「所詮は人間、されど人間」ブルックリンでオペラを 猿田猿太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
所詮は人間、されど人間
所詮は人間、されど人間
自らの思いのまま、私利私欲で動くしかなく、他者とはぶつかり合うしかない、なんともしがない人間模様。それでも互いの幸せを願い、やがては溶け合っていく人々の姿。邦題のオペラはそれほど内容に深い関わりはなかったような。原題「She come to me」→「彼女は私のところにやってくる」? ポスターにある「愛が突然降ってきた」が、もっとも映画の意図するところの意訳でしょうか。
映画が進むにつれ、なんだか上手い具合に問題が雪だるまになっていくのが、もう心配を通り越して笑えてしまう。そして先も読めてくる。ていうか、浮気って結局バレるもんですね。私にはそんな経験ないけれど。いやホントに。浮気以前に本気の経験もないから。
そのビリヤードのように見事にぶつかり合うドタバタ劇が、これまた見事にパズルのピースが重なってみんな幸せになっていく。その例外は法廷速記の父親か。法にしたがってる彼が世間で一番正しい筈なんですが、そこに愛がなくてはダメなんでしょうか。問題だらけの登場人物にまみれて、若い二人のカップルがひときわ輝いてました。末永くお幸せに。
劇中のオペラについてですが、ふと気になったのはヒントを得た現実とは異なる結末にしているのは何故か。これらは私個人の想像ですが、最初の恋愛依存症の彼女、オペラでは首を落として食ってしまうという演出は、それはそのままの意味で恋に落ちたという暗示でしょうか。そして若い二人の結婚をモデルとしたラストのオペラ。そこでは父親に連れ戻されるという筋書きにされていましたが、それは何故だろう。私は想うに、そうすることで現実の二人のアイデンティティーというか、優位性を上げるためだったのでしょうか。現実はもっと幸せな結末だったんだよ、ということか。それが私の解釈なんですが、如何でしょうか。
それにつけても、かのアン・ハサウェイ演ずる奥様のなんと不憫なことか。世の中の汚れに耐えきれずシスターへと身を転ずるお気持ち、判ります。兎に角、相変わらずお美しいですね、アン・ハサウェイ様。昔からずっとスマホのお気に入りの壁紙です。比類なき美しさに加え、写真ごとに別人かと思う、とても不思議なお方です。そんな彼女の最後のオチ。自らプロデューサーしているとはいえ、なんと大胆なことかw
そんなこんなで、コンパクトな作品ながら、私にとってはとても感慨深い映画でした。