「「家族であること」とは「妻(母)の味を守ること」と見つけたり」釜石ラーメン物語 talkieさんの映画レビュー(感想・評価)
「家族であること」とは「妻(母)の味を守ること」と見つけたり
一軒のご当地ラーメンの店を舞台に、本当は仲の良かった二人の姉妹の確執と和解を描く-。
そんな感じの一本だったでしょうか、本作は。
姉の正美が3年前に出奔した理由については、本作が審(つまび)らかに描くところではなかったと思いましたけれども。
しかし、妹の仲良としては、父・剛志との店(小川食堂)の切り盛りに忙しい毎日だったとはいえ、やはり正美の(突然の?)失踪には、心の奥底に蟠(わだかま)りを抱き続けていたのでしょう。
正美と仲良とは、むろん血を分けた姉妹。
そういう親(ちか)しい間柄にあってみればこそ、お互いに、お互いのなりふりをどうしても受け入れられず、激しいケンカに行き着いてしまう-。
そういうことって、あり得ることだと思いますし、実際に起こってもいるとも思います。
そして、その二人を和解に導いたのは、他ならぬ二人の母・正恵であった…否、正確には、姉妹二人の「震災で行方不明になってしまった正恵を想う気持ち」であったことは、疑いがなかろうと思います。
置かれた境遇こそ違っても、二人に通う「血」は、争うことができなかったのだろうとも思います。
その点を見事に描いている点で、本作は、佳作の評価が適切だったと思います。評論子は。
(追記)
<映画のことば>
麺は細いが、人情と根性は太い。
世上「柳に雪折れなし」とか「柔よく剛を制す」とか言われますけれども。
もちろん「柔軟性のあるものが、そのしなやかさによって、かえって剛強なものを支配することができる」というほどの意味合いです。
細麺は、その食感の柔らかさだけでなく、その細さ故にかえってスープによく絡(から)んで、独特の美味しさがあるのでしょう。
他者の思惑に囚われずに、そういう個性的な生き方が、もしできれば、人間としては幸せなのかも知れないとも思いました。
(追記)
寡聞にして、評論子は知らなかったのですけれども。
釜石ラーメンというのは、いわゆる「ご当地ラーメン」としては、有名だったのでしょうか。
「釜石」と言われると、「鉄のまち」「ラグビーでは強豪のまち」というイメージで、なかなか「ラーメン」には結び付かなかったのですけれども。
むしろ、ラーメンというと、寡聞にして、札幌ラーメン(味噌味)、喜多方ラーメン(醤油味)、博多ラーメン(濃厚な豚骨味)といったイメージしかなかったので。
画面で見る限り、極細麺に薄口のあっさり醤油味のスープといった感じのようです。
当地に足を運んだ際には、是非とも一杯、賞味してみたくなりました。
(追記)
姉妹二人のケンかを仲裁しようとして、興奮のあまり倒れてしまった剛志が緊急搬送(?)されたのは、「せいてつ記念病院」でした。
実は、同じく「製鉄のマチ」である評論子が住むマチにも製鉄記念病院があります。
当地域でも、地域医療の一担い手として、信頼の厚い医療機関です。
地元の基幹産業として、多数の従業員の福利厚生や地域への(医療面での)貢献なとについては、彼我に差はないのかとも思いました。
(追記)
正美の帰郷に合わせて、3両編成のディーゼルカーの走行シーンがありました。
その釜石線は、岩手県の花巻駅と釜石駅を結ぶ全長100㎞弱のローカル線です。
前身である岩手便鉄道が、宮沢賢治の代表作『銀河鉄道の夜』のモデルといわれ、そのことから「銀河ドリームライン釜石線」の愛称もあると聞き及びます。
ほんの僅かなシーンではありましたけれども。
鉄男君(鉄道ファン=評論子の場合は「乗り鉄」の鉄男)としては、嬉しいシーンでもありました。
これからは、密かにライフワークとしてきた「良いお父さんが出てくる映画 ザ・ベスト」のほか、鉄男の端くれとして、「味のある鉄道風景が出てくる映画 ザ・ベスト」も追い求めてみようかと思えた一本にもなりました。
因(ちな)みに。
ずっと男社会(?)でしたけれども。この世界にも今日日は女性の進出が目覚ましく、最近はごついカメラを無造作に抱えた「撮り鉄」の鉄子さんも、珍しくなくなりました。