「青春映画には「屋上」がよく似合う」夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
青春映画には「屋上」がよく似合う
学校をサボりがちで勝手気ままに絵を描いているだけの青磁に、どうしてそんな人望と求心力があるのかがよく分からない。
マスクで顔を隠すことによって自分を押し殺し、自傷癖まである茜が、内申を良くするためとは言え、学級委員を務めていることにも違和感がある。
そして、そんな2人が、「大嫌い」と言いながら惹かれ合うようになる流れも、いかにも予定調和で、今一つ納得できない。
そんな風に思いながら映画を観ていると、2人の結び付きがストンと腑に落ちる瞬間が訪れて、スッキリする。
世界で一番美しい茜の笑顔を、苦しい闘病生活の支えにしていた青磁。
正直な気持ちを口に出し、思った通りに行動していたかつての自分の姿を、青磁の中に見ていた茜。
幼馴染みの再会という、話としての「出来過ぎ」感は否めないものの、2人が惹かれ合う流れに説得力が生まれるのであれば、それは、それで「あり」なのだろう。
はじめは、人の目を気にして心を閉ざしていた茜を青磁が救い出し、次に、病気の再発を恐れて一歩を踏み出せない青磁の背中を茜が押すという展開の中で、そんな2人の関係性の変化を、屋上の登り口でどちらが手を差し伸べるかによって明らかにする手法も気が利いている。
青空に浮かぶ雲の様子が油絵に変化したり、色鮮やかに塗り尽くされた屋上から朝焼けへのワンカットがあったりと、印象に残る美しいシーンも多い。
変にベトベトした恋愛映画にしていないところや、お涙頂戴の難病ものにしていないところにも好感がもてる。
ただ、その一方で、その分、感動やインパクトも薄めになってしまい、全体的にそっけなさや物足りなさが感じられるのは、やや残念なところではある。