトットちゃん』ならブックオフで100円で手に入ると思うんで、断然原作の方をオススメします。この映画が理解できるくらいの年の子供なら充分読めるくらい分かりやすい文章なので、子供にも原作はオススメです。
そして映画に関しては、例えば高畑勲なら、例えば片渕須直ならば、この原作をどう映画化していたかを考えずにはいられません。
本当によい子
2024年初泣きでした。信じられないくらい大泣きしました。
メインキャラクターたちを観てるだけでも戦争がいかに当時の家庭に、子供達に影響を与えていたかは分かるのですが、それだけじゃないディテールが本当に丁寧に描かれていました。
物語もとても素晴らしく、そのメインストリームの方でも涙腺決壊させられっぱなしでしたが、確かに「生きていた」ということを総じて刻みつけていました。「生きること」に貪欲でなければいけないのかもしれないと感じました。
長く生きているからこその、伝えなければならないこと、伝えられることがあるという思いが映画という形になったこと。多くの人に伝えられる形として残ったことに感動しました。
学校とは
おおらかさで包むための執念
大人だって泣くんだよ
人の温かさ、戦争の罪深さを感じられる
トットちゃんの周囲の人間を明るい気持ちにさせる天真爛漫さと、映画全体の鮮やかで美しいアニメーションが、観ていて心が温まる映画。
トットちゃんの級友の泰明が、トットちゃんと出会う前は小児麻痺を理由に塞ぎ込みがちだったのが、彼女との出会いによって苦手なことにも挑戦するようになる様が感動する。苦手なりに一生懸命取り組む姿は見ている人達の心を動かす。そして勇気を出して何事にも挑戦することが、その人の世界を広げることになる。そのようなことをトットちゃんに教えられた。
戦争の罪深さもひしひしと伝わってくる。
空襲によって多くの建物が破壊されたり、疎開を強いられるのは、人々の大切な思い出まで引き裂くことになる。そのような大変な時代を生き抜いた人の映画なので、ストーリー全体に重みが感じられる。当時と比べて、戦争に怯える必要も食べる物の心配もしなくていい現代の豊かさに感謝しなければいけないと感じた。
個性の尊重を戦時中から教えられた
いっぱい泣けました
歳をとったせいか、たくさん泣けた。
昭和生まれのポクでも戦争のことは経験もなく、わからないが、小学校の雰囲気、電車の切符とか、お祭りのひよことかわかる気がした。
子供のとき、多摩川園前(多摩川園という遊園地があった、東横線の駅)で母親に駅員さんに切符をもらってもらった懐かしい思い出がよみがえった。
当時はまだ、緑の電車も走っていて、扇風機しかない車両が多かった。
お祭りのひよこもいとこが買って、大きくなってにわとりになったけど、ピンクにぬられたひよこだった。
子供のころはとっとちゃんのような楽しい毎日を過ごしてたことを思い出して、涙が溢れてきた。
ただ、僕は戦争のない、食事に苦しまない、友人の死も経験してない幸せな時代を生きてきたことだったんだとつくづく思った。
となりの小学生が4,5人できていた子供たちはどう感じただろうか?
はだかでプールに入ったところで騒いでたけど、僕らの時代も裸はなかったかな?
経済的豊さの重要性を確認する作品
黒柳徹子ファンとしては必見の作品です。
兵士や工場労働者を生産することが最重要であった昭和初期、戦前の社会。
黒柳徹子の持つ際立つ個性は邪魔者扱いされ、当時としては珍しいダイバーシティ教育の場であるトモエ学園に転校、戦争が激しくなり疎開する前までの学校生活が描かれます。
トモエ学園は、かなり裕福な家に生まれた、当時の社会でのつまはじきの子供たちが通う自由な校風の先進的学校でした。
黒柳徹子の家は演奏家の父、自宅に風呂のある洋館、朝食にパン。定期で電車通学です。
同級生もみな同じ様な生活レベルです。
当時の庶民は風呂は公衆浴場、洋食なんてごちそうです。電車で移動するなんて、お出かけの時ぐらいのものだったでしょう。
そして、社会が戦争に向かう流れの中、最近のコロナ渦と同じ様に非科学的なことも含めて強い同調圧力があったことも分かります(お気持ち最優先)。これじゃあ、個性や才能、ハンデを持つ人たちは存在を殺されてしまいますし、社会経済は壊されてしまいます。
一方、トモエ学園に通った生徒は、個性や才能を評価されて伸ばされ、障害があってもノーマライゼーションの精神で扱われたようです。そして、後々各方面で活躍したようです。
おそらく庶民にも当時の社会ではつまはじきに合う子供たちはたくさんいたでしょうが、彼らにはトモエ学園に通う財力や社会的機会は無く、個性や才能、障害への対応は握りつぶされたのだと思います。
社会が経済的に豊かになることや同調圧力を廃することを目指すべきなのは、まさにこのように個性や才能を発揮できるようにするためであり、仮に障害があってもその中で自ら幸せをつかもうと取り組めるようにすることなのだと改めて認識させられました。また、豊かになったら、その豊かさがそれらの実現の役に立っているかを確認する必要があるんだと思い至らされました。
ベストセラーには理由がある。映像作品としても素晴らしい。
リアルをアニメーション映画に
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