劇場公開日 2024年12月13日

「それは「はたらかない細胞」のせい?」はたらく細胞 ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5それは「はたらかない細胞」のせい?

2024年12月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

興奮

原作は、人の体内で昼夜の別なく年中無休で働いている細胞を
擬人化するとのアイディアの勝利。

さらっと流し読みをした限りでは、
全てのストーリーは人体内での出来事に終始しているようで、
冒頭のシークエンスがそれにあたるか。

映画では、(人間の世界の)親子の情のエピソードを付加。
突然に降りかかる病の苦難に打ち勝って幸せをもぎ取る、
泣けて笑える一本に仕立てた。

オマケに終盤部の科白はかなり深い。
人体をそのまま地球に見立て、
世界中で起きている争いや差別へも物申している。

{コメディ}タッチの作品が多い監督の『武内英樹』は、
本作でも同様のトーンを踏襲。

正義派の免疫系細胞にしても
端々にユーモラスさを感じてしまう。

もっとも、それがより顕著に表れるのは
病原体の類か。

「肺炎球菌」の『片岡愛之助』、
「化膿レンサ球菌」の『新納慎也』、
「黄色ブドウ球菌」の『小沢真珠』と。

〔翔んで埼玉〕とかぶっている役者も多く、
弾けた演技でノリノリ、
やっている方もさぞかし楽しかったろう。

両者の対峙は
外連味たっぷりの擬斗も堪能。

CGを使用したモブシーンも多く、
迫力の面でも驚かされる。

元々は他人の赤血球が、輸血により
違う人間の中に入る描写はとりわけ面白い。

人の構成要素である細胞も
性格や態度の面で
それぞれの独自色を持っているのだろうかとも考える。

それが原因で、混じり合った時に
諍いを起こしたり、反りが合わなかったりと。

細胞の働きを改めて認識する
「お勉強映画」の側面も併せ持つ。

表面に現れる症状と、体内で起こっていることとの関連付けが巧妙で、
高校の生物の授業以来とんと忘れていた内容を
久しぶりに記憶の隅から引っ張り出した。

とは言えこうした活動は
日々絶え間なく続いているのね。

意識する・しないにかかわらず。

ただ、ひねくれた自分としては
「蟻の法則」を思い出してしまう。

蟻の集団では約2割が積極的に働いて、6割は普通に働き、
残りの2割はほとんど働かない、との研究結果。

じゃあ、働かない2割を取り除けば
より効率が上がるかといえば然に非ず。
働かない蟻が同率で現れると言う。

効率的に社会を維持するには、
一定割合で休む者の存在が必要とのことらしい。

なので自身の体の中でも、
怠けている細胞がいるんじゃないか?それも他人より多く。
どうにも怠け癖が強いのは
その比率が高いせいじゃないかと思ってみたり(笑)。

ジュン一