「後悔しました」はたらく細胞 みかんさんの映画レビュー(感想・評価)
後悔しました
映画を見たことを心底後悔したのは初めての経験です。
原作はコメディ色強め、なおかつこの実写映画のPVもわちゃわちゃ楽しく大騒ぎ!といったような雰囲気しか感じられませんでしたので何の疑いもなくわくわくしながら映画館に行きました。まさか数時間後ああまで最悪の気分にさせられるとは夢にも思っていませんでした。
まず原作通りのほのぼの感やコメディらしい笑いどころは冒頭くらいしか無いです。くわえて「そのキャラってそんなんじゃなかったよね?」ってキャラが複数いました。
そのひとりが赤血球ちゃんです。映画館で鑑賞しながらずっとうーん……となってました。彼女はもっと元気いっぱい盛大に悲鳴を上げてるキャラなので。細菌に出くわした時とかに。なのでああいう静かで大人しい感じなのはだいぶ違和感が大きかったです。(あと終盤の展開の話になりますが、BLACK世界の赤血球くんもあんな子じゃないはずです。彼は危機的状況において諦めなかったキャラであるはずなのに、実写版ではその性質が真逆のものに変えられてました。)
そして一番許せなかったのはやはり終盤の展開です。
自分は原作の雰囲気の通りに「日常→事件発生→みんなで協力して立ち向かうものの相手が(現実が)強力すぎて絶望しかける→それでも立ち上がって仕事を全うし、一発逆転ハッピーエンド」を期待していましたし、実写でもそうなるものと信じていました。でもそうじゃなかった。メインキャラクターを次々に殺し、最終的には皆殺し。どうしても、何が何でもそのような脚本にする必要が本当にあったのか?取り扱う病気は絶対に白血病でなければならなかったのか?自分には甚だ疑問です。観客を泣かせるためにとりあえずキャラを殺しておく、みたいな安易な風潮好きじゃないです。すごく嫌いです。細胞の話やBLACK世界ですらも皆殺しなんてやらなかったのに。
大好きな作品をこういうふうに汚されるのはこんなに耐え難いことなんだ、とこの実写を観て初めて理解しました。これまで自分は実写版というものに対しそこまで強い拒否感を抱いたことがなく、さまざまな作品の実写化情報を見て絶望の悲鳴をあげている方々の気持ちがあまり理解できていなかったのですが今なら「彼らはこういう苦痛を感じてたんだな」と痛いほど理解できます。
また、この実写には好酸球さんや好塩基球さん、BLACK世界の白血球さん等登場しないキャラクターも複数いますが、このような酷い扱いを受けるのなら出なくて本当に幸運だったと思います。
なんでキャラクターを軽んじるのか、大切に扱えないのか本当に不思議です。この映画を鑑賞したことを心の底から後悔しました。憎しみしか無いです。許せないです。
鑑賞後、原作やスピンオフ群をもう一度一通り読み直して「あの実写版の要素が入り込む隙は何処にも無い」と再確認することによってようやく少し憎悪が和らぎました。
精神衛生上大変よくないので実写版のことは早めに忘れることにします。認知しなければ存在しないのと一緒なので。
映画を見てここまで「見て後悔した」という感想を抱かされたのは初めてでした。