「脈絡のないストーリーと、連発するご都合主義。」夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく ぞうはんさんの映画レビュー(感想・評価)
脈絡のないストーリーと、連発するご都合主義。
評価できる点から書いていくと、映像はそれなりにこだわって撮られていたという印象。グレーディングもいい感じになされていて、インスタのキラキラショットのような風景が重ねられていく。
ストーリー、プロット、演出については酷いの一言でした。
ヒロイン・茜の「自分の気持ちを表明できない」という性格を表すためだけに、ダラダラと長尺で描かれる文化祭のパートは、青磁が介入する理由もわからず、そもそも青磁がなぜカリスマ性を持ち合わせているのか説明されていないため、なぜクラスが団結したのかもわからず、フル尺で描かれるダンスシーンにも何のカタルシスもありません。
「学園モノだから文化祭やっておけばいいんでしょ」「JO1のダンス見せときゃいいんでしょ」という制作者の姿勢が見えてきます。
青磁のヴィジュアル面の表現も適当だと言わざるを得ません。「絵を描くこと以外に時間を使いたくない」旨の発言をするほど、創作に熱中しているという設定にも関わらず、なぜか作品上でいくら時間が経過しても完璧に根元までブリーチされている銀髪。まぁ、それはアイドルを見せる映画ということで良しとしましょう。制服のズボンに付いている塗料は何なんでしょうか。彼が描いてるの油絵でしたよね?なんであんなペンキみたいな汚れ方をするのでしょうか。しかもズボンだけ。シャツ何枚持ってんねん、毎日新品おろしてんのか、というね。
青磁の創作の場となっている屋上の描写も謎でした。え、画材雨晒しなの?それとも毎日広げては片付けを繰り返しているの??という疑問。終盤の屋上に塗料をぶちまけるシーンも、どう考えてもあれは油絵具ではないので、どこから大量の塗料がやってきたのか意味がわからないわけです。
廃墟の遊園地に行くパートでは、夜になるとなぜかいい感じに園内に照明があてられています。廃墟なんですよね?誰が、何のために金払って電気通してるんですか?漏電とかしたら危なくないですか?
都合よく青磁の過去の情報を提示する母親は、自分のことだけしか考えていない無責任な人物として、妹は甘やかされてわがままな幼児性だけが、父は完全な善人として描かれ、中途半端な表現のみで、ストーリーの本筋と全く関わりを持たないのもどうかと思いました。
ということで、疑問点やご都合主義を挙げていけばキリがございませんので、ここら辺にしておきます。こういう映画、制作者がどういうモチベーションで作っているのか、本当に謎です。
映画ではそのことに触れてなかったので分からなくて当たり前なのですが、私もそこの説明が無かったから誤解する方も多いだろうなと思ってました。青磁の銀髪はブリーチではなく、原作によると病気(小児がん)によって髪の毛が全て抜けてしまったあと新しく生えてきた髪の毛は色がなくなってしまった、との事でした。