「善く生きるための授業」ぼくたちの哲学教室 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
善く生きるための授業
アイルランド、ベルファストの男子小学校の哲学の授業を撮ったドキュメンタリー映画だ。小学生が哲学を学ぶのは早すぎると感じるかもしれないが、ここで教える哲学は頭でっかちな学者が難しい言葉を振り回すようなものではなくて、自ら人生や社会について考える力を身に着けることを目指している。本来、哲学は難しい概念を振り回すことが目的じゃない、本当の哲学の目的は、ソクラテス風に言うと「善く生きること」だ。この小学校の哲学の授業はまさに「善く生きるため」の学びを実践している。
ベルファストは、ケネス・ブラナーの映画でも描かれたようにカトリックとプロテスタントの大きな対立があり、悲劇的な紛争を経験している。いまだに町は分断されており、争いの火種はくすぶっている。そういう町に生きる子どもたちに、争わずに生きる方法を教える一つの方法が、哲学の授業なのだろう。
教育のあり方として見習うべき点が多いのも注目だが、中心的な存在である校長先生ケヴィンさんのキャラクターがいい。エルヴィス・プレスリー好きで筋トレが趣味、地域の顔役のような存在になっていて、誰からも信頼されている。地域と教育のつながりのあり方としても参考になるものがいくつもある。
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