「私は何に響いたのか…」映画 窓ぎわのトットちゃん キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
私は何に響いたのか…
原作が発売された当時、母親に勧められて読まされた記憶があるが、内容はほとんど忘れてた。
カラフルで活気に溢れた子供達の生活に、静かに忍び寄る「戦争」と「死」。
自分と異なる他者に対する寛容さ。
「みんな、一緒だよ」
それは「同一」というより「共同体」という意味だ。
校長先生が強く大石先生を叱責したのも、高橋くんに言った言葉が「あなたは私たちと違う」というメッセージになることを懸念したのかも知れない。
最近また「ザ・ベストテン」での黒柳徹子の差別に対する涙の訴え(1980年)が話題になった。
当時、南アフリカの人種隔離政策の中で日本人は「名誉白人」などと呼ばれて優越感を持っていた人々も多かった時期(今思えば、これこそ蔑称だろう)。まだまだ日本人にとって黒人差別が他人事に感じられていた時代に、自らメッセージや具体的な活動を起こした著名人の先駆け。
今や国内の「ユニセフ」は彼女の活動こそが真の姿だと言われるほど。
そんな彼女らしい、可愛らしくてまっすぐで、そして切実な思いが込められた作品。
でも決して説教くさくない。
純粋な子供たちの姿を描いているかと思うと、実は「信念を貫ける大人」と「時代の流れに飲み込まれた大人」の話でもある。
途中で差し込まれるアニメーションもすごく印象的。
原作のいわさきちひろさんの挿絵のイメージにも共通するシーンがあったりと、絵本の様にながめてみたり。
全体通して具体的に「どこで」「何に」と聞かれるとすごく困るのだが、エンドロールが始まって、気付いたらボロボロ涙がこぼれていた。
★は5個でもよかったのだが、個人的には大人のキャラクターの顔(特に「目」)に馴染めなかったのと、もう「役所広司」「小栗旬」。(造形ではなく)そのまま本人がイメージされてしまったので、若干のマイナス。
なぜこれだけ売れた原作の映画化に42年もかかったのか、パンフレットを買ったけど明確には書いてなくて、内容的には物足りない。
でも、間違いなく今年一番涙が出た映画でした。