「アレルゲン」ソフト/クワイエット いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
アレルゲン
ワンカット風(多分、空や風景にパンしたところが編集点と推測 勿論証拠無)撮影技法を用いながら、これでもかと胸くそ演出をスクリーンに描いてみせた制作陣の勇気に違った意味で拍手を送りたい 映画に悪手はないと思っているのが自分の信条なので、どんどん露悪的な限界を更新していって欲しいモノである
グロやリョナ、そしてエロがその表現領域を狭めているコンプライアンスの時代、勿論その方向性は間違っていない事は自分でも理解出来るしそうなって欲しい そして映画界が発見した新たな"刺激"が『イジメ』なのかもしれない 複合的な要素が絡まることであっさりと殺人に発展してしまうプロットは、日常に潜む悪夢を見事に炙りだしていた展開である 短い上映時間はその手法に依る、観客の疲労度を計算に入れてのモノであろうが、そういう意味では充分ケアを施した心配りでもあったというと、穿ち過ぎか?(苦笑
人種差別や性差別、とにかく差別という名前が付くモノの根源は、報われない物言わないマジョリティの鬱屈が煮こごり状になって初めて存在化する アメリカの政治活動"Teaparty運動"の流れをストーリーの起点にしているところも理解し易い 偏差値が高いとされる職業である、不妊治療中の教師を中心に、主婦や商店主の妻、その商店で雇われている元受刑者、単に自分の能力不足(努力では如何ともし難い、持って生まれたレベル)を認めない女、等々、ベーシックな鬱屈を抱えながらその捌け口を求めて"同志"を集う会に運悪く参加してしまった女性達の顛末のストーリーテリングがまるで画に描いたような堕ち方で、分りやすい構図に落とし込まれている
それぞれの女達の立ち位置も安直なキャラ設定で、観客に考えさせる負担を減らしている造りであることも特徴的である 映画は多層的、複合的な内面があって初めてその深淵が描かれるのが常なのだが、今作はそれを敢えて排除することも斬新である 勿論それが手法として正しくないことは重々承知しているし、だからこそ今作の露悪さを表現する事への抵抗を否定しない それでも、トランプ的政治を陰で支えていたのはこういった『環境の悪さを他人のせいにする』女達の声なき賛同が支えていたという現実を表現することに特化した作品としての評価は無視できない 散発的には描かれたであろう、南部の女達の拗らせた情念をこうしてカリカチュアしていくのは、勿論真実ではないにせよ、一つの現実として世に知らしめる大事な内容なのだと感慨に耽る
そして殺した筈の女の甦りで、このどうしようもない哀しい女達への粛清の幕が切って落とされるというオチは、唯一登場する神父や夫といった男達にどう響くのか、男から女への緩い洗脳の先の贖罪を暗喩させるラストに、我が身も身を竦む思いを抱かざるを得ない内容である
是非とも、登場人物達に、自分の力では及ばない摂理を、苦い薬を飲む感覚でゴクリと喉に投下する人生観に巡り会って欲しいと願う、上映後の感想である
今作に、一方的で恣意的な印象操作を施した作品だと声を荒げる人もいるかも知れない
登場人物達のように、真面目でコツコツと積み上げて来た今の経済状況が、しかし自分の努力の尺度とはかなり隔たりがある、又は周りが同意してくれないもどかしさ、そしてこれが一番の原因だが、だれにも押しつけられない運の悪さ、チャンスの逸失という生まれ持っての努力外の力関係故の苛ちをこのような行動で解消しようとする性格の人達が、今作品に於いて、どれだけ理性的反証を繰広げるのか、是非とも拝聴したい
自分は、今の人生を呪っているのは自分自身の存在そのものだと思っているので、諦めているが・・・ 酒呑めば思考もアヤフヤになるしね(苦笑 願わくばアル中で死にたいw