「細胞の行く末」はたらく細胞 サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
細胞の行く末
実写化だなんてどうなる事かと思ったけど、いやぁよくやったなぁ。見事です。原作からプラスして人間世界も並行して描くという斬新さ。いざ映画を見てみると、これなんで原作ではないの?と違和感を感じちゃうほどよく出来ていた。絶対にあった方がいい。おかげで感動が何倍にも膨れ上がっている。
前半は子どもウケを狙い、後半でガッツリ大人をターゲットに。コメディとシリアスのバランスが神がかっていて、1本で2本分の満足感が得られちゃう。BLACKを同時に見せるとは考えたもんだ。武内英樹監督の信頼度が増すばかり...。
原作を忠実に再現しながらも、オリジナルエピソードをも混じえてより見応えある物語に。実際に学校現場で活用されるほど、教材的な一面が強い作品だが、原作の垣間見える優等生感は上手い具合にかき消されており、大人でも知らなかったことを学ぶことが出来ながら、どちらかと言えばエンタメ色の強い楽しい映画に仕上がっている。
原作の汲み取り違いでは説教臭くなりかねないし、コメディに振り切ろうとすると原作の良さは完全に無くなってしまう。このさじ加減が思っている以上に難しいため、実写化のハードルは高いように思えたけど、本作はそんな不安を軽々と越えてきた。まさに究極のバランス。新規もファンも逃さない、実写化のあるべき姿。
とはいいながらも、武内節が前面に出すぎたせいかコメディシーンは若干滑っている。「テルマエ・ロマエ」「翔んで埼玉」ではシュールな雰囲気と相まって大爆笑をかっさらっていたが、「翔んで埼玉2」「もしも徳川家康が〜」に関しては笑いが前時代的かつチープであるためどうも笑えない。
本作も後者の現象に陥っており、間の使い方とか観客の理解とか全然なっておらず、突然ぶっ込んでくるおふざけに見ている側は置いてかれてしまい、爆笑どころか失笑に変わってしまう。いくら役者の力が絶大とはいえ、このテンポの悪さでは笑えるものも笑えない。うーむ。失敗してるなぁ。
ただ、シリアスシーンに入ってからの巻き返しが素晴らしく、結構心が痛くなるところはあるものの、総じてすごく上質な人間ドラマなので、ホントに上手いなぁよくやったなぁと胸がいっぱいだった。言及は避けるが、はたらく細胞という題名にいちばん適したストーリーだったと思う。
色んなパターンが見たいから続編希望したいけど、これ以上笑って泣けてタメになる物語は作れないはず。そのくらい、はたらく細胞にとって大きなものをテーマに掲げている。体内のシーンはもちろんいいけど、人間世界のシーンにとにかく心が打たれる。加藤清史郎と阿部サダヲ、いいなぁぁ。"水族館"のあのシーンに感動。泣いちゃうて。
赤血球すぎる永野芽郁と抜刀斎すぎる佐藤健に魅了されながら、山本耕史や仲里依紗、板垣李光人にFukaseといった脇を固めるキャストにも心を奪われてしまう。現代の日本映画界を支える大物俳優によるアンサンブル。はたらく細胞でなくても、こんなキャストが集結したらワクワクするき決まってる。
みんな演技お上手。細胞役だなんて意味がわからないのに、ちゃんと納得、なんなら期待以上のものを見せてくれるんだよ。求められている姿をよく理解してらっしゃる。キャラクター演技が得意な人が集まってるからね。無駄にハマりすぎなんだよ笑笑 みんな好きだけど、中でも山本耕史×仲里依紗がお気に入りです😁
せっかく脚本や役者はカンペキなのに、笑いやVFXといった演出面でちょい失敗しちゃってるのが非常にもったいない。もっといい映画になったろうに。ということでギリ4.0に乗らない3.9留まりで。でも物語自体はすごく面白くて考えさせられるいい作品です。モアナと一緒にこの冬の映画館を大いに盛り上げてくれることでしょう。次回作、期待しております。