「実力ある若手俳優の演技に鳥肌」法廷遊戯 うみちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
実力ある若手俳優の演技に鳥肌
運良く当選した完成披露試写会で鑑賞した。
わたしの中では何よりも1番にくる感想はタイトルの通り。終わりに近づくにつれ、鳥肌がたちっぱなしだった。自分のメモとしても、人に見ていただくレビューとしても、ネタバレなしで書きたい。
原作を読みながら、これをどんなかたちにしてくるのか楽しみで仕方なかった。
小説の重たさと比較して、97分と割とコンパクトにまとめられていたが、とにかく俳優陣の目つき・声色で心を揺さぶられるシーンが多く、エンドロールで主題歌「愛し生きること」を聴くころには、満足感と疲労感とで胸がいっぱいだった。曲が流れるまでの緊張感が一気にゆるみ、涙が止まらなかった。
今作は北村さん、戸塚さんなど実力と魅力ある若手が名を連ねていた。特に杉咲花さんは若い俳優の中でもキャリアがあり、夜行観覧車での熱演を思い浮かべる方も多いと思うが、今作ではそれを上回る狂気に圧倒された。美鈴のエゴなのか、純粋な愛なのか、考えているうちに終わる。そしてそれを帰路についてもなお考察してしまう。
推しである主演の永瀬廉さんは、過去の作品を見返してみて気づくが、ひと作品終えるごとに凄まじい勢いで役柄に自分を重ねるスキルを身につけていったのではないかと思った。
セイギの目と表情はどのシーンを切り取ってみても言葉にできないものがあった。かなり高度な法律の知識とセイギの生い立ちというベースを備えた上で演じなければならない、素人目にしても絶対に難しい役どころだったはず。こんなにも厚みある演技に仕上げてきた彼の努力には感服した。
この「法廷遊戯」のような、サスペンスというのだろうか、シリアスな作品で活かされるべきだと思っている。キャスティングされた方に心からの拍手を送りたい。本当に感謝の気持ちしかない。
監督は舞台挨拶の際に、答えがない映画だと仰っていた。まさにその通りだった。受け手によってはどちらとも捉えられると思うが、わたしは悲哀の感情が強かった。愛が全てを救えるとは思えない。それが歪な愛ならば尚更、難しいテーマだと思う。
結局明確な答えにはいきつかない。それぞれがそれが答えだと思うなら、そうなんだろう。でも、この終わり方が不快ではない、むしろ心地いい作品だった。
11/5の先行上映にも足を運んだ。二度目の鑑賞にはなるが、改めて気づくことも多かった。
特に主題歌になった曲の歌詞と作品とのリンクに浸れるエンドロールは良かった。
記憶違いでなければ個人的に、ある「花」でぐっとくるところがあった。
それだけでなく原作との違いが様々あり、それらは良い意味で楽しめるので、これから映画館で鑑賞される方にはどうか小説も手に取ってほしい。