「あのね」映画 窓ぎわのトットちゃん ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
あのね
当初はスルーしようかなと思っていた作品でしたが、評判が結構良いのと、今週の新作がかなり少ないというのも加味して鑑賞。特典はあいみょんの主題歌の歌詞付きポストカードでした。
戦前、黒柳徹子さんが体験したとある学校のお話という事で、どうしても戦争というものを文字や映像でしか知らない自分にとってはズレを感じる部分もありましたが、人の優しさや寛容さを映像越しで味わえる作品にもなっていました。
落ち着きがないから学校を辞めさせられるという、今の時代にはあり得ない対応を迫られていたトットちゃんが、トモエ學園に移って友達や先生と過ごす物語で、どうなるんだろうというハラハラがあるわけではありませんが、当時のリアルってこんな感じなんだなと各シーンで思わされました。
トットちゃん自身本当に落ち着きがない子なので、まぁ先生もそりゃ頭を抱えるよなと思いましたが、トモエ學園の先生や生徒たちはそれを受け入れてくれる、それどころかトットちゃんの良いところを見つけてくれる描写は素敵だなと思いました。
ただなぜこのエピソードを切り取ったのかという疑問が募る話もあり、財布を下水道に落としたからうんこを全部掘り返すというのはまぁあまり綺麗なエピソードでは無いですし、トットちゃんもなぜか授業も出ずにひたすら探したりしてるので、シンプルに問題児じゃないかと頭を悩ませるシーンになっていました。
尻尾が生えたというのを1人の子に冗談混じりで先生が言うシーンで校長先生が怒るシーンも、なぜ怒っているのかというのが説明されないまま(一応1人の子に対して言うな的なやつや、小柄な子だったからなのかなとは思いましたが)だったので、そこも引っかかってしまいました。
全体的にエピソードを淡々と繋ぎ合わせただけな感じがあって、クラスメイトのほとんどがどんなキャラなのかの掘り下げもありませんし、何かテーマがあるのかと思ったら次へ次へと進んでいくので、その度に集中力がプツッと切れてしまったのは惜しいなと思いました。
ヤスアキちゃんが小児麻痺だっつってるのに、やたらとトットちゃんが手を引っ張る描写が多いシーンが多いのは事実だとしたらあまり好ましいシーンではなくて、強くあって欲しいというのは切な願いだと思うんですが、無理強いしてまで木登りをさせたりプールに連れていったりするトットちゃんの悪く言えば強情なところは好きになれませんでした。いくらなんでもこれは先生や周りに注意されないとトットちゃん自身が危ない子になっちゃうよなと思ってしまいました。
ヤスアキちゃんの突然の死も、事故だったのか病気だったのか、そこを明かさないのは黒柳さんからヤスアキちゃんへの配慮なのか、それとも本当に知らされていなかったのか、唐突すぎて整理がつきませんでしたが、当時を考えると仕方ないのかなとも思いました。
後半になってくると戦争が本格的に始まり、質素な生活になるなどトットちゃんやトットちゃんの変化が描かれるようになります。
戦争の様子を食べ物の価値など含め黒柳さんが実体験したものが鮮明に描かれていたのは良かったなと思いました。
地方へ疎開していくシーンで、生まれたばかりの妹に優しく語りかける様子は、トットちゃんが成長したんだなと少し感心するところがあって良いなと思わされるシーンになっていて良かったです。
声優陣は本職の方が少ないですがしっかりしていたと思います。中々の長編の主役をやり切った大野りりあなさんは本当にすごいと思いますし、杏さんと小栗くんとカレンさんは少し時間が経たないと気づかないくらい溶け込んでいて凄かったです。役所さんは1発で分かりましたが、優しさの滲み出ていた声で素敵でした。
色々と小骨が喉に引っかかる感覚のある作品でしたが、トータルしてみれば良い作品ではあったなと思いました。今年は戦前戦後の作品が多いなと思った次第です。
鑑賞日 12/11
鑑賞時間 12:40〜14:45
座席 O-16